【感想】日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る

播田安弘 / ブルーバックス
(51件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
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  • ブルーバックスで歴史を説く!

     いやー実に面白かったです。事実は事実として、それを科学的に数値で検証するというのは、これまでなかなかなかったでしょう。何しろ書いている人が本物のエンジニアなのですから、その分析の仕方がまさにサイエンスでありました。
     一番面白かったのは、蒙古襲来かな。秀吉の大返しについては、新しい歴史的事実も出てきているので、今後数学的分析も変わってくるかもしれません。
     大和については、完全に当時の技術者に対するオマージュですよね。恥ずかしながら、あの映画『アルキメデスの大戦』で戦艦の図面をすべて描いたのが筆者だったは、まったく存じ上げませんでした。素晴らしく美しい図面だったことだけは、記憶に残っています。公共事業もそうですが、計画時点と完成時点では、状況が変わってしまうことは、よくある話です。零戦にしても、この大和にしても、当時の日本の技術者の力量は、なんら世界と比べて遜色はなかったのでしょう。ダメだったのは。。。。
     そして、最後の章のタイトルは「歴史はくりかえされる」です。著者が一番言いたかったのは、実はこの章だったのかもしれません。新型コロナに対する日本政府の対応についても、科学教育についても論じておられます。今後どうするのか。それは我々にかかっているというわけです。大和は二度沈んではならないのです。
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    投稿日:2020.12.03

ブクログレビュー

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  • おがちゃん

    おがちゃん

     これ面白い本です。歴史上の不思議な「事実」を科学の目で見ると,違うことが見えてくる…という。以前,板倉聖宣氏が『歴史の見方考え方』(仮説社,1986)という本で,人口の増減で見る新しい日本の歴史というものを提案して《日本歴史入門》という授業書を作ったことがあります。数量的にもの(歴史)を見ることで,これまでとは違ったことが見えてくるんですね。それでワクワクしたことを思い出します。
     さて,本書の中身も似ています。扱っている内容は,3つしかありませんが,いずれも,具体的に数量的な基準を出してくることで,これまで一般的に言われてきた歴史的な事実?に対して「それはありえんな」「そんなばかな」「どこかに脚色があるのか」という疑念が沸いてきます。
     例えば,1582年本能寺の変のあと,明智光秀の謀反を知った秀吉が,毛利と休戦を結んで「中国大返し」をして京都に戻って光秀を討ったという話。
     その秀吉軍2万人が,数千頭の馬と共に,たったの数日間で京都まで行けたというのは,本当なのか。それを,2万人+馬分の食糧調達,2万人+馬分の糞尿の処理,武器や弾薬を持って歩くという強行軍,2万人分の寝る場所…などなどを考えると,とても急にこれだけ準備するのは難しい。しかも,やっとの思いで京都に着いたらすぐに光秀軍と戦う力は兵隊に残っているのか…これもまた,不思議だといいます。
     文献の解釈は歴史家に任せるとして,科学的に考えると,どうなのか。そういう本なのですが,わたしは,こういう数量的な見方・考え方をしっかりしてこそ,歴史学者と言えるのではないか…と思います。古文書の解釈ばかり詳しくしても,それが事実かどうかは,分かりません。こういうことは,すでに40年近くも前に『歴史の味方考え方』に書かれています。
     解釈ではなく,予想を立てて数量的に考えていく。それにより,本当の姿が見えてくるのではないでしょうか。
     最後に,筆者の言葉を引用しておきます。

    蒙古の撤退にしても秀吉の大返しにしても,歴史の謎とされているものは,「奇跡」とか「伝説」といった文言を纏っていることが多いようです。それが後世の人間の目までも曇らせているのかもしれません。歴史の研究の本道が文献の発掘や精査であることはもちろん承知していますが,人間が行う解釈という作業にはどうしても先入観を排除しきれないところがあります。物理や数学の観点も採りいれた研究によって、日本史の未解決問題の謎解きが進むことを願わずにいられません。(本書,227ぺ)
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    投稿日:2023.11.29

  • pnictide

    pnictide

    造船に携わっていた著者ならではの、日本史をサイエンティフィックな視点で解析し直すのが斬新で面白かった。特に船という観点で蒙古襲来などを振り返っており、船酔いで体力低下説とかはとても面白かった。

    投稿日:2023.11.05

  • kaz.f

    kaz.f

    企画として「と学会」ぽくて面白い。造船のプロである播田さん一人の視点で書かれておりまとまっている。次巻にも期待。

    ※終章に福島第一原子力の発電機仕様が米国式〜との記述があるが、2011年の時点では911を受けて米国NRCの要求が変わっており米国に素直に追随してれば被害が軽減できていた可能性あったことは指摘したい。続きを読む

    投稿日:2023.06.03

  • ななつ

    ななつ

    猛虎襲来や秀吉の中国大返しなど、歴史的なミステリーを科学的に解析している一冊。

    歴史が好きでないと、捗らないかも。

    読んでいて、なるほど!と思ってしまうほど、解説は分かりやすかった。

    投稿日:2023.04.22

  • ミイ

    ミイ

    蒙古襲来、秀吉の中国大返し、戦艦大和の3つのトピックについて、その実現可能性や代替策を考察する一冊。
    著者は三井造船の設計技術者だった方ということで、特にロジスティクスの観点で冷静な分析をされている。
    蒙古襲来については、冬の荒れる玄界灘、上陸に時間がかかり戦力逐次投入となった可能性にスポットが当たっている。
    秀吉の中国大返しでは、二万の本隊とは別の海上移動、事前の根回しの可能性にスポットが当たっている。
    今となっては分からないことばかりだが、こういうナゾに迫るのは面白い。
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    投稿日:2023.04.01

  • meep

    meep

    過去のイベントについて技術的な観点からの考察・主張が分かりやすくまとめられている。歴史の専門家でない、と著者はいうが、色々な視点での考察を重ねることは有意義な作業だと感じた。

    他にもやっていただきたい考察あるな、と思っていたら、本書の第二弾もあるとのこと。世の中にも好評だったのでしょう。続きを読む

    投稿日:2023.03.01

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