【感想】同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか

鴻上尚史, 佐藤直樹 / 講談社現代新書
(60件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
8
25
16
5
2
  • 日本で言う世の中は、世間であって社会ではない。なるほど!

     日本には、「社会」というものがなく、あるのは「世間」。それがどういうことなのかが、お二人の対談で明らかになっていきます。すると、最近流行の、自粛であるとか、忖度なんかも見えてくると言うわけです。
     「権利」というコトバは江戸時代にはなく、明治になってから、rightと言うコトバを翻訳して「権利」というコトバを作ったとの指摘は、大変興味深いものでした。rightというコトバには、「正義」という意味もあり、権利を行使することは正義である。よって、やむにやまれず生活保護を申請することは、恥でも何でもないわけです。しかし、日本では、権利ばかり主張している奴は嫌なヤツとなる。つまり、社会の中では当然のことが、世間では歓迎されないと言うことなのでしょうか。また、自己責任というコトバは、もともと証券・金融業界で使われ、投資者が判断を誤って損失を被っても、自分が責任を負うとの意味だったとか。でも今はどこか、自業自得みたいな使われ方であるのは、ご指摘の通りです。
     それで処方箋としては、色々な「世間」を持つことであると言います。会社だけ、家庭だけの世間ではダメだということですね。コレはまぁ、納得できます。ただ、世界標準は一神教であり、神に支えられた個人主義というのは判らなくもありませんが、だとしたらアメリカ等の激しい人種差別はどう解釈すればよいのでしょうか?宗教が違うわけでもないのに、また同調圧力でもありますまい。日本にも勿論、差別はありますが、よってたかって暴行を加えるなどということはないですよね。いやいや、ホームレスに対する集団襲撃事件ってのは、ありましたっけ。
     何にせよ、私自身は、正直言って、さぼと息苦しいとは感じていないのは、居心地のよい「世間」にどっぷりつかっているからかもしれません。ただ、お二人の対談は、とても興味深いものではありました。
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    投稿日:2021.12.05

ブクログレビュー

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  • 阿頼耶識

    阿頼耶識

    日本社会は村社会で、同調圧力がとても強くて生きにくい。個性を埋没させされてしまうという話。その通りでよく分析されていると思うのだが、じゃあどうやって生きていったらよいか、各自で考えてという意図だろうけど、問題提起に関する続編を読みたい。続きを読む

    投稿日:2023.11.05

  • masudahidehiko

    masudahidehiko

    これはよい問題提起の本。実際、この本にあるような”同調圧力”はあるし、よいものではまったくないと思う。それを直視して変えていくことがとても重要だと思う。安易な解決を、それも人に求めるのではなくて、ここで語られているようなことを安直に否定したりせずに、きちんと見据えて変えていくことが重要だと思う。このテーマを扱った本の中で、とっかかりとしてとてもいいと思います。ぜひ読んでみて!続きを読む

    投稿日:2023.10.03

  • m

    m

    〝社会〟と〝世間〟の違い、そして世間が〝同調圧力〟を作り出している、と本書は解説。自粛警察などの現象を踏まえて、コロナ禍は戦時下のようであるとも述べています。震災時もコロナ禍も特別な罰則を設けずとも暴動などが起きずにいるのは日本人の民度というよりも、海外には無い〝世間〟の中にいるからであると。
    世間は〝変化を嫌う〟特徴があり、同調圧力は〝異論を唱える者を暗黙のうちに自分たちと同様に行動するよう強制すること〟であり、それぞれ日本特有且つ根強い文化でもあります。
    世間には幾つかのルールがあり、一つにはお中元やお歳暮を代表する〝お返し〟。貰ったら返すルールがあるからこそ、LINEの既読スルーが問題視されると言えます。二つ目は〝身分制〟。スクールカーストやママ友内でのカースト、年功序列の上下関係のルールがありながら、三つ目は〝平等主義〟のルールもあります。「みんな平等であるべきだ」という意識があるから、得をしているように見える相手を僻む。そして同調圧力が起こる。象徴的な言葉は「出る杭は打たれる」。圧力は人の行動を抑制するだけでなく最終的に村八分や差別も生みます。
    社会と世間の違いについては様々な言い方がされていますが、しっくり来たのは「社会は個人の集合体」「世間は個人の不在」です。
    世間には個人がいない。しかし個人は他者から肯定や承認をされたい欲求を持っているので、だからこそ正義の言葉を振りかざした排他的な攻撃がネットで起きやすくなっていると言えます。
    恐らくこの先も日本から世間が消滅することは無いと思いますが、同時に、大切なのはやはり世間ではなく社会を意識することだと思いました。自分の家庭や職場に関連する身近な世間だけではなく、複数の様々な世間に入ってみること(見聞きするだけではなく属すること)で、一つの世間に囚われず、個人の存在も強く感じられるようになっていく。それが〝社会に属する〟ということなのではないでしょうか。
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    投稿日:2023.09.10

  • hamanachos

    hamanachos

    日本は治安がよくて住みやすい反面、自殺者が多いのが残念だ。 世間学について納得する部分はあるが、じゃあ自分はどうすればいいのか結局よくわからなかった。

    投稿日:2023.07.31

  • まってぃ

    まってぃ

    このレビューはネタバレを含みます

    同調圧力とは、その時の一番強い集団である多数派や主流派と同じようにしろという命令。
    日本には社会の他に世間があるから、社会のルールが崩壊しても世間のルールが機能し、緊急時でも略奪や暴動が起きない。
    世間とはステークホルダーにより形成される世界と、その集団の力学で、社会は知らない人たちで形成された法的な世界。
    社会は一つしかないから排他的にならないが、世間はたくさんあるから排他的になりうる。
    日本人はすぐにじゃんけんや多数決をして物事を決めるため、議論が下手になった。
    「他人に迷惑をかけない人間になれ」という教えにより、「他人から迷惑を受けること」に敏感になった。
    結果を残しても、「世間」(身近な環境)のおかげとしてしまうことで、個人としての自己肯定感は低くなってしまう。

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    投稿日:2023.07.17

  • bukuro-gu

    bukuro-gu

    世間と社会は全く異なるもの。そう考えて、普段の生活で周りを見渡すと、これは世間、これは社会だな、と見えるようになり、少しだけ世の中が分かるようになったと思います。
    人と関わるのが面倒だと感じる人は、その理由が分かるかもしれません。
    続きを読む

    投稿日:2023.07.08

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