【感想】ヘルベルト・ブロムシュテット自伝 音楽こそわが天命

ヘルベルト・ブロムシュテット, ユリア・スピノーラ, 力武京子, 樋口隆一 / アルテスパブリッシング
(2件のレビュー)

総合評価:

平均 5.0
2
0
0
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • jatp1953

    jatp1953

    「不滅」の指揮者、ブロムシュテットのインタビュー集。
    インタビュアーがしっかりした人なので、とても読み応えのある本になっている。

    とくに面白かったのが、クレンペラーと一緒に楽譜を読んだ、という件。
    「偉大なる二流」な感がある人だけど、巨匠たちの時代を知る、最後の生き残り、なのね。

    数年前にN響定期で名曲をまとめて演奏したときには、これでお別れ?、なのかと思ったけど、その後も来日し続けてるし、ストコフスキーを超えて百歳でも元気に振ってそうな気がしますね。
    続きを読む

    投稿日:2020.03.01

  • 消息子

    消息子

     生き残るというのは偉大なことである。死んではだめだ。90歳を過ぎて生き残る人は元気な人が多い。91歳になっても日本のオーケストラを指揮しに来るヘルベルト・ブロムシュテットも然り。
     ブロムシュテットが私の視界に現れたのは、シュターツカペレ・ドレスデンの指揮者としてである。手堅いが地味な指揮者という印象だった。名前もドイツっぽいのでしばらくは東ドイツ人だと思っていたが、彼はスウェーデン人である。そんな地味な指揮者がこの年になると大変な尊敬を受ける。カラヤンやバーンスタインがいかに偉大であろうとも、90歳まで芸術を深めることはできなかった。だが、ブロムシュテットはできた。生き延びたからである。生き残るということは素晴らしい。
     本書は音楽学者のスピノーラが、2016年にいくつかの機会を捉えてブロムシュテットにインタヴューしたものである。
     1970年代の東ドイツでなぜ「西側」の指揮者が老舗オケのカペルマイスターを務めることになったのか、これを読んで初めてわかった。1968年のプラハの春とチェコ事件がかかわっているのである。ブロムシュテットは1998〜2005年、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のシェフにつくのだが、この旧東ドイツの名門オケの違いというのも興味深い話だった。
     そして、ストコフスキーによって配された、ヴァイオリンを両翼に配置する「ドイツ式」を復活させる強力なプロモーターがブロムシュテットだったということもわかった。彼はつい先日、NHK交響楽団を指揮していった。テレビで観たのだけれど、オケの配置は当然ドイツ式。高齢になるとテンポが極端にゆっくりになる指揮者が少なからずいるなか、テンポは快速。テンポがいかに大事かは本書にも述べられている。そしてモーツァルトなど提示部も再現部も反復を遵守する。ヒストリカリー・インフォームド・パフォーマンスの指揮者ではないのだが、楽譜を遵守するという姿勢が強いのだろう。
     セヴンスデイ・アドヴェンティスト協会という、キリスト教原理主義に属して、土曜日は安息日とするという戒律を頑なに守りながらも、自由な精神を失わない。本書を読むとこの人の人柄にも惹かれるという一書である。
    続きを読む

    投稿日:2018.11.25

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。