【感想】消費税10%後の日本経済

安達誠司 / すばる舎
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  • ケイケイ

    ケイケイ

    2020年Kindle Unlimited7冊目

    ①この今回の消費税率引き上げの影響について筆者の考えを先にいうと、現在、メディアなどで取り上げられている話題は、表面的な「収支」の問題であって、経済全体への影響は別の面に大きく現れると考える。  具体的にいえば、まだデフレの影響下にある経済では、中長期的にみて将来の所得が増えていく展望が描けないので、増税には節約でもって対応するしかないというのが多くの家計の考え方のベースになるだろう。  節約志向が高まれば高まるほど消費量は落ちていく。したがって、社会保障の充実という「正当な」理由があるとしても、今、政府が優先すべきはデフレ脱却によって将来の所得増が見込める経済環境に変えることであると考える。しかも現状は、デフレ脱却は、まだはるか遠くで全く見渡せないというわけではない。むしろ、これまで 20年以上の長きにわたって実現できなかったデフレ脱却があともう少しのところまで来ている状況でもあるのだ。  現に、長期間ほぼ横ばいトレンドであった名目 GDPの水準は、最近になって、その横ばいトレンドを突破しつつある( →図表 1- 1)。

    ②世界的に経済成長の余力が減少しつつある局面では、株式市場は元気を失う。基本的に株式投資とは、企業の将来の成長力にベット(賭ける)することを意味するからだ。そうすると、世界の投資家のマネーは債券市場(特に国債市場)に流入するしかない。世界的な低成長期の金利低下はこのようなメカニズムで生じていると考えられる。  

    ③先進主要国では、財政再建という「縛り」から国債を十分に供給できていない状況であった。そのため、政府が財政再建を行っている状況下では、これ以上中央銀行が国債を購入することも困難となり、事実上、金融政策主導の経済政策は限界を迎えつつある。  

    ④最も有名な経済指標が「 GDP」である。 GDP統計は、家計消費、民間設備投資、民間在庫投資、住宅投資、政府(公共)投資、輸出入などの項目に分かれている。そもそも「 GDP」という統計指標自体は存在しない。 GDPは、それぞれに関連する膨大な経済指標を組み合わせて人工的に作成されている。つまり、 GDPはいわば人工的な経済の総合指標である。  

    GDP統計で景気をみる際に重要な項目は、民間最終消費(簡単にいえば個人消費)、民間設備投資、輸出の 3項目である。民間最終消費支出は前期比で + 0. 6%、民間設備投資が同 + 1. 5%、輸出は-0. 1%であった。輸出を除けばまずまずの結果であった。  

    GDP統計は日本の景気を総合的に判断するために、公表されている経済指標を組み合わせて人為的に作成される経済指標である。そのため、 GDP統計はどうしても発表のタイミングが遅れてしまう欠点がある。したがって、現在の経済状況は、毎月発表される月次経済指標の動きから直近の経済状況を推測する必要がある。  

    GDP統計が現在の基準( 2011年基準)で作成されていたのは 1994年 1 ~3月期以降だが、「経済危機」といえるような大幅な景気悪化の際には、前述の三つの主要項目(個人消費、民間設備投資、輸出)がすべて前期比でマイナスとなっている。  

    このような局面は 1994年以降、全 101四半期中 12回に過ぎない(図表 2- 3)。そして、これら 12回のうち、 10回は GDP成長率自体もマイナスになっている。

    ⑤次に世界景気の状況に目を転じてみよう。世界景気全体をみる経済指標として最もわかりやすいものは、世界全体の貿易量、および生産量の指標である。  

    この指標は、オランダの経済政策の分析・企画立案を行う CPBという政府機関から毎月集計・発表されている。これは、「 World Trade Monitor」というデータだが、これによれば、世界全体の貿易量は、直近( 2019年6月)時点でピーク比-0. 9%の減少となっている。  

    ⑥リーマンショックとは、証券化商品に対する行き過ぎた投機によって金融機関が破綻したことによって、網の目のように複雑化した銀行間の資金のやり取りに齟齬が生じ、これをきっかけに金融機関の資金仲介機能が麻痺したために発生した危機である。

    ⑦過去において、この中国の米国債保有残高が急激に減少する局面では中国経済が非常に大きな減速を経験している。 2015年半ばから 2016年にかけての「チャイナショック」がその代表例である。当時も中国の米国債保有残高が急激に減少したが、同時に米国長期金利が上昇し、これをきっかけに世界のマーケットが大きく動揺した。  

    ⑧景気動向指数を構成している経済指標が何であるかが意外に重要だと考えるからである。より具体的にいうと、「先行指数、一致指数を悪化させているのは主に製造業に関連した指標である」という点が重要である。  

    日本経済の場合、結局は製造業、特に輸出産業が活況にならないと景気全体がよくならない。その意味で「一般論」としては、製造業関連の指標を組み合わせて作成されている景気動向指数(先行・一致指数)の動きは参考になる。そして、この指標の最近の悪化は、前述の世界貿易量の減速に連動した動きである。すなわち、現時点で景況が一方的に悪化しているのは、輸出産業を中心とした製造業ということになる。  

    雇用環境をチェックするのに有用な経済指標として「労働分配率」という指標がある。労働分配率とは、企業が生み出した「付加価値(利益と減価償却の合計値)」に占める人件費の割合のことである。労働分配率は、好景気の局面では低下し、景気が悪い局面では上昇する点が重要である

    9「日本銀行が自らの目標である 2%のインフレ率を実現できていない」ためである。確かに、現時点でインフレ率は + 0. 5%近辺で推移しており、これは極めてクルーシャル(重大)な論点である。税制の話に移る前に、この点について筆者の考えるところを述べておきたいと思う。  この日本の物価問題を考える有益なツールは「古典的なフィリップス曲線」であると考える。ここであえて「古典的」といったのは、現在の経済学では、フィリップス曲線というと、インフレ率と GDPギャップの関係を指すことが多いが、ここでは GDPギャップではなく、失業率との関係でインフレ率を考えるためである。  

    10.筆者は為替レートを決める最も重要な要因として「日米金融政策の差」を重視しているが、それを政策金利の差ではなく、日米のマネタリーベースの比率で表現したほうがよいと考える。ちなみにマネタリーベースとは、中央銀行が供給するお金の量のことである。  

    「共和分」の関係というのは、『ドル円レートと日米のマネタリーベース比率が、お互いに「つかず離れずの関係」を保ちながら変動している』ことを意味する。


    この「共和分」の関係を用いれば、ドル円レートと日米マネタリーベースの間の「均衡値」を算出することができる。先ほどの犬の散歩の例でいえば、「均衡値」とは、「いつも歩く定番の散歩コース」みたいなものであろうか。  そこで、ドル円レートと、日米マネタリーベース比率との共和分の関係から算出した「均衡値」を図示したのが図表 2- 28である。この「均衡値」は、日米の金融政策の差(ここではマネタリーベースの比率)からみたドル円レートのトレンドを意味する。

    11.「リスクオフ」局面の特徴としては、  ①株価の急激な下落  ②国債(特に国際的に信用度が高い米国債)の利回りの急低下  ③「逃避資産」としての性格を持つ「金(ゴールド)」価格の上昇(図表 2- 30)  ④「 V IX指数」に代表されるようなボラティリティ指数の急上昇(図表 2- 31)  ⑤円高、およびスイスフラン高の進行

    12.「双子の赤字」とは、国際収支(正確にいえば経常収支、または貿易収支)の赤字と財政収支の赤字が並存する状況を指す。通常、財政赤字は国債発行によって賄われる(「ファイナンスされる」という)が、ドルは世界的な経済取引に使用される通貨として圧倒的なシェアを誇るので、米国政府が発行するドル建ての国債は安全な資金運用手段として米国以外の投資家からのニーズも高かった。そのため、米国の財政赤字は海外投資家による米国債の購入によって比較的容易に賄われることになった。  

    米国が長期的に「国際収支の赤字」の状態にあるということは、海外からの資金流入によって経済活動のためのお金を自転車操業的に回さねばならないことを意味すると捉えられてきた。  この海外から回ってくるお金を集める手段がドル建ての国債であったわけだが、国際収支が赤字ということは、何らかの理由で海外からの資金流入が止まってしまうと、その分、経済規模を縮小させないと米国経済が回らなくなることを意味する。  

    13.

    対 GDP比で 90%を超える国家群のデータは 96年分しか反映されていなかった。除外された 14年分のデータは、主に 1940年代のオーストラリア、カナダ、ニュージーランドであったが、これらの国では当時、大幅な政府債務残高がある中、高成長を実現させていた。  ②データ加工に問題点があると考えられる。例えば、 19年以上にわたって GDP比 90%以上の政府債務を有しながら平均で実質 2. 6%の経済成長を実現させていたイギリスと 1年間だけ GDP 90%以上の政府債務で実質経済成長率が-7. 6%であったカナダのウェイトが同じとなっている。  ③前述の推計に際して、 26年間以上にわたって政府債務比率が 90%以上でありながら、平均して実質 + 2. 6%の成長を実現させていたベルギーのデータを欠落させたまま定量分析が行われていた。  ④この ①から ③までの問題点を修正した上で再推計してみると、政府債務の対 GDP比率が 90%以上であった国の平均の実質経済成長率は + 2. 2%となった。  ⑤なお、 2000年から 2009年まで時期のデータで同様の実証分析を行うと、政府債務の対 GDP比率が 90%以上の国のほうが、同比率が 30 ~ 60%の国よりも平均の実質成長率が高いことがわかった。  

    日本の財政状況をどのようにみればいいかという点について考えてみたい。  まず、「財政が破綻に向かって走っていく」という点を具体的にどのように数値化すればいいかという点が重要である。  具体的に、これは政府債務残高(ひらたくいえば国債発行残高)の対 GDP比率が限りなく「発散」していくことを指す場合が多い。「発散する」というのは、政府債務残高の対 GDP比率の数字が時間を追うごとに加速度的に増えていく状況を指す。逆にいえば、この比率が上昇していても、その上昇ペースが減速していき、最終的にはある一定の比率の近辺で安定的に推移するような状況になれば、「財政は破綻しない」ということになる。  それでは、その「財政が破綻しない」ためのマクロ経済的な条件は何かというと、それは、「国債利回り(加重平均)よりも名目経済成長率のほうが高い」という条件である。これはいわゆる「ドーマー条件」といわれるものである。「ドーマー条件」では、名目成長率が日本経済の「収益率」を代替する。国債の利払いは国の税収、ひいては、一国としての日本の稼ぎからなされるので、収益率が利払い費(国債利回り)を上回っていれば、財政的なコストは十分に賄えることを意味している。日本における「ドーマー条件」の推移を示したものが図表 3- 4となるが、日本の場合、名目成長率が低いものの、国債の平均利回りはさらに低い状況が続いており、現時点ではドーマー条件を満たしている。

    ブランシャール論文では、これに加えて、「厚生コスト」を考慮する。ここでいう「厚生コスト」とは以下のようなものである。  政府債務残高があまりにも増えるとその利払い費も増える。利払い費は国債に投資した際の金利収入を意味するが、それが増え過ぎると、民間企業に貸した場合の金利収入(社債金利や株式の配当)を上回ることになる。このような状態が続くと、やがて投資家は民間企業の株式や社債には投資しなくなり、高い利回りでなおかつリスクが低い国債への投資を好むようになる。  このケースでは、確かに国が国債発行によって資金調達することは可能だが、その分、民間企業の投資が減り、結局、これが経済成長率の低下をもたらす。この状態が続き、成長率を大きく下げると、やがて成長率が国債利回りを下回るようになり、前述の「ドーマー条件」を満たせなくなる。これが常態化すると、政府債務の対 GDP比率は発散し、最終的には日本の財政が破綻することになる。  この「厚生コスト」について、ブランシャールは、前述の「ドーマー条件(名目経済成長率と国債利回りの差)」と「企業の ROA(資産収益率)と金利の差( →図表 3- 6)」を比較すべきとしている。

    14.「ディビジア指数」が具体的に意味するところだが、例えば、残存期間 10年の国債利回りがゼロになってしまった場合、当該国債は現金等価物になってしまう。そして、この場合、日銀が残存期間 10年の国債を購入し、その代わりに現金(マネタリーベース)を供給したとしても、これは単なる現金と現金(等価物)の交換に過ぎなくなる。  つまり、単純計算では、日銀の保有国債残高の増加によってマネタリーベースも増えることになるが、「質(現金との違い)」を考慮すると、量的緩和の効果は全くないということになる。このように、「質」を考慮するのとしないのとでは、その意味合いが大きく異なってくるのである。  

    FTPLに関する論文は多岐に渡り、数学的にも難解な部分があるので、一言で表現するのは難しい。そこで、より実務的に解釈すると、「積極財政に転じることで生じた政府債務を将来の増税によって返済していく」という従来の標準的なマクロ経済学的な考え方の前提をなくしてしまっても、政府債務(対 GDP比率)は、物価の上昇によって返済可能であるという考え方になろうか。  この FTPLは、標準的なマクロ経済モデル(「ニューケインジアンモデル」といわれる)の抱える問題点の一つの解決策として提示されたものである。  その問題点とは、金融政策がいわゆる「ゼロ金利制約」に陥ってしまうと(すなわち、政策金利がゼロ近傍まで低下してしまった場合)、金融政策が機能しなくなるという点である。  すなわち、標準的なマクロ経済理論では、金融政策がゼロ金利に到達してしまうと、その後はデフレに有効な金融政策の処方箋を導き出すことができないという建て付けになっている。これは前述の「量的緩和無効論」ともつながる。  

    MMTは「自国通貨建てで財政赤字を拡大させれば、政府は簡単に経済の長期停滞から脱出できる」

    主流派経済学の重鎮たちは、執拗に MMT批判を展開している。彼らの批判は大きく分けて二つある。  一つ目は、 MMTが主張するように「規律なく」財政支出を拡大させてしまえば金利が急騰し、民間投資が阻害されてしまう懸念(「クラウディングアウト」)である。  そして、二つ目は、財政支出を無限に拡大させることによる(ハイパー)インフレ懸念である。  


    「民間の賃金は政府の定める最低賃金から大きく逸脱することはないだろうから、最低賃金を通じて全体の物価は制御可能である」というのが MMTの主張である。それゆえ、 MMTでは JGPが極めて重要な役割を果たし、 JGPなしで MMTは語ることができないものとなっている。  

    米国を例に取ると、 1930年代終盤から 1940年代にかけて実施された「ニューディール政策」である。その具体的な政策はあまりに有名だが、  ①財政支出の拡大(国債の大量発行に加え、同時にいろいろな種類の増税も実施された点に注意)と政府事業による雇用創出  ②ゼロ金利・量的緩和政策( 1942年からは「 Bond Price Peg」という事実上の国債利回りの固定化も実施)による財政ファイナンス  ③物価統制

    15.

    数ある増税のメニューのうち、消費税が選好される理由としては以下の三つがあると考えられる。  第一点は、「直間比率」の見直しである。「直間比率」とは、税収における「直接税」と「間接税」の割合のことである。  

    第二点は、「貯蓄と勤労意欲に対するインセンティブを高め、できるだけ高い経済成長を維持する」という観点である。  少子高齢化がどの先進国にも増して加速度的に進行する日本にとって、限られた労働資源をいかに効率よく稼動させるかということは、それなりの経済成長率を維持するために重要な論点である。 80年代に学界で一大勢力となった「サプライサイド経済学」では、労働者にどのように勤労に対するインセンティブを付与するかが検討されてきたが、このときに議論されたのが、まさに所得減税であった。  

    第三点は、「安定財源」としての位置づけである。  所得税や法人税を中心とする直接税は、景気動向に大きく左右される。そのため、景気が悪化すると税収が大きく落ち込み、その分を国債の増発に頼らざるを得なくなる。さらに、景気悪化局面では、政府が景気浮揚策を打ち出す必要が出てくるとすれば、その財源として国債が増発され、その結果、財政赤字が拡大することになる。  確かにその後の景気回復で、直接税収が増えれば、それによって景気悪化局面の国債を償却すればよいということになるが、実際に経済政策を策定する場合、景気循環から生じる景気悪化と少子高齢化等の「構造要因」によって生じる成長率の低下の区別がつかないことが多い。一時的な景気悪化だと考え、国債増発で財源を補填したところで、これが構造的要因による恒久的な成長率の低下、そして、それによる税収の恒久的な落ち込みであった場合、財政赤字が累積に膨らんでゆくことになる。これを可能な限り阻止するためには、景気に左右される度合いが小さい消費税のウェイトを高めるしかないというのが、消費増税が選好される理由の一つとして指摘されてきたところである。  

    16.

    *1  古典的なフィリップス曲線  英国の経済学者アルバン・ウィリアム・フィリップス( Alban William Housego Phillips)が実際に英国において 1862年 ~ 1957年生じた現象から 1958年に論文で定義した曲線。失業率が低いほど物価上昇率は高く,失業率が高いほど物価上昇率は低いという逆相関の関係を示した。 *2  オーカンの法則  米国の経済学者アーサー・オーカン( Arthur Okun)が 1962年に提案した経験的に観測される関係則。米国において失業率が 1%程度上昇すると, 3%程度の GNPの落ち込みに相当するとした。ただし他国においては、成長率と失業率の関係がアメリカほど明瞭でなく、そのままの形では適用できないとされる。 *3   NAIRU( Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment)  インフレを生じさせない失業率の下限のこと。「自然失業率」とも呼ばれる。失業率とインフレには相関関係があり、失業率が NAIRUの値を割り込むと、急激にインフレが加速すると考えられる。 *4  イールドカーブ・コントロール  イールドカーブとは縦軸に「債券利回り」、横軸に「債券残存期間」を取り、両者の関係を表す曲線を指す。「イールドカーブ・コントロール政策」とは金融市場調節によって長期金利と短期金利を操作する金利政策で、日本においては、短期金利について日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス金利を適用し、長期金利について 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するように長期国債の買い入れを行うことを指す。 *5  ソロスチャート  為替相場を対比する二国の通貨流通量から読む方法。さまざまなバージョンがあるが、一般的には中央銀行が供給する「マネタリーベース」の比率を取ることが多い。 *6  ボラティリティ指数( VIX指数: Volatility Index)  米国シカゴオプション取引所によって、「 S& P 500種指数」のオプション取引の値動きをもとに算出・公表されている指数のこと。この数値が高いほど、投資家が先行きに対して不安を感じているとされる。別名、「恐怖指数」とも呼ばれる。 *7  リカーディアンの前提「リカードの等価定理( Ricardian equivalence theorem)」ともいう。米国の経済学者・財政学者ジェームズ・ M・ブキャナンが、英国の経済学者デビッド・リカードに遡及して命名したもの。景気刺激のために政府が国債を発行し、減税、ないしは、財政支出を拡大させたとしても、その発行された国債の償還が将来の増税によって賄われると予想される場合、家計は貯蓄を増やして消費を抑制するため、減税や財政支出拡大は景気を刺激する効果を持たないとする考え方。 *8  ドーマー条件( Domar' s theorem)   1940年代にエブセイ・ドーマー( Evsey David Domar)によって提唱された、プライマリーバランス(基礎的財政収支)が均衡している状況下において、名目金利 <名目 GDP成長率という関係であれば、財政破綻は起きないという定理。 *9  ゴルディウスの結び目  古代アナトリアにあったフリギアのゴルディウス王が結んだ縄の結び目。複雑な結び方をしたので誰も解くものがおらず、「これを解いた者はアジアを支配するだろう」と予言したが、アレクサンドロス大王が剣で切断しアジアを征服したという逸話から難題や難問を指す。「ゴルディアスの結び目」「ゴルディオンの結び目」「ゴルディオスの結び目」とも表記される。
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    投稿日:2020.03.09

  • garboflash

    garboflash

    金融政策と財政政策の2つの次元で考えて、経済がどのような影響を受けるかについて言及した本となっています。
    最近は消費税に関してMMT含めて極論に偏りすぎている意見を見かけますが、公平な立場で経済状況の分析を行っている本としていいなと思いました。

    落ち着いた形で書かれていますし、豊富なデータをグラフで示して、詳細な分析から結論を導き出すという手法は好感。
    今後どう日本経済を回すかと考える上で、極論に振り回されずに冷静になってやれることを整理するのにいい本だと考えます。
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    投稿日:2020.01.28

  • るうちゃんパパ

    るうちゃんパパ

    グラフや用語など難しいところはあるが、現在のそしてこれからの日本を知ることが出来る、読み応えのある一冊だ。

    投稿日:2019.12.29

  • ひがつくひと

    ひがつくひと

    グラフを読む能力のない私には、なかなか難しい本でした。しかし、7割くらいは理解できたかな。

    追伸
    日銀審議委員になられるようで、反緊縮改革がどうかどうかすすみますように。

    投稿日:2019.12.23

  • nobu2kun

    nobu2kun

    「#消費税10%後の日本経済」すばる舎、安達誠司著
    Day24
    10月の消費増税直前に、その後の日本を予想したという内容。主張の根幹は、ようやくデフレ脱却に光が差したタイミングでの税率アップは極めて残念ということだが、足元はそこまでの増税感はない。ちまたで言われるようにキャッシュレス還元で問題の顕在化が先送りされているだけなのだろうか? もしそれでソフトランディングに成功したならば一石二鳥の名政策だったということになるのだが。
    本書内では、さまざまな統計や指数の類が取り上げられ、初耳のものも多く、ざっと読んだのでは、なかなかポイントが頭に入らない。
    タイミングを見て再読したい。
    KindleUnlimited
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    投稿日:2019.12.13

  • darkhead

    darkhead

    日本経済の現状分析を目的としており主張に華やかさはない。
    セルサイドのエコノミスト・レポートを読んでいるような感じだが、実際著者はエコノミストです。
    それにしては長いかなーと思いつつ、経済学のアカデミックの世界での潮流なども知れるお得な一冊。

    2019年8~9月あたりの足下での分析なので、金融庁の2000万円問題など、数ヶ月経っただけの現在(2019年11月)でも、誰も話題にもしておらず古くなっているものもあるが、そういったものも含めて、季刊のエコノミスト・レポートのように読みこなせば良さそう。

    昔、ソロスファンドの下請けをしていた、とか、『国家は破綻する』の検証結果への疑義は、マサチューセッツ大学(≠MIT)という二流の大学の院生によるものだったから、真面目に取り合ってもらえなかったんじゃないか、とか、あまり表だっては出てこなさそうな話が面白かった。

    消費税の「延期」というだけでは、将来の増税への事前の対処から家計は財布の紐を締めがちで、かえって消費意欲を減退させたかも、という指摘はなるほどと思う。
    だからこそ、次の増税を行うならその条件をはっきりと言明し、コミットするべき、という主張はそのとおりなのですが、任期の終わりが見えている安倍さんにそこまでは求められないか、とも感じる。
    それにしても、段階的に消費税率を上げることを法律に明記までしてしまった三党合意なんてものは、つくづく罪だったのですね。
    そういったあたりも含めての民主党政権への不満は、各所の行間からも十分に感じられ、著者の真面目な人柄が伺える。

    税制には国家の思想が反映されるもので、それを踏まえれば世界的な法人減税レースにも勝ちつつ、多少の格差は是として直間比率を是正する、という方針のもとでの消費増税は有り得べき姿との著者の見解に同意したい。
    個人的にはもう少し資産課税は強くても良いかな、とは思いますが。
    というより、抜け道をもう少し塞げないものか。
    相続税を減らすためにアパートを建てましょう、で、質の低い住宅が需給バランスも無視して建ちまくり、儲かるのはレオパレスだけ、みたいなの誰も幸せにしてないような。
    それで苦しむのは地主だけだから別に問題なく、それによって地主の富が移転するなら、という見方もありますが、そんな経路を経ないでも世の中が潤う仕組みは他に考えられるでしょう、と。
    もし考えられなくても、寄付税制を充実させるだけでも違うんじゃなかろうか、とか。

    それから、20代・30代の消費活動が住宅ローンを抱えているか否かで消費活動がまるっきり違うというデータが本書でも示されているが、住宅投資がGDPに一番効くからそこを刺激する、という施策自体に問題が出てきているような気がする。
    そもそも、正規社員に新築戸建てを購入させるための住宅ローン減税とか、地方政府が率先して債券を発行し、鬼城を建設してGDP嵩上げを図っている某国と、主体が違うだけであまり構造は変わらないような気が。

    とまあ、いろいろと考える材料をくれる良書。
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    投稿日:2019.11.18

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