【感想】実話怪談 でる場所

川奈まり子 / 河出文庫
(4件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 道標

    道標

    もういいの?―振り向いても誰もいず、それは私自身の声だった。松寿園スタジオ、青山霊園、女子美大付属高、開かずの邸、散在ガ池、廃病院スタジオ、源氏山公園、国道16号線、ホテル青い鳥…。また誰かを死なせてしまうことのないように綴られた、二十八の怪談実話。(表紙裏)

    冒頭に著者以外の実名が出てくることによって、結構なリアリティを感じられた。
    ただ、以降は基本的に仮名ばかりなので、いわゆる怪談実話の怖さにとどまっている。
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    投稿日:2023.04.19

  • もんがらかわはぎ@読書垢 児童書ホラー強化中

    もんがらかわはぎ@読書垢 児童書ホラー強化中

    共演した女性の多くが、亡くなったり、失踪しているのではないかと気がついた。突拍子も無い考えだが、そうとしか思えない数々の事象に背筋が寒くなる。無自覚のうちに死を振り撒いているのだとしたら、果たして私はどうするべきなのだ。

    ***

    名前は存じているが、単著は初読み。(そんなんばっかりだな)自分が共演した人物の多くが数年中に死亡したり蒸発したりするという不穏な語り出しから始まったこちらの怪談集。元AV女優という事で、体験談の多くはAV女優時代に体験した話達。
    静かな語りで語られる怪談話はどれも濃厚で重たい印象。まとわりつく恐怖は、まるでどろりとした淀のよう。一話一話が濃密なため読み進めるのに苦労したが、中々に不穏で常軌を逸した話が多かったように思う。個人的にはお気に入りの一冊であった。

    「青山霊園で祟られた少女」

    乗せたはずの女性が忽然と消え失せることで有名なタクシーの怪談。その消えた女性が目指していたとされる青山霊園を舞台とした恐怖体験。
    当時AV女優として仕事をしていた著者は、美羽ちゃんという18歳の少女と何度か共演することがあった。彼女は明るくハキハキした性格で同業の女優達から、いたく可愛がられている存在だった。明るく健康美にあふれる彼女であったが、ある夏の日普段の彼女からは考えられないほど暗く沈んでいた。尋常じゃない様子に理由を尋ねてみると「自分は死人に祟られてしまった」という衝撃の告白をしたのである。

    この美羽という少女の体験談はかなり悲劇性を帯びているが、割と自業自得感がある。墓所で肝試しをするだけでも結構罰当たりだが、そこで大騒ぎして最後のとどめにそんなことすればそりゃ祟られるだろう。普段静かに暮らしてる幽霊だって怒るに決まっている。普通に犯罪行為だし……。
    でも、その肝試しをした友人がその日や翌日に行方不明になってしまったり、事故に巻き込まれたりしたのを知った彼女の心情を考えるとその部分だけはちょっと同情。凄まじい恐怖と絶望にさいなまれていることだろう。(だからといって彼女たちが行った行為は簡単に許されないし、多分された側は許さない)
    酒の力がああり、その場のノリもあったのだろうが、その一瞬を楽しむために追った代償はあまりにも大きすぎた。

    「開かずの邸」

    怪談の題材としてよく取り上げられる、開かずの間。そこには何かよくない物がいて、それを封じ込めるために扉を開けることが禁忌とされているという事が多い。その手の話に出てくる開かずの間は、大体一部屋だけをさすが、その開かずの間が次第に増えていくという奇妙な家が某所に存在していた。
    AVの撮影で使っていたその家は、一見するとやや古いが裕福な家族が暮らしていただろうと推察される家であった。そこは撮影スタジオとして使われていたが、関係者の間では幽霊がでるともっぱらの噂の建物だった。曰く首吊り死体の幽霊を見た、曰く双子の幽霊を見たなど様々な噂があるその邸には、密閉空間ともいうべき地下室がある。そこは、外から鍵をかけることができ、なぜかシャワールームがあり、窓一つないさながら地下牢のような場所だった。
    事の発端は、そのシャワールームが理由なく閉鎖されたところから始まり、そこからまるで侵食するように範囲が広まっていった……。

    これはなんだかよくわからないが気味の悪い話である。幽霊がたびたび目撃されるのも不気味であるが、その家にある地下室がなんとも嫌悪感を覚える。
    地下なのにシャワールームがあり、外カギで、窓がない。まるで誰かを閉じ込めるために作られたようなその場所。ここがすべての怪異の始まりであるといわんばかりで嫌悪感が募る。著者たちが利用したことで何かが刺激されたのか、時間の経過とともに地下室にあるシャワールーム、地下室そのもの、地下室に続く階段まで。じわじわと侵食するように、あるいは侵出するように次第に開かずの間が広がっていく。この話の中でこの家で何があったのかが明るみにならず、不明なのがまた怖い。
    果たして何かを閉じ込めるように作られた地下室には何かいたのか?いたとしたら果たして何が?この家にいた家族たちはその地下にいたかもしれない物と一緒に暮らしていたのか?などなど色々な考えが巡るが、結論は出ない。その謎の部分がまたこの怪談を面白くしていた。

    「空き家じゃなかった」

    著者が20代の頃住んでいた近所で家が一軒丸々燃やしつくし、近くのアパートにも延焼するという火災があった。火元となった家は空き家と思われていたが、焼け落ちた跡から一体の遺体が見つかった。誰とも判別がつかぬほど焼け焦げたその遺体は、この火元の家の主人である人ではないかという話であった。まさか人が住んでいたとは思わなかった近所の住民たちであったが、そう思うのは仕方がないほど、この老人は隠れるように住んでいたのであった。
    やがて、家事のあった土地は更地になり、数か月して再び家が建てられた。今度の家主は、なんと焼死した老人の息子であるという。
    新築であるその家には前の老人が住んでいたころの面影など感じさせない明るい雰囲気に満ち満ちていたが
    やがて、その明るさに陰りが見え始めたのであった。

    こちらも家に関わる怪談話。空き家だと思っていた家から焼死体が発見されたことに端を発している。
    火事自体も凄惨だが、あくまでも事故。誰にでも起こる可能性のある不幸な出来事だ。
    しかし、本当に恐ろしかったのは老人の息子家族がくだんの家が建っていた土地に新築を立て越してきたところからだ。
    締め切られた家の中で何かが起こっていたことはなんとなく推察できるが、多くを語れるものがおらず真相は闇の中。
    老人の件はおそらく、すべてが終わった後の話。この土地にかかわったものの末路、つまり顛末部分だろう。多くの住人はここの部分だけを長年見ていたので何も不思議に思わなかった。
    だが、新しい家が建ち、そこに新しい住人が越してきて、初めて気が付く違和感。息子家族も明らかに老人と同じ道を辿っていて鳥肌が立つ。
    この土地で昔何があったのか、本当にわからないのだが、分からないからこそ恐ろしい。
    この家に住んでいる息子夫婦に話が聞ければ一番なのだが、徹底的に他の住民との交流を断っているのでそれも難しそうだ。
    閉鎖的な家で何が起こっているのか。家に何かがいるのか……。様々な恐ろしい想像が働いてしまう話だった。

    このほかにも「リフォームの跡」、「タクシーの夜」、「分身」という話も怖かった。
    特に「タクシーの夜」、「分身」は形容しがたい気持ちの悪さが付きまとう話だった。全くかかわりのない第三者ですら読んでいて、尻の座りが悪く、気持ちがむずむずとした。
    また、この二作は、一番最初に著者がこの怪談本を刊行するに至った理由である最初の「怖い私」にも関連があるような気がしてならない。
    この二作で起った出来事が、「怖い私」にかかっているとしたら、あの時著者の耳元で囁いた、女の声は一体誰なのだ。
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    投稿日:2022.04.12

  • まっしべ

    まっしべ

    川奈先生の職歴柄、スタジオだったり廃屋・廃施設などでの体験談が多め。可能な限り’場所’を明確にする事で読み手の想像を補助してリアリティを生み出す意図なのかと思う。

    また、実話系でありつつ文章は文学的

    実話らしくオチや因果がはっきりしないので、文学的表現を加えると読み口はいよいよボヤけてしまっているような。

    やはり実話怪談は極短編くらいの長さで鋭いキレがあってこそなのだろうか。


    1刷
    2021.6.5
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    投稿日:2021.06.05

  • stardancer

    stardancer

    怪談が好きなのでちょくちょく読みますがこれは私のタイプではなかったかな。怪談読みすぎて怖いぞと思うことがなくなってしまったせいかもしれないです。大体怪談本はお値段が高くて(ボリュームの割に)そろそろこれはというものに巡り合わないとこの世界からフェードアウトしそうな勢いです。続きを読む

    投稿日:2020.01.07

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