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吉田裕 / 中公新書 (86件のレビュー)
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ゴンチャロフ
ガダルカナル島での消耗戦後は日米間の海軍戦力の格差が急激に拡大し、マリアナ沖海戦で日本機動部隊は事実上壊滅、サイパン島陥落でB-29による日本本土爆撃も可能となった。制海権・制空権を奪われて兵員・物資…の輸送も困難となり、日本軍はフィリピン、硫黄島、沖縄などで絶望的な戦いを繰り広げることになる。政府によればアジア・太平洋戦争での戦没者は約310万人だが、著者の推計によればそのうちの9割はこの時期、すなわち1944年以降に集中しているという。こうした戦局の悪化が兵士たちの心身にどのような影響を与え、どのような死をもたらしたのか。そこに日本軍兵士としての特徴を剔出できるなら、帝国陸海軍に内在するどのような構造的特質がそれらを生み出したのか。餓死、マラリア、戦争栄養失調症、海没死、特攻死、自殺、戦争神経症、覚醒剤など様々なテーマを追い、兵士たちが直面した凄惨な現実を明らかにする。続きを読む
投稿日:2024.04.16
ひらやま
人災…。が一番の感想。敵からの攻撃で亡くなる兵士よりも、飢餓や上官からの私的制裁、覚醒剤やマラリアなどの感染症に苦しめられた兵士が多かったのは想定内だが、虫歯や水虫にまで苦しめられていたというのは、戦…争ってなんなんだろう、さらにこれを美化する人達はなんなんだろうという気持ちにさせられた。続きを読む
投稿日:2024.02.28
海外おやじ
このレビューはネタバレを含みます
本作は一橋大学名誉教授の吉田氏による、太平洋期間中の末端兵士の状況を記録した作品になります。 太平洋戦争を4つの期にに分類し、その中でも絶望的抗戦期に焦点をあてます。各種資料から戦地での兵士の状況をあぶりだします。具体的な切り口は、衛生状況、医療、食事配給、ロジスティック、通信、人員管理、軍需品製造、組織管理、グループシンク、などでしょうか。 なお、ご参考までに4期を挙げますと以下の通りです。もう勝ち目がないことが薄々認識されているなかで、だらだらと戦いが続いている期間、でしょうか。 戦略的攻勢期(1941.12 – 1942.5) 戦略的対峙期(1942.6 – 1943.2) 戦略的守勢期(1943.3 – 1944.7) 絶望的抗戦期(1944.8 – 1945 .8) ・・・ 私が持った印象を端的に述べれば、最悪、悲惨、地獄、といったところ。 人の命よりも国家の存亡が優先された時代。もう読んでいて唯々悲しい気持ちしか抱けません。信じられない。 恵まれた時代の豊かな国にいるともう別世界の話ですが、ほんの一世紀前の現実であることを考えると空恐ろしい気がします。 中でも印象的なのは、非戦死の多さ、不透明な組織構造、立ち遅れ、でしょうか。 ・・・ 戦争の本ですので、死の記述は前編にわたって記載されています。それにしても非戦死に関する記載は頻度が高いです。そして実は戦闘以外で相当度の方が亡くなっているという事実に愕然とします。 具体的に言うとその死因は、病死、餓死、自殺、いじめです。 筆者のひく書籍によると、病死の率は、1941年の日中戦争時点でおおよそ50%超、そして徹底的抗戦期ではこれが75%にも上るという(P29, 30)。しかも当時は戦(闘による)死に重きが置かれたため、傷病兵をその場で殺し戦死扱いとする、あるいは兵站上の問題からそのまま放置することも多かったとか。つまり戦死の率は更に低い、と。 餓死については、制海権・制空権を相手に握られ、兵站が途絶された状況では、容易に想像がつく死因であります。作中では、意識がもうろうとなった餓死寸前の兵士のスケッチなどもありリアルです。 自殺というのは、想像には難くないものの、今まで私があまり見聞きしない戦中の死因でした。作品では宜昌作成という日中戦争時の戦闘で既に、一連隊(およそ1,500名)でその戦闘作戦中38名の自殺者を出したとか。戦地でのプレッシャーに対するメンタルケアなぞおおよそ当時の上官の意識にはなかったでしょうが、何とかできなかったのか。いわんや終戦間際はいかばかりだったことか。 いじめについても幾らか記載があります。古参兵とが新参兵を撲死させるのは良くあることだそう。また終戦末期では精神障碍者なども戦地に送られたそうで、こうした古参兵の格好の餌食にされたことかと思います。 国を守るための戦地に赴いたのに、この大切な生命は戦闘以外のところで、無駄にされてしまったのです。 ・・・ もうこれ、なんでだろう、という話になるじゃないですか。 本書には個別の原因追及は余りありません。むしろ大局的に明治憲法の制度的・構造的要因を指摘していました。曰く、実は一元的責任集中していないとのこと。逆だと思っていましたが。 個人的には、より現場に近い組織で、改善がなされなかった原因・理由の方が気になります。例えば古参兵によるいじめを年若い上官が見て見ぬふりをしたこと。今でいえば、海外拠点での古参のやり手ベテランの些細な不正を、年若い駐在(彼も収益プレッシャーが厳しい)が見て見ぬふりをする、みたいに読み替えできるかもしれません。 そのほかにも、なんで? 意味あるの? 何のために? みたいな、読んでいて?が消えない悲しい状況描写がたくさん。意味不明の戦争だ、という印象が読み進むにつれて強くなります。 ・・・ また、軍備の立ち遅れについての記録もあります。よくもまあ戦争を開始・継続したなあというため息でいっぱいになります。 二つほど申し上げます。 先ずは馬の使用。日本軍は東南アジアへ進攻していたものの、馬は暑さに弱いらしいです。当然の事ながらヘタって馬が死んでしまう。爾後はとうぜん、人力で運ばなくてはならない。体重対比の最大荷重量(35-40%)があるそうですが、日本軍は体重と同じ量を運ばないといけない兵卒も居たそう。ちなみに当時のトヨタは粗悪であったそう。米軍はフォードの運搬車と戦車で戦っているときに馬のち竹やりですよ。戦いになりません。戦争以前の力量差。 もう一つは通信技術の軽視です。米軍が無線通信に力を入れ、ハンディートーキーを開発しているさなか、日本軍の現場では無線はおろかあっても有線。そして有線は爆弾一つで一瞬で途絶。さらに戦争末期には伝書鳩を使っていたそうです。鳩ですよ鳩。 現代の感覚だと、なぜ早急に戦争をやめなかったのか、という話です。 ・・・ ということで吉田先生の書籍でありました。 戦争の本としては、末期に焦点を当てた、そして現場の声を集めたという点が良かった気がします。 私も現実に不満不平はありますが、読後はまったく自分の状況はマシだと思いました。作中の状況は、一言でいえば、不条理の極北、であると思います。 戦争の記録の集成としても貴重ですが、なぜ状況が放置されたのかと疑念が止まらない読後感でした。『失敗の本質』を再読したくなりました。
投稿日:2024.01.06
犀
先の大戦では310万人もの人が亡くなった。その9割以上が1944年以降に亡くなったそうだ。中でも餓死や自殺が大変多かったということに驚いた。 飢えだけでなく、覚醒剤中毒、虫歯、水虫などに苦しんだ様子…も詳しく書かれていた。 近頃、日本軍は強かった、凄かったと礼賛する内容の話を聞いたりしたが、そんなことはなく、しっかりと負けを認め、総括することが大切だ。続きを読む
投稿日:2023.08.22
じろう
日本とアメリカの軍事力、技術力の差が初学者の私でもわかりやすく記されていました。 美化されたものではなく、根拠をもとに戦時下の状況が分析されていてとても勉強になりました。
投稿日:2023.01.27
nuhuaueo0
日本近代戦史が専門の著者が、太平洋戦争時の日本兵が置かれていた状況を淡々と分析している。言葉は平易だが、内容は結構深い。これを読めば、太平洋戦争は負けるべくして負けた戦争だったことがよくわかる。
投稿日:2022.11.21
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