【感想】ヒューマンエラーの心理学

一川誠 / ちくま新書
(14件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • y-mitsu

    y-mitsu

    人間の知覚認知は有限である。人間はヒューリスティクス的な判断を行い、様々なバイアスに陥る。そんなことがよくわかる。これらを心のどこかに留めおきつつ社会生活を送るべき、と思う。

    投稿日:2022.07.24

  • ヨーヘー

    ヨーヘー

    様々な錯覚について説明。(ほぼこれ)
    人間はすごくない。すぐ錯覚する。
    メタ認知。自己の認知の正確さや状態を認知すること。
    どんな間違いを起こしやすいか理解して適応すべき。

    投稿日:2022.06.30

  • わっさん

    わっさん

    以下、引用

    ●では、こうした言語を駆使した能力によって、知覚や認知のさまざまな問題を解決することはできるでしょうか?このことに関しては、興味深いことがいくつかわかっています。まず、経験や文字による伝達によって得られた知識によっては、なかなか錯覚や錯視は補正できないという点です。ただし、知識によって観察の際の枠組みを与えられると、錯覚や錯視を減らせる可能性があります。たとえば、「ミューラー・リヤー錯視」という有名な図があります。「<―>」「>―<」という二図を並べて見ると、中央の線分は、両端の矢羽根が内向している(前者)とより短く、外向していると(後者)とより長く見えるというものです。この錯視において、観察者に、それぞれの主線の端点をつないだ線が平行に見えるかどうかを判断させると、錯視の量が減ることが知られています。観察の枠組みについてのこうした知識を得ることで、錯視の程度を軽減することは可能です。しかし、こうした知識による効果は、当然のことながら、そうした枠組みのもとで観察できる状況に限定されます。
    ●たとえば、エビングハウス錯視(第一章図1-2)では、周囲の円の大きさとの対比と、その差の強調によって、中央の円の大きさが違って見えるという錯視が生じました。ところが、中央の円を、オセロゲームの石のようなものに置き換え、人差し指と親指とで「摘まむ」ときの指の間隔を測定すると、周囲の円の大きさが大きくても小さくても、錯視は認められませんでした。(中略)つまり、見るための視覚情報処理と、身体的動作のための視覚情報処理とでは、どうやら処理様式が異なっていて、同じ対象を観察していてもそれらの間には乖離があるようです。→指さし点呼、五感を使っての確認。
    ●テレビコマーシャルなどでよく使われているテクニックに、売り込みたい商品と人気のある俳優やスポーツ選手とを、同じ映像中に示すというものがあります。さらに、BGMに有名なヒットソングを流したりするのもコマーシャルではおなじみの手法です。一度であれ繰り返しであれ、人気者や高評価の音楽などと対で提示された対象は、その後、単独で提示された場合であっても、魅力的と評価されやすくなる傾向があります。この効果は、一度だけの対提示でも生じることがありますが、繰り返し提示する方が、より大きな効果が期待されます。
    ●カウネマンが指摘したように、人間は認知的に怠惰です。そのことを考慮すると、この現状維持バイアスは、状況を変えることで生じるかもしれない実質的な不利益や心理的負荷を避けようとする傾向の現れかもしれません。実際、意思決定を長時間繰り返した後に個人の決定の質は低下することが知られています。意思決定は、それを行なうためにある程度の認知的負荷がかかります。そのため、意思決定をすること自体が、それなりにストレスフルな認知課題と言えます。
    ●実は、私たちは、自尊感情を傷つけないように、自分の失敗はあまり認知しませんし、記憶もしません。うまくいったことだけ覚える傾向があります。(中略)失敗を起こすかもしれないという、自分に不利な情報も自尊感情を傷つけることになります。そのため、失敗しやすさ自体、一般的には認知されにくく、記憶されにくくなります。逆に、自分に都合の良い情報は、他の情報よりも認知されやすく、記憶もされやすいのです。このような特性があるため、人間には失敗のリスクを過小評価しやすく、そのことによって、かえってリスクが大きくなりやすいという困った特性があります。
    ●たとえば、家屋や家財の損害を避けようとするような損失回避バイアスが、避難行動を遅らせることを指摘しましたが、(中略)避難をしないと、あるいは避難が遅れると、命や家族など、家屋や家財といった目の前にある物品よりもずっと高価なもの、大事なものが失われる可能性が高まることを指摘するのです。(中略)同調バイアスについては、周囲に先んじて自分だけ避難することを困難にする可能性を指摘しました。しかし、自分以外の多くの人がすでに避難行動を起こしていると認識すれば、同調バイアスによって、それと同様の避難行動を誘発しやすくなります。たとえば、実際に避難をしている人たちの行動を見せたり、あるいはその映像を見せたりすることで、それを見た人に避難行動を促すことになるでしょう。(中略)また、危険の兆候が認められた場合、あらかじめ早めに避難行動を採ることを自治会などの集団内でルールとして決めておく(中略)そうしたルールは、自分一人で決めてもなかなか実行できません。ところが、集団で決められたルールは、その集団への帰属意識が高いほど守られやすいのです(集団浅慮バイアス)普段から自治会で集会を開いたり、集団で避難訓練を行なったりするといった帰属意識を高める工夫と、こうしたルールを組み合わせれば、さらに効果的に避難行動を誘発することも可能です。
    ●ある状況を実際に体験していなくても、その状況を繰り返し想像すると、その状況について体験したような虚記憶が形成されます。つまり、実際に自分が行ったことがない行為でも、その行為をしたところを繰り返し想像していると、やがて、虚記憶が形成され、自分で実際にその行為をしたように思い出されるようになることがあるのです。この現象は「想像力の膨張」と呼ばれています。この想像力の膨張は、記憶の元が、実際の体験なのか、あるいはそのことを想像したことなのかが混同されるという点では、ソース誤帰属の一つとみなすこともできるでしょう。
    ●過去の感性的体験に関する記憶は、事後の情報によって捏造されたり、膨張されたりしたものかもしれないし、ピーク・エンドの法則に従ってあまりに簡易に集約されたり、自我防衛規制によって検閲的に編集されたりしたものかもしれません。感性的判断に関する記憶については、正確さを求めるのは困難で、変容された可能性が高いものとして受け入れるしかないようです。
    ●さらに、機械まかせの判断が多くなることは、日常生活上の私たちの覚醒度を低下させることも予想されます。自分自身で注意を配っていなくても、何かあれば機械が警告してくれるのですから、そうした道具がなかった場合と比べると覚醒度が低下してしまうのは当然のことかもしれません。覚醒度の低下は、全体的な認知処理のレベルを低下させることになるでしょうし、その結果として、日常的なさまざまな気づきは今より減ってしまう可能性もあります。そのことが私たちの生活に及ぼす影響は小さくないでしょう。
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    投稿日:2022.03.06

  • さしみ

    さしみ

    2021/01/30読了

    卒業論文でヒューマンエラーについて執筆したくて読んだ。
    元々心理学に関心があったからか、認知バイアスの話を非常に面白く読むことができました。
    認知バイアスに興味を持ってのめり込むには、最高の一冊なのではないでしょうか。おかげさまで、認知バイアスの本を最近読み漁ってます。続きを読む

    投稿日:2021.03.17

  • yonosuke2021

    yonosuke2021

    前半は知覚、後半は思考や記憶のエラーやバイアスの話。どれもよく紹介されているねただが、コンパクトかつものすごくわかりやすい。それに深みも感じられる。認知バイアスおそろしいねえ。

    投稿日:2021.01.08

  • かな

    かな

    このレビューはネタバレを含みます

    人間は思ったほど認知機能が優れているわけではなく、現実としてそこにある世界をありのまま認識できているわけではないらしい。しかもほかの動物と比べるとかなり限られた世界しか見えていないようです。人間である限り、一生聞けない音、見えない光、感じれない感触、嗅ぐことができない匂いがあるのだと思うと、不思議な気持ちになるなぁ。
    そして、人間は思った以上にたくさんの認知バイアスや錯覚に絡め取られながら、無意識的に認知、思考しているとか。錯覚や錯視はさておいて、さまざまなバイアスの存在を知っているだけでも、今後自分が何か意思決定や思考するときの助けになります。知っていたからといってバイアスがなくなるわけではありませんが。
    特に印象深かったのは、自己の利益を最大化しようと合理的な判断を重ねると、全体の利益は小さくなってしまう「囚人のジレンマ」のくだりから、機械依存の危険性を指摘した部分。合理的な判断の積み重ねが社会全体にとっての最良とは限らない。

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    投稿日:2021.01.04

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