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高山羽根子 / 河出書房新社 (13件のレビュー)
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総合評価:
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やすお
表題作と2つの短編が収録されている。表題作「居た場所」は、中国南部や東南アジアから介護を学ぶために来日している小翠(シャオツイ)と語り手の物語。結構難しい作品だった。小翠が経験したことや住んでいた場所…の変化が何を示すかあまり理解したとは言えないし、フェレットのような小動物の存在なんかも、分かりそうで分からない。ただし、淋しさなんかを作品から感じた。 その他の短編では、「蝦蟇雨」は文字になっていない部分を想像するとホラーに近い印象。もう一つの「リアリティ・ショウ」は地獄だけが“リアル”だったのかもしれないと解釈した。続きを読む
投稿日:2022.05.31
脇 草太郎
かつて実習留学生としてやってきた私の妻・小翠(シャオツイ)。表示されない海沿いの街の地図を片手に、私と彼女の旅が始まる。記憶と存在の不確かさを描き出す、第160回芥川賞候補作。 短編3作収録。 その…中では蝦蟇雨(がまだれ)が面白かった。続きを読む
投稿日:2021.09.19
tehuu
この小説、主人公がまず、女性だと思い読み進めてたところから、すでに、私とは相性が合わなかったのでしょう。 大好きな小川洋子さんばりの無機質で時空が少しねじれているような文面に多少期待しつつ読み進めたの…だけれど、登場人物は、いたって普通の男女。背景や人物の言動に摩訶不思議な情景が加われば、興味そそられるのだけれど淡白な主人公の心のつぶやきが延々と続くだけで、感情移入も、想像もできず、こちらは、蚊帳の外。 私の読み込みと想像力のなさによるものと思います・・が。 最期に短編が二つ。 こちらは、アニメの世界?続きを読む
投稿日:2020.10.25
aki258
意味ありげな空気感はあるけど、何も意味あることは起こらずただ、旅して帰ってくるだけ。ちょっとよくわからない。
投稿日:2020.08.02
ぱとり
『温かくて粘りけのある液体は、およそ人の体内にあったとは思えない質感だった。粘る水分を指先ですくい取って鼻先に近づけると、先ほどまでいた市場のにおいが流れ込んできて私の頭(心?)の中にひろがった』―『…居た場所』 二冊続けて同じ作家の本を読む。東南アジアの空気感と生活臭がたちまち湧き上がる文章。けれど「ラピード・レチェ」でもそうだったように、そこはどこなのか、その存在の輪郭は薄い霧のように曖昧で、もどかしさ(?)が立ち上がりそうにもなる。 それがどこであろうと、一見関係のないように、ミステリーのような物語は進行するが、実はそこに潜む隠喩は情報過多の世界における正義感に繋がっているようにも見受けられる。つまり、糺されるべき不正があり、それは立場を秘匿したまま糾弾したとしても、正されなければならないものである、というニュアンスが隠れているようにも思えるのだ。一方で、そういった言説にありがちな表層的な価値観は、アジア圏特有の空気の描写によって現実的な裏付けを得て、単純さを超えて混濁した深さを伴うもののように響いてくる。つまるところこれは描写であって主張ではない。視覚的に捉え得る世界こそが、言語や思考を通して再構築される現実を超えた意味を構築する。そんなことを具現化する稀有な文章と思う。 『人が観測できるのは、世の中のたくさんのことの、ほんの一部の事柄だけだ。観測したことで、あるいは観測したからこそ、この人が苦しんでいるのだとしたら』―『蝦蟇雨』 まさに。ここにシュレーディンガーの猫のパラドックスの比喩を読み解くのではなく、例えば「天気の子」で描かれたような因果を見出すこと。「意味」とは自分のものであって、同時に他人のものでもある。そんな考えがこの作家の基底にあるものなのかも知れない。解決のないミステリー。あるいは、そもそも無意識の内に読み取ってしまう謎自体に、意味などないと作家は言うのか。その変わった手触りは癖になりそうな予感がする。続きを読む
投稿日:2020.07.03
knkt09222
このレビューはネタバレを含みます
*図書館。 上田岳弘「ニムロッド」と町屋良平「1R1分34秒」が受賞した芥川賞160回の、候補作。 SF趣味をまぶしながらも純文学にしか活路を見い出せず、半ば功労賞的に受賞した上田岳弘とは対照的に、高山羽根子は芥川賞なんぞにこだわらずにいられる、それこそ飛翔力を備えている。 純文学=文体の実験小説にもなり、SFでもあり、怪奇小説でもある、ジャンル横断型の作家になるはずだ。 何でも書ける作家が芥川賞に焦点を当ててみましたが何か、というレベルの作家だと思う。 ここで思うのは、やはり書きたいことを書く作家よりも、書きたいことを書かないことで浮かび上がらせる作家の手際のほうが、読者への喚起力は強いのだ、ということだ。 娯楽小説は昔は、講談調でもあったから、何でも書いた。最近は、というかSFの色が入ってからは、書かないことで書くほうへシフトし始めた。 そして純文学は、もとより文体の実験現場。書かないことで指し示すのは得意分野。 この意味で娯楽小説と純文学が近接しているのかもしれない。 まあ周辺ばかり書き連ねてしまったが、内容に少し言及すれば。 ・ジャック・フィニイ「盗まれた街」という古典SF。 ・家庭に入り込み共生する微生物→夫婦というものの気味悪さ→他者への違和感と同化。 2方向で素敵だ。 健気で可愛い女子ものとしても、語り手の得体の知れなさものとしても、タッタという動物ものとしても、すべての方向でよい……やはり、こういう選考員がいっからこういうの書いて芥川賞とってみっか、という策略が透けて見える。 いいんだか悪いんだか。作品としてはよい。
投稿日:2020.06.01
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