【感想】ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在

山内一也 / みすず書房
(13件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • miserybeatle

    miserybeatle

    面白かった…ウイルス関連本では頭抜けている

    こんなに知的好奇心をくすぐられる本は中々ない。ヒト中心の視点ではなくウイルスの視点から自然界を眺めたら、色んな概念が覆される

    投稿日:2023.02.21

  • ルー

    ルー

    ウイルスというと生命か、生命でないのか、というあたりで理解がとまっていたが、本書で「生命体としてのウイルスの視点」に接して、考え方が変わってきた。海洋中にも天文学的な数が存在する、人間のゲノムのなかにも、人体のなかにも潜んでいる。生命の定義にあてはまるかどうかというより、生命として考える方が、ゆたかであるということかと。ウイルスの「意味論」としては、人間の都合だけでウイルスを考えてはいけないというところかと思う。続きを読む

    投稿日:2022.02.16

  • inu-no-mimi

    inu-no-mimi

    Covid19が確認されるちょうど1年前に上梓された本。
    この本からわかることは、ウィルスのことをわかった気になってはならないということだ。
    Covid19は、どうすれば感染が防げるのかはわかっているが、ウィルスそのもののことはわからない。
    解決策がわからない問題が難しいのではなく、どうすれば解決するのか極めてはっきりわかっている問題のほうが難しいのだ。

    P3 ウィルスは独力では増殖できない。ウィルスは、遺伝情報を持つ核酸と、それを覆うたんぱく質や脂質の入れ物からなる微粒子にすぎず、設計図に従ってたんぱく質を合成する装置は備えていないからだ。

    P20 致死的な傷の場所が異なるウィルス同士では、互いに傷を直して生き返ることができる。ウィルスの死は、生物の死の概念を超えていると言えるだろう。

    P182 高い電波力・致死率の病気を起こすウィルスは、宿主の生物が高密度に集まっている環境でなければ存続できない。その意味で、これらの病は、都市化や畜産業の発展などへ舵を切った人類の宿痾と言える。今後もさらに人口が増え続ける以上、毒性の高い病原ウィルスが出現するリスクはさらに高まっていくだろう。

    P203 腸内は、皮膚の表面と同様に体の外であると考えることもできる。【中略】今後、我々の体内のウィルスが、我々の健康や病気に果たす役割が明らかになっていくと期待されている。
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    投稿日:2021.08.14

  • Sig Sugito

    Sig Sugito

    このレビューはネタバレを含みます

    ウィルス学の泰斗による、ウィルス及び感染症についての研究史と最新の成果(といっても、新型コロナ以前の2018年出版)を踏まえた本書は、もちろん、コロナ禍がはじまっていた2020年7月に購入したもの。なかなか、読みすすめることができていなかった。関係する書籍を複数並行読みをしているせいだ。

    本書をよんでいて、地球はウィルスの惑星だと思ったのは、水圏ウィルス学という最近の成果の紹介の部分である。地球上のどのような水にも、ウィルスを含む多様な微生物が発見されていて、その大多数が、全く知られていなかったもの(気づかれていなかった)であるという。また、人体には遺伝子の中に残るウィルスの痕跡をふくめて、多様な微生物と共生関係にあり、どのような共生関係であるのかも不明であるし、また、個人によってもそのバリエーションが異なり、同じ個人でも時間によって相が変わっているという。そもそもが、受精して胎盤に着床した受精卵には、精子から持ち込まれた異物が含まれているから、当然、免疫が発動されて排除されようとするはずだが、ウィルスによって持ち込まれた遺伝子コードが発現して、成長が継続するという。これは、おそらくは、有胎盤類が誕生したところまで遡るウィルス感染が我々を生んでいるということを意味している。ウィルスを避ける、清潔にするということは、生存に関わることだと言うことも、頭の中に入れておかねければならない、ということだ。

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    投稿日:2021.08.09

  • homari25

    homari25

    新型コロナウイルスに翻弄されて2年。ワクチンを打った人も周りに増えてきている一方で、ウイルスによって、オリンピックは無観客になったり、個人的にも、世界的にも大打撃を与えられた。そもそもウイルスって何なんだろう。今だから読みたくなったウイルスの変遷、仕組みをまとめた本だ。

    例えば、「なぜ石鹸で手を洗うことが予防になるのか?」ウイルスの核を覆っている外殻が、石鹸の中の油に弱いうえ、その核だけではウイルスが生き延びれないため。また、「なぜ長い間ある国で清浄されたと思われていたウイルスが数十年後に突然現れるのか?」それには各国の発展や輸出・輸入による動物や商品の取引など、大きい経済の動きが関連していたりする。
    (個人的には動物実験や新たに出てきたウイルス性の病気に対して牛やウサギ、猿が大量に死んでいるのが心が痛んだ…。)

    ウイルスの仕組みの解説、ワクチンが作られるまでの世界的な歴史の流れなど、コロナウイルスに限らず色々なウイルスについてのイメージがよりわかるエピソードがたくさんあった。それを今の新型コロナウイルスの動きとも繋がる部分があると思う。

    読んでみるととても目から鱗な事実が多くて、すごく面白かった。この本が新型コロナウイルスが出現する前に出版されていたのに、DNAワクチンの仕組みについても解説されているのが、今の時期とリンクしていて不思議な気持ちになる。

    高校の時に生物を選択して勉強していた人なら、「あ〜この単語あったわ〜」と懐かしい気持ちになるかもしれない。
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    投稿日:2021.07.09

  • すんすん

    すんすん

    難しかったけど面白かった。コロナをきっかけに、ウイルスとは?というものについて学ぶことができた。人類にとっては悪だとしても、ウイルスは人類よりも遥か昔から存在をしているし、共存している生物もいるわけで(それにはもちろん人類も含まれる)、いろいろと考えるきっかけになった。しかし根絶が宣言されているウイルスの数には非常に驚いた。やはり自然発生しているものは、科学技術ではまだまだ届かないことを改めて感じる。続きを読む

    投稿日:2020.08.09

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