【感想】神話学入門

松村一男 / 講談社学術文庫
(3件のレビュー)

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  • アングリマーラ

    アングリマーラ

    このレビューはネタバレを含みます

    要約

    ・神話とは(とりあえずの定義)
    ①物語である
    ②特定の集団や社会にとって価値あるもの、つまり真実を語っているとされる(神聖視)
    ③作者は重要ではない
    ④成立年代は不明ーその結果できるだけ太古にできたとされる

    ・19世紀の神話学
     歴史観、進化論の影響大
    神話は過去のもの、古い人間である未開人は未だに歴史を信じる、彼らを通して古代の人間精神を分析

    ・マックス・ミュラー
     神話を比較して、最古の神話を探求(比較言語学の印欧語探求の影響)
    神話の起原は、人の天上の自然現象に対する驚き
     業績:ゼウス、ユピテル、ディヤウス、チュールは共通して「天空」を意味する。神話の起原は天体活動
     神話の非道徳的、残虐性は天体活動の暗喩である→ギリシャの系譜を自認するヴィクトリア朝のギリシャ神話の品位を高めたい望みに都合が良い

    ・フレイザー
     人類の思考は呪術ー宗教ー科学の順に進化する。神話は呪術的段階。呪術において、力は伝染し、王から出た力は周囲の社会、自然に及ぶ。王の力が弱まると、活力に満ちた人が前王を殺して新たな王になる(=死んで蘇る神々
    ex)アドニス、ディオニュソス、デメテルの娘ペア(エレウシスの秘儀)、小アジアのアッティス、オシリス、バルドル、タンムズ
     業績:『金枝篇』人類最古の段階では祭司=王=呪術師=神

    ・前期デュメジル
     業績:『アンブロシア伝承圏』神々、神話の性質を裏付ける元になるシステム(構造)を想定。印欧諸神話だけにある共通の構造を発見。
    Ex)不死の飲料:アムリタ、アンブロシア、ネクタル
     

    ・20世紀
     神話は無意識の影響。無意識は時間に束縛されない。歴史的発展もない。
    →構造主義、反歴史観
    神話は今も、未来にも起こる人の無意識に普遍的にあるパターンの現れ

    ・中期デュメジル
     業績:印欧語族特有の思考パターンを発見
     印欧神話の三機能体系(三区分イデオロギー,三機能構造)。システム(構造)としての神話
     カースト制度の「ヴァルナ」、アヴェスターの「ピシュトラ」、ローマの「三大フラーメン(祭司)」を手掛かりに神々の機能を「神聖(主権)」「戦闘」「生産」に三区分
    「主権」の2側面:契約の神または魔術の神

    ・後期デュメジル
     神話は、当時の社会階層や儀礼の単なる反映ではなく、当時の世界の捉え方、世界観の表明。神話は世界を理解する際の手掛かり
    『神話と叙事詩』『古ローマの宗教』

    ・レヴィ・ストロース
     無意識は意識ほどではないが、理性的、論理的に働き、神話によく見られる二項対立の構造を用いて、世界に秩序を見出す。
     しかし二分割は本来の世界の姿ではないから不安を感じる→連続性のある儀礼を通して生きている世界に接する儀礼には人の恣意的な世界の切り取り方を停止、修正する役割『神話論理』
     
    ・エリアーデ
     神話によって存在の根拠を示し、存在の不安を解消する。神話の創造の時が完全な状態であり、神話も儀礼もその完全状態を再現するためのもの
    神話の創世記は聖なる時、それは真理の開示、存在の措定。これが神話の本質(起源神話)
     歴史はどこから来たか?ーヘブライの預言者→ヘーゲル→近代歴史主義
    預言者以前ー全ての事物は永遠に反復される
    預言者以後ー歴史を神の意思、顕現と結びつけ重要視。歴史は神が恩恵と報復を達成する場であり、一定方向に流れる

    ・キャンベル
     社会、儀礼よりも個人に焦点。個人の能力で名声を獲得する英雄神話に注目。
     人間本来の豊かさを、意識と無意識を結ぶ英雄神話を通して取り戻す

    ・神話学の関心の変遷
     天上の自然現象→地上の自然現象→人間社会→人間個人(脳、魂、無意識)

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    投稿日:2022.02.04

  • なまハム

    なまハム

    松村一男『神話学入門』。講談社学術文庫から出てるほう。19世紀以降の6人の神話学者に注目して、19世紀神話学、20世紀神話学がどういうものであるかというものを述べた学説史。それぞれの学者の原著をを読む前に背景の把握のために読んでおくとよいとすごく思う。まさに神話の学についての入門書だった。

    ちなみに対象とされているのは、19世紀神話学の中からはマックス・ミュラーとフレイザー、そしてその中間のディメジル、最後に20世紀神話学からレヴィ=ストロースとミルチャ・エリアーデとジョーゼフ・キャンベル。それぞれに時代背景や個人の背景・興味があって研究がなされていることがよくわかる。

    衝撃だったのは歴史主義、過去の事実に価値を置く思想、とそれへの懐疑というのがいままでぼくにはなかった視点だった。過去の事実を論拠に現在やってることを正当化すること(印欧祖語の仮説からでてきたアーリア人学説とか)の危険性など。これはちょっと陥らないようにしたほうがよさそう。
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    投稿日:2020.09.26

  • Στέφανος

    Στέφανος

    第1章 神話学説史の試み
    第2章 十九世紀型神話学と比較言語学
    第3章 マックス・ミュラーと比較神話学の誕生
    第4章 フレイザーと『金枝篇』
    第5章 デュメジルと「新比較神話学」
    第6章 レヴィ=ストロースと「神話の構造」
    第7章 レヴィ=ストロースと「神話論理」
    第8章 エリアーデと「歴史の恐怖」
    第9章 キャンベルと「神話の力」

    著者:松村一男(1953-、市川市、神話学)
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    投稿日:2019.08.14

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