【感想】満鉄特急あじあ物語

林青梧 / 講談社文庫
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ブクログレビュー

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  • reinou

    reinou

    このレビューはネタバレを含みます

     1986年刊行。

     満州国成立後、当時東洋一の最速を誇った特急あじあ号が製造された。本書は小説形式であじあ号開発に携わった人々の苦闘を描くものだ。

     もっと技術面の創意を叙述したノンフィクションを期待していたので、若干はずれた作品を読んでしまった感がある。
     また、満州国成立に関して非侵略史観に立つ点も、外地出身で辛酸を舐めた自己憐憫や自己肯定感の殊更な充足を感じずにはいられない。
     が、それでもなお軍部、特に関東軍の横暴・横槍に批判の目を向けるのが本書の立ち位置だ。
     具体的には、
    ① 日満憲兵隊、日満特務機関、領事館警察、地元警察が対立して行動。逮捕要件を無視したような刑事警察・公安警察の運営。より具体的に表れるのは、中国人の金持ちを特段の理由なくしょっぴき、身柄解放の身代金をせしめ、それを各種機関が繰り返す。その保有資産が根こそぎ官憲に奪われる迄続くのだ。
    ② 満鉄の意思決定に関東軍の許諾を要する軍事輸送委員会の設置、現場の不評。軍人官僚のアメーバ的に権限拡大を志向する様。
    ③ 視野と識見の狭い佐官級への白眼視などが見受けられる。

     本書は、刊行当時には生存していた満鉄関係者への取材を軸に物語を紡いでいるとのことだ。しかも、その内容を見るに、軍事輸送委員会や満州事変以後の満鉄内での有り様(特に軍人が官僚的横槍を上から目線で入れてきた様)は、秘密の暴露的と見ることができる。すなわち、実態に依拠していると言わざるを得ないだろう。

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    投稿日:2017.01.25

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