【感想】源氏物語 上

角田光代 / 河出書房新社
(30件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
10
11
3
0
1

ブクログレビュー

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  • あいす

    あいす

    おもしろかったけど、長い!!!
    YouTube大学見ながら読むとわかりやすかった。そして、YouTube大学の方がおもしろかった、、、笑
    ファスト教養でいい自分にショック。笑

    かなりわかりやすくなっているようだけど、それでも私には難しかった。
    誰が誰に言ってるの?とか
    古文わからん!とか。
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    投稿日:2024.03.29

  • ゲスト

    ゲスト

    最初に読んだのは田辺聖子の新源氏物語
    で、読むまでのハードルはかなり高かった
    が長きなに渡って読み継がれている
    理由が良くわかった。
    田辺聖子版で源氏物語の面白さを知り
    角田光代版を読むと現代訳で系図
    目次事に描いてあるので人間関係も
    分かり易く、また違う書き手だと
    それぞれ趣きも変わりより深く源氏物語
    の世界を楽しめる。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.22

  • 国木ちさと

    国木ちさと

    このレビューはネタバレを含みます

    源氏物語がまるで現代小説のように読めます。
    かなり読み応えがありますが…これで、まだ上。中と下が残っています。
    ここまで長い物語を書いた紫式部と、それを訳した角田光代先生に畏敬の念を感じます。

    ブックレコメンド
    『光る君と謎解きを 源氏物語転生譚』日部星花の次に読む本は」
    https://book-recommend.com/2024/03/07/hikaru-2/

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    投稿日:2024.03.08

  • 雑食性の本の虫

    雑食性の本の虫

    今まで色々な現代語訳に挑んでは挫折してきましたが、角田訳でようやく読破出来そうです。こんなに長編小説としての筋を辿りやすい源氏物語ははじめてです。

    投稿日:2024.02.12

  • 近藤真弓

    近藤真弓

    素晴らしいですね。
    源氏を現代語訳するなんて!
    しかも、古典に詳しくないって…。
    逆に詳しくないからこそ、挑めるのかしら。
    内容は、何度も読んで理解していこうと思います。

    投稿日:2024.01.07

  • 淳水堂

    淳水堂

    大河ドラマを機会に角田光代訳を読んでみます。
    私の源氏物語知識は、高校の授業と、漫画『あさきゆめみし』、田辺聖子の『私本源氏物語』を読んだだけで、全体を読むのはこれが初めてです。
    私は軍略物が好きだったので、高校で源氏物語を習ったときには王朝文学ファンの友人相手に「なんだこの男は!(`Д´#)ノ」とボロボロに貶しておりました。あの節は全体を見ず、また友人が好きなものを貶し、大変恥ずかしいことをいたし失礼しました m(__)m  (←まだ付き合い続いてるので本人にも詫びた)

    今回完訳を読むために心がけておこうと思ったこと。
     ・現代とは、感覚も宗教感も違う!!登場人物にイライラしてもこのころの価値観だと思って客観的な気持ちでいよう。
     ・登場人物の年齢は現在感覚でプラス10歳くらいで考えよう。

    本書は、まえがきは瀬戸内寂聴と大和和紀が、源氏物語を訳する重さと覚悟を語っています。そんな文学を今読めることを味わいながら読んでいこうと思いました。
    本書は、翻訳だけでなく編集上もわかりやすくされています。各章題には一行程度の解説と、その章で出てくる人物の系図が載っています。
    『源氏物語』登場人物の本名は書かれていません。「光君」も光り輝く様からの渾名だし、男性は役職(中将)、女性たちは部屋の名前(桐壺・藤壺)や登場する巻の題名(夕顔、花散里)や役職(内侍、女御)で書かれます。『源氏物語』原文でも、個人名ではなくて「女御/君」などと書かれていますが、当時の人はそれでもちゃんと誰のことを言っているかわかったんですね。現代読者が認識している「夕顔」「葵」などの名前は、その女性が出てくる巻の名前を便宜的に当てはめたものです。
    和歌は原文と現代語訳、そして用語も現代読者が分かる言葉で説明されます。
    本文は「である調」で書かれますが、ところどころ著者の紫式部の声らしきものは「ですます調」で書かれますが、これは原文でも紫式部の独り言みたいなのが差し込まれているんでしょうか、ちょっと親近感。

    【巻ごとの出来事】
    『桐壺』
     桐壺帝と、桐壺更衣の間に主人公光君が誕生する。桐壺更衣の死後、藤壺女御が入内する。光君にとって藤壺女御は、母であり理想の女性。

    『帚木』
     光君と貴族のお坊っちゃま達が女遊びについてあれこれ言う。いわゆる「雨夜の品定め」。
     ここで語られる女性像は、
     「身分が高くて表面的に気取った女、学がある女って可愛げないよね」
     「でも身分が低い女じゃ本気にはならないよね」
     「中くらいの身分の女と言っても、上だったのが零落したのと、下だったのが身分上げた のがいるよね。たまに鄙びた家に零落した質の良い女がいるのがいいんだよね」
     「相手が従順すぎてもつまらないけど、あんまり連れない態度とられるのもウザいよね、こっちはかわいがってやろうって気持ちがあるのにさ」
     「嫉妬って女の欠点だよね。ちゃんと通ってんだから堂々としてればいいのに」
     「男は政治とかで大変じゃん。外では話せないことを聞いてほしいのに、まったくかまってくれない女のところじゃ気が静まらないよね」
     「すっかり気を許してかいがいしい女もちょっと気安すぎらんだよね。髪の毛を耳にかけて家のことをやっちゃってさ」
     「結局理想の女って、最初から育て上げるのがいいんじゃないの」
    などなど。
     いやーー、勝手なこと言いまくってますが、現代でも同じこと言っている人いますよね!?(子供がいる母親が髪を耳にかけただけではしたない扱いか…)

     …閑話休題。
     そしてここで出てきた女性たちは、この後光君の前に出てくる。
     「鄙びた家にいい女がいたらグッと来るよね」と話していたことへ、まず「いい女」の夕顔を出し、次に「身体付きも芸も顔もイマイチな女」な末摘花が出てくるパロディみたいだ。

    『空蝉』
     光君は、伊予介の妻(空蝉)の部屋に忍び込み関係する。
     空蝉の葛藤。

    『夕顔』
     垣根に夕顔が咲くような物儚げな家を見つけた光君は、その中にいる女性に興味を持ち、惟光(乳母の息子)を通して彼女のもとに通う。二人はお互いに素性を知らない。だが彼女は光君と廃屋での忍び合いの最中に突然死する。

    『若紫』
     光君は、藤壺女御の姪にあたる10歳くらいの姫君(紫の姫君)を目にして「大好きな藤壺女御にそっくり!一緒に暮らして理想の女性に育てたい!」と思う。
     藤壺女御は、光君と逢瀬を持って妊娠する。
     藤壺と会えなくなった光君は、紫の姫君を半ば強引に連れ去る。

    『末摘花』
     どこかにいい女はいないかなと探す光君は、零落した姫を見つけて半ば強引に関係を持つ。姫は極度の恥ずかしがり、歌も下手、琴の腕もうまくはない。せめて顔をみてみようとこっそり見たら赤くて長い鼻の持ち主だった。光君は「うーん困ったな、でも後ろ盾のない姫なんだから面倒は最後までみないとなあ」と思う。

    『紅葉賀』
     藤壺女御が若君を産み、位も皇后に上がる。若君は光君にそっくりだった。
     光君は、藤壺を恋しがりながら、紫の姫君を理想に育て、他の女性達のもとに通う。正妻の葵の上とは距離感がある。

    『花宴』
     光君が朧月夜を連れ込む。

    『葵』
     前巻から2年後。桐壷帝は譲位し、朱雀帝(母君は弘微殿女御)が即位している。東宮には藤壺の若君(父親は光君)が就いた。
     光君の通う女性の六条御息所と、正妻の葵の上の間でいざこざが起こる。
     葵の上が若君を出産する。光君も「いままで堅苦しい間柄だったが、こんな素晴らしい女性を妻にして自分は何が不満だったのだろう」と妻への愛情を感じるのだった。
     しかし葵の上は物の怪や生霊に苦しめられ亡くなってしまう。両親である左大臣と母宮の嘆きが語られる。
     光君も大人しく喪に服していたかと思ったら、ますます美しくなった紫の姫君を妻にする。…これを葵の上の死と同じ巻でやるのかーーー。

    『賢木』
     桐壺院が崩御する。院として実権を持っていた桐壺院が亡くなったことによる代替わりが書かれる。頭の中将と葵の上の父である左大臣家は外れ、弘微殿大后の実家である右大臣家が中心となる。
     藤壺は、光君への恋慕に苦しみ出家する。
     光君は朧月夜との密会現場と恋文を右大臣に抑えられてしまった!右大臣はこの手紙を使って光君を懲らしめてやろうと考える。

    『花散里』
     光君は、亡き桐壺院の女御の一人だった麗景殿女御を訪ねる。その妹姫の花散里のもとにも久しぶりに通う。

    『須磨』
     朝廷主流権力から外れた光君は都を離れて須磨に向かう。別れを嘆く紫の女君に自分の荘園や領地の権利を預ける。
     光君と交流することは危険な情勢になっていたが、頭の中将は光君を訪る。
     須磨の入道は、娘の明石の姫君が光君の妻になること望む。
     嵐の中、光君は夢で海の王からの参内催促の声を聞く。(死に呼ばれた感じ)

    『明石』
     光君は、都を恋しがり我が身を嘆きながらも明石の君の元に通う。都では朱雀帝や、その祖父の右大臣が病になる。朱雀帝は、罪のない光君を須磨に追いやっていることへの神罰かと、光君を都に呼び戻す。
     妊娠している明石の君との涙の別れ。
     都に帰ってきた光君と、朱雀帝、東宮(光君と藤壺の秘めた子)、女性たちは再会を喜び合う。

    『澪標』
     朱雀帝が譲位する。新たな帝には冷泉帝(光君と藤壺の秘めた子)が就く。光君は内大臣になる。不遇だった左大臣家(葵の上の実家)も返り咲く。
     須磨では明石の君が姫君を産んだ。
     光君は二条の屋敷を改築し、面倒を見なければいけない女性たち、紫の君、明石母娘、花散里、五節の君…たちを迎える準備をする。
     六条御息所が亡くなった。朱雀帝はその娘の斎宮姫を気に入っていて側に召したいと思っている。しかし六条御息所から後を頼まれた(ただしあんたは手を出すな!という一言付きで)光君は、藤壺の力を得て朱雀帝へ入内させようとする。

    『蓬生』
     光君に忘れられていた末摘花は困窮を極めていた。それでも自分からは頼りも出さずにただただ光君からの頼りを待つ。
     光君はたまたま常陸宮の屋敷前を通りかかり、すっかり忘れていた末摘花のことを思い出す。二条の光君の屋敷の近くに邸を造って住まわせた。…「新築中の二条のお屋敷の中」には招く気にはならなかったのね 。

    『関屋』
     光君から逃げ回った空蝉は、夫の任期が終わり都に帰ることになった。光君と再会するが、それ以上進むことはない。やがて夫が亡くなり、前妻の子供たちから冷たくされ、今更光君の世話にもなれずに出家する。

    『絵合』
     六条御息所の姫である前斎宮が冷泉帝に入内する。冷泉帝にはすでに頭中将の姫である弘微殿女御が入内している。頭中将と光君は、それぞれの姫にすばらしい絵を送り帝を呼ぼうとする。そこで藤壺中宮による「二人の后の絵比べ合戦」が行われることになった。

    『松風』
     二条院の東の院に花散里を呼び寄せる。
     明石の御方も再三呼ぶが「自分のような身分のものが側に行ってはご迷惑をかけてしまう。娘も光君の姫だといっても私のようなものから産まれたならいじめられるかもしれない」と遠慮の塊。せめて明石の姫君だけでも引き取ろうと話を進める。

    『薄雲』
     光君は、明石の姫君を二条の院に引き取る。姫君も紫の上を母のように慕う。
     この年は重要人物の死が相次いだ。桐壺院の弟の式部卿宮、葵の上の父である太政大臣、そして藤壺中宮。嘆く光君。
     そして冷泉帝は、自分が藤壺中宮と、光君との隠された子供だと知ってしまう。父を臣下にする罪悪感を持つ冷泉帝は、光君に帝位を譲ろうかとさえ考える。

    『朝顔』
     昔心を寄せた朝顔の姫君が屋敷に戻ったと知った光君は、関係再開しようと張り切る。

    『少女(おとめ)』
     光君は、息子の夕霧を大学寮で学ばせる。低い身分からのスタートに不満を持ちながらも真面目に勉学に励む夕霧くん。
     紫の上の異母妹も冷泉帝に入内した。
     その冷泉帝に正式な后を決める時期になった。頭中将の姫「弘徽殿女御」か、光君が親代わりの「斎宮(梅壺)女御」か、「王女御」か?の駆け引きが行われるなか、后に決まったのは「梅壺女御」だった。
     光君の若君(夕霧)と、頭中将の姫(雲居雁)は幼い恋を育んでいたが、引き離される。夕霧は、五節の舞姫(惟光の娘)を見初める。
     光君の新しい屋敷ができあがった。東南は光君と紫の上の春の町、西南は梅壺中宮の退下用に秋の町、東北は花散里の夏の町、西北は明石の御方の冬の町。それぞれの住まいの風情が書かれる。


    ●感想など
    <男女のこととか恋愛とか>
     帝の寵愛はそのまま日本の政治に繋がる。だから身分の低い桐壺更衣は「更衣なのに愛されるとはルール違反だし、帝が行事や遊戯のたびに側にいたくて呼び寄せるので、軽々しい女という扱いを受けた」となってしまう。朝廷の恋愛は個人的感情だけで動いてはいけないんですね。
     光君は左大臣家の葵の上を妻にし、左大臣家に部屋がある通い婚となる。婿入り制度は、妻の実家や妻の資産で夫の出世の手助けをするので資産のない男性にはとても助かるんだが、光君も個人資産を持ってるので、左大臣家にはあまり寄り付かず朝廷の部屋で楽しく過ごてるのかな。

    <光君ってどんな人>
     紫式部は「光君、という名前は華々しいけれど、色恋沙汰など軽々しい行いも多かったようです。困ったものです」という。現代読者からしたら「なんて不誠実な男だ、これが当時の風潮だから仕方ないのか」と思っていたんだが、当時の価値観からしても「ちょっと褒められない遊びもしてたよね」って思われていたのか。
     しかしそうは言いながらも「苦しい恋を選ぶ傾向があるが、その時々は本気」「通った女性はちゃんと面倒を見る」と擁護(?)しています。
     そして光君の良いところ「通った女性の面倒はちゃんと見る」は、男性にも通じていた!葵の上とは緊張感のある関係だったけれど、その実家の左大臣一家にも礼節を忘れなかった。

    <呼び名>
     『源氏物語』では、個人名は書かれず役職名や済んでいる場所名で書かれる。頭中将は昇進に伴い「〇〇大将」「〇〇中納言」と呼び名が変わる。朝廷女御でも「弘微殿女御」は、最初は桐壷帝の后、次に出てきたのは冷泉帝の女御(頭中将の姫)。現代読者は訳注やカッコ書きで区別できるけど、当時の人々はこれら全部を誰のことか理解できていたのか。

    <相続のこと>
     この時代、親からの相続権は兄弟姉妹平等にありますよね。婿入りした場合、妻の実家の財力で夫を支える。(男に財力がないとありがたいが、光君のように個人資産があると葵の上の実家のご機嫌取らなくても良かったってことか?)
     光君は紫の姫君を強引に妻にしたが、結婚のしきたりをちゃんと守ったので「正式な妻」として社会的地位を持った。光君が須磨に行くときには、自分の荘園や領地の証文をすべて預けたので、正式な相続人としても認められた。
     須磨に連れて行かなかったのは「罪人の汚名を着せられるかもしれない自分と同行させて苦労させるのではなく、都で生活できるように資産と地位を確立していった」んですね。光君やるじゃないか。
     そして須磨にいても都で困窮している女性たちへは支援の手配をするし、朧月夜の名誉も回復された。…光君の須磨行き、思ったより良い仕事してました(笑)
     しかし子供がいないといっぺんに困窮することもあり…このあたりの相続がよくわからない。花散里、末摘花、空蝉たちの寄る辺なさ。「家の主人が亡くなったので、召使いや女房たちも散り散りにいなくなっていった」という目に見える転落ぶりが書かれる。容赦ない世の中だよなあ。


    <女性の気持ちがわからん -_-;>
     出てくる女性たちが「恥ずかしがり屋」「自分なんか相応しくない」「嘆く」「思い悩む」といったマイナスの感情ばかり。これは書かれているままに読み取って良いのか、すると登場人物のほぼ全員が悩んでしかいないんだが。ちょっとは楽しい気持ちを持ったりしないのか。
     空蝉は「自分は光君には相応しくないけど、完全に切れちゃうのも寂しい」
     朧月夜は「急に誘い込まれてびっくりしたけど、光君だから安心だし(安心なの!?)、騒いだりして恋心の分からない強情な女と思われたら困るし」
     他の女性達も「困ったけどいつまでも断れないし」
     貴族社会の恋愛って断ったら無粋と思われるからやらなきゃいけないの?読んでいてどうも引っかかっているのは、そんな恋愛が楽しそうではないというか、葛藤や苦しみを感じるからだろう。以前読んだ中世騎士小説『ティラン・ロブ・ディラン』では朝廷女官が「ダンスと恋愛は私達の仕事!」と楽しんでいたが、『源氏物語』にはそんな割り切りがないんですよね。苦しみこそ美徳、恋愛には障害があったほうが風情がある、って価値観があり、これが西洋と日本の違いなのかな。
     なお光君は、紫の姫君に「いつも一緒にいると飽きますよ。たまに会うから愛情が増すんですよ」などと「夫が他の女性のところに通うのは当たり前☆」な感覚を育てようとしていた…。

    <宗教とか>
     所々の描写で、妖かしの存在や、葬儀のことなど、この世と違う世界の境目が現代より緩かったことがうかがえる。
     葵の上は出産時に物の怪に取り憑かれるんだが、誰々の霊が見えたとか、六条御息所の姿や声が顕れたりかなり具体的。これに関しては、恨まれる心当たりのある側のやましさから見えてしまうんじゃないかと思っているが。
     葵の上が亡くなると、遺体は三日座敷に安置されて生き返りの祈祷が行われる。
     逢引先で突然死した夕顔を秘密裏に山寺に運んで葬儀を行ってしまう。夕顔を知る人たちは「どこへ行ってしまったのだろう。好色な男に連れ去られたか」と心配するがどうにもならん。現代感覚では「身内にも死んだことを秘密?」と思ってしまうが、この時代は行方位不明や思い通りにならないことはたくさんあって、本人の宿業だと受け入れるしかなかったんだろう。
     そして「宿縁」という事を考えた。女が男を拒めないのは「仏様の結んだ御縁ならば人間の感情で断ち切ることはできない」という考えがあるのだろう。
     光君は須磨行きの影響か、事あるごとに「自分も出家してこの浮世の悩みから開放されたい…」と言うんだが、読者としては「あんたにできるんかーい」と突っ込んでおこう。

    <男女の事>
     ここまで「ヤらねばならん」なのは、性がおおらかとかじゃなくて、なにか別の価値観だったんだろうか。それだけヤりまくってるのにすぐ泣くし嘆いてばっかりだし。もっと楽しくやれないのか。
     真面目な夕霧くんも、初々しい初恋を育んでいた雲居雁(14歳)と引き離されたら、五節の舞姫(惟光の娘)に心を動かして近づこうとする。やっぱり光君の若君というべきか、追える相手はどんどん追わないとだめだったのか。
    ⇒あとがきで「男女の性的結び付きは宗教儀式であり、土地との繋がりでもある」と書かれていて納得しました。今後はそのつもりで読み取ってみます。
     
    <和歌>
     和歌を送りあったり、ちょっとしたやり取りを和歌で交わす。
     恋人に送るとしても和歌は人に見られることが前提だ。そして和歌では憂いとか悩みを歌ったほうがウケるので、あまり明るいことは書かないのかもしれない。
     そこで和歌でやたらに「困った」「涙にくれた」といっていても本当は楽しんでることもあるのかもしれない思ってみる。

    <ところどころコメディ?>
     源内侍が年寄りなのに男に色目を使っているところ、明石の入道、末摘花の記載はコメディっぽい。
     なかでも末摘花の屋敷が寂れて行く描写に心を痛めながら読み進めていったのに「庭には蓬や浅茅が生い茂ってるからって、牧童質が牛馬を放し飼いするようになったんですよ!けしからん話よね!」とか「ビンボーな屋敷にいる姫君だけどまるで木こりが赤い気のみを顔につけたみたいなのよね」いう書き方には笑ってしまった。ところどころ本人困ってるのにコメディっぽく書かれる人がいるんですよね。人並み外れて恥ずかしがりやで、赤い鼻を持ち、趣味もなく、なんか硬くて古臭くて大袈裟な調度品を大切にする変わり者の姫だけど、悪い性質は全く無いので生活が良くなって安心しました。

    <紫式部の周辺を考えた>
     源氏物語って帝や朝廷の人々が読んでいたんですよね。帝の息子が、父帝の更衣と関係持って妊娠させて…って書いて喜ばれたって、朝廷や天皇ってもっとおおらかだったんですね。
     『絵合』の巻では、二人の女御が芸術品を揃えて帝をこっち側に引き込もうするんだが、これってまさに「藤原道長が、娘の彰子の元に帝を呼び寄せるために紫式部に『源氏物語』を書かせた」ってことと同じじゃないか!そして芸術品や歌に詳しい女房たちによる朝廷女房なりの戦いも緊迫がありました。

    <描写>
     須磨の住居の侘しいながらも趣のある様子、光君に死の呼び声が聞こえる情景描写も良い。
     ・恋人に送るとしても和歌は人に見られることが前。そして和歌では憂いとか悩みを歌ったほうがウケるので、和歌でやたらに「困った」「涙にくれた」といっていても本当は楽しんでることもあるのかもしれない思ってみる。
    続きを読む

    投稿日:2023.12.17

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