東西ベルリン動物園大戦争

ヤン・モーンハウプト, 黒鳥英俊, 赤坂桃子 / CCCメディアハウス
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  • ぽんきち

    ぽんきち

    原題はDer Zoo Der Anderen。
    おそらく、2006年映画の「善き人のためのソナタ(Das Leben der Anderen:直訳すると「他者の人生」)」に重ねたタイトルだろう。Anderenがothers(他者)にあたる単語だが、映画の舞台は冷戦下の東ドイツであり、国家保安省(シュタージ)の局員が、反体制とされる芸術家を監視する物語である。
    ドイツ語でAnderenと行ったとき、ネイティブにはこうした東西対立の歴史が直ちに思い浮かぶのかどうかはよくわからないが、いずれにしても本作では西ベルリン側にあった「ベルリン動物園」と東ベルリン側にあった「ティアパルク」の対立と発展の歴史を描いている。動物園から見たベルリン現代史である。
    「大戦争」といえばその通りなのだが、動物たちを媒介して繰り広げられる丁々発止のやり取りは、時におかしく、時に呆然とさせられる。
    主な軸となるのは、東のハインリヒ・ダーテと西のハインツ=ゲオルク・クレース。
    年長のダーテは堂々たる園長で、必要な時には政治的な手腕も示すが、クレースも若いながら「出資者が履いている靴下も脱がす」ほどの抜け目のなさを見せる。
    彼らのもと、それぞれの動物園は競うように新たな動物を受け入れ、おもしろい展示を展開しようとしていく。それは東西ベルリンの対立に重ねることも可能なのだけれど、彼らは別段、体制を背負って立っていたわけではない。ただ動物園を守り、より理想の姿に近付けていくことしか考えていなかった。そういう意味では、2人とも、天真爛漫というかナイーブな「動物園人」であったと言えるのかもしれない。
    終戦のどん底から立ち上がり、復興を遂げていく激動の時代。ある種アクの強いワンマン的な園長が存在できた稀有な時代でもあったのだろう。

    彼らの目線の先には動物園と動物たちしかいなかったに等しいとはいえ、一方で、時代の波の中を泳ぎ抜かなければならなかったこともまた真実である。
    大戦の爆撃で、ベルリン動物園の多くの動物たちは命を落とす。クレースの前任者であったカタリーナ・ハインフロートは混乱の中、ロシア兵にレイプもされている。ダーテには東ドイツ時代、常にシュタージの監視が付いていた。ベルリン統合後、クレースはついにティアパルクの実権も握るが、ダーテほどの賞賛を得ることはなかった。

    邦訳版には、動物園学芸員の監修が付く。章末に「動物園の歩き方」と題するミニコラムが付き、作中の用語を解説し、奥行きを与えている。
    日本人には若干馴染みの薄い地域・時代だが、各章の巻頭に章で起こる主な事件と登場人物がまとめられており、理解の一助となっている。
    訳者あとがきと監修者解説まで読み、作品全体の背景が見えてくるような、丁寧に作られた1冊である。
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    投稿日:2018.12.22

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