【感想】太宰治

井伏鱒二 / 中公文庫
(9件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
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ブクログレビュー

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  • しの

    しの

    文学ファンじゃないが、唯一定期的に読んでいる太宰治。その師匠であり、晩年の友人で会った井伏鱒二による太宰の解説?的な一冊。

    文章の丁寧さと本人のやさしさと太宰へのリスペクトも相まってか、愛すら感じた。太宰の生き様だけ見るととてもまっとうには見えないが、井伏や中畑さん、北さん、ほか女性陣含め、人間性で惹かれるものがあったんだろうなとやっぱり思う。太宰作品も有名どころはだいぶ読んだと思うが、時系列的にどこでどんな時期に書いた作品かまで、この本で知れてもっと太宰について知りたくなった。自分のゆかりのある土地もちらほら出てきてなぜか誇らしい気持ち。太宰ゆかりの地ツアーしようかな。
    東京八景、ダスゲマイネ、ロマネスク、晩年、富岳百景どれ読んだだろうか。一回まとめたい。

    ツシマだと津軽弁でチシマになるから、訛っても発音が変わらないように「ダザイ」。初めて知った感動。

    太宰が亡くなったのが1948年、井伏が亡くなったのが1993年。教科書で出てくる文豪のイメージだけど、ついこの間なことに驚いた。フィクションじゃなくて生きていた人なんだと改めて感じた。


    ...あと、関係ないが井伏鱒二といえばで「さよならだけが人生だ」の訳は震えた。575のリズムもいい(日本人だから?)。ユーモアというか、粋な感性を持っている方だったんだろうなと思う。

    (勧酒)
    勧君金屈巵  君に勧む金屈巵きんくつし
    満酌不須辞  満酌辞するを須もちひず
    花発多風雨  花発はなひらきて風雨多し
    人生足別離  人生別離足る

    コノサカズキヲ受ケテクレ
    ドウゾナミナミツガシテオクレ
    ハナニアラシノタトエモアルゾ
    「サヨナラ」ダケガ人生ダ
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    投稿日:2023.09.12

  • おびのり

    おびのり

    井伏鱒二文学忌 1898.2.15ー1993.7.10
    井伏忌 鱒二忌 平成5年までご存命だったですね。今年は没後30年で、神奈川近代文学館や杉並文学館で記念展が開催されています。(広島のふくやま文学館でも)涼しくなったらお出かけします。

    井伏鱒二は、太宰治をとても可愛がって(お世話をして)いました。出会いは、太宰治からのアプローチ。14歳で井伏の作品に心酔して、東大入学で上京して、会ってくれなければ自殺するからという、手紙をだす。まだ良い時代だったから、井伏も会う機会を作ってあげる。そこから続いた太宰治の事を書いた物を一冊にまとめた逸品です。
    太宰治は青森の資産家の息子で、出会った時から浪費家、一時は薬物中毒と、何かと手を差し伸べ破綻した生活を助けていました。そして、将棋を指して、旅行に出かけ、親しかった様子が伺えます。
    特に最初の「太宰治の死」初出は昭和23年8月原題「太宰治のこと」ですから、情死と言われた自殺から間も無くの作品です。他の作家さんの作品でも書かれていましたが、太宰治の情死について周囲の人たちは納得していないようです。「おんなごころ」に、太宰治と入水した女性との生活が書かれていますが、この女性との関係性を良く思っていない事が読めます。もしかして、太宰治も困っていたかもしれないような。
    太宰治について想像していた通り、友人は少なかったけれど、何故か彼の世話をしてくれる人や長く仕送りをしてくれた地元の名士の兄が居た。少し生活を立て直せていればねえと思うけど、小説に特化した人間性だったんでしょうか。
    太宰治は、その時々の心情から小説を書いていたようなので、再度、年代順に読み直してみようかなと思いました。
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    投稿日:2023.07.10

  • 『珈琲味のお湯』くらいのアメリカンが好き

    『珈琲味のお湯』くらいのアメリカンが好き

    師として友として親しくつきあってきた井伏鱒二が見た太宰治の肖像。筆者の目を通した太宰治、筆者との思い出の中の太宰治。これらは、太宰治の作品を読んでいただけでは見えない印象だった。
    この印象が変わったところで、太宰治の作品を改めて読みたいと思った。続きを読む

    投稿日:2022.10.06

  • ほんのむし100

    ほんのむし100

    井伏鱒二と太宰治
    お互いの
    人間性や関係性、
    距離感、空気感が
    垣間見える
    太宰治が自殺してしまった
    という事実が悲しい
    三省堂名古屋本店の
    中公文庫在庫僅少フェアにて購入

    投稿日:2022.05.22

  • 蓮子

    蓮子

    師として友として二十年近くにわたり交友があった井伏鱒二。太宰治との思い出や彼の作品解説などを収録。また井伏の没後に節代夫人が語った「太宰さんのこと」を増補。師である井伏鱒二も太宰治に幾度となく煮え湯を飲まされ、振り回されているけれども、それでも最後まで彼を信じ、または案じて、その才を認めていたことがとても良く伝わってきます。「もうあんな天才は出ない」「ぼく一人でも御坂峠に太宰君の文学碑を立てたい」と口惜しがっていたこと、彼の葬儀の時に、自分の子どもが死んでも泣かなかった井伏が声を上げて泣いたというエピソードを読んで胸がつまりました。戦後、東京に戻った太宰は井伏をはじめ、友人らを極度に避けていたという。真相は定かではないけれど、本書を読む分では当時恋愛関係にあった山崎富栄の影響もかなりあったのだろうと推測される。あとがきにある「芥川龍之介の自殺を、独身のとき、自分は無礼なことだと思っていた。妻子を残して勝手に死ぬとは無責任極まると思っていた。しかし、自分が結婚して子供も出来てみると、却って安心して死ねる気がして来た。芥川の自殺を肯定出来るような気がして来た。」この時、もう自分の生の置きどころを彼岸に託していたのだろうか。未完の遺作「グッド・バイ」が明るくユーモラスな作風なだけに、その裏にある死の暗さを感じてしまう。続きを読む

    投稿日:2020.08.28

  • masa0612

    masa0612

    師であり友人である井伏鱒二による太宰治との想い出がつづられる。時に批判のような口調にも、行間に太宰への愛情が見える。
    だれしも、矛盾を抱えて生きている。注目されたいと思うが注目されるのが苦手、人に好かれたいが人が苦手、強い自己主張をするが実は気が弱い。そういう矛盾を人一倍背負った太宰は、井伏にとって太宰は、ほっとけない人だったのだろう。続きを読む

    投稿日:2020.07.23

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