【感想】サイバー空間を支配する者 21世紀の国家・組織・個人の戦略

持永大, 村野正泰, 土屋大洋 / 日本経済新聞出版
(2件のレビュー)

総合評価:

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  • mrslight

    mrslight

    本書は、サイバー空間を通じて国際政治における優位性を確立する国家間の争いに関する現状を包括的にまとめようと試みたものである。現在のサイバー空間の性質を①米国の自由競争型、②中国の管理強化型、③EUのようなプライバシーを中心とした管理強化と経済圏の自由競争型に類型化した上で、サイバー空間における国際秩序を整理するには既存の国際秩序の延長線上では不十分であるという主張が繰り返しなされる。具体的には、組織(企業等)・個人が国家に帰属し国家がそれらを主導する垂直統合の関係から同じレイヤーで互いに影響しあう立場となった点、サイバー空間は物理的な制約を受ける性質によって地政学的な考え方に拘束されないとは言え、既存の知性的な分析の適用には限界がある(デジタル化された情報は物理的な国境に束縛されないため)という点などが取り上げられている。
    サイバー空間におけるデータの重要性、サイバーセキュリティ・サイバー攻撃の趨勢、ARPANETを起源とするインターネットの歴史、(データの囲い込み、安全保障、サイバー犯罪等に関する)各国・地域による主導権争いの現状等、本書の前半部分はさながら白書のようであり、概要をつかんだ上で必要に応じて本書を参照する辞書的な使い方で良いと思われる(同様のことが繰り返し記載されるなど退屈な部分もあった)が、後半部分において登場する「国家、組織、個人」の関係・影響力変化といった視点やサイバー空間支配の要素である「技術的優位性、政策及び産業優位性、数的優位性(市場規模等)」といったフレームは、デジタル時代の国家の役割を再考するに当たって興味深いものであった。また、サイバー空間は物理的な機器と情報によって支えられており、これらは電力事情、地盤の安定性、海底ケーブルからの距離などの地理的な条件と密接に関連しているが故に、サイバー空間を構成する要素(通信インフラ、データセンター等)は人口の集中、経済活動、政治環境、インフラ環境といった様々な要因から地理的に集中するという点も勉強になった。
    我が国は何よりもまずサイバー空間の重要性を全体が認識し、十分な(人的・資金的・技術的)リソースを投入することが必要である(未だ国家間の争いのスタート地点にも立てていない)という印象を受けた。
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    投稿日:2019.01.11

  • hiroshirakawa

    hiroshirakawa

    三菱総研と慶応の研究者によるサイバー空間(インターネット)の覇権・国際秩序の展望。サイバー空間には国境がなくフラット化する世界の象徴であり、「国家・組織・個人」の3つの視点で眺めることが大切なのです。
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    投稿日:2018.10.02

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