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篠田丈 / 幻冬舎メディアコンサルティング (2件のレビュー)
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きのP
【感想】 プライベートバンクという巨象(虚像?)について書かれた本。 内容として、「Made In スイス」というブランドごり押しな作品だった(笑)確かにスゴイけども・・・ 「無限責任」「伝統」の名の…下に、他社のプライベートバンキングや証券会社をディスってる風に感じたのは自分だけかな? 作中、スイスだけではなく、米国・ヨーロッパ・中国・香港などの性質についても軽く触れている。 が、これってあくまで国民性という名のマクロな性質であって、全員が全員そうであると思うのは早計かなと・・・ 眉唾ではないが、「この国の人はこうだ!」と断定してはいけないよね。どこの国にも、脱ステレオタイプの人間は多種多様なのだから。 また、本場のプライベートバンクは資産を「増やす」のではなく、資産を「守る」「保つ」という性質が高いのかなーと読んでいて感じた。 相続税回避の面では非常に重要なファクターだが、資産運用⇒資産増という面ではあまりオススメではないのかな?と、読んでいて感じた。 そもそも、顧客も守るだけではなく資産増のニーズって結構大きいのではないのかな?と不思議に思った。 それでも尚、高収益を挙げていて、顧客にとって一種のブランド感があるんだなぁ。 ただ、従業員の人物像に触れる箇所を読んでいると、金融マンとしてトップクラスの人財ばかりなのは間違いないのだと納得。 やはり、超富裕層の担当になるような人間には、相応の品格が必要なのだろう。 少数精鋭で知識豊富なプロフェッショナルという人物像は、読んでいて強い憧れを感じる。 自身の人生にとって、おそらく一生関係がないであろう「プライベートバンク」という名のブランド。 「007」や「ハゲタカ」シリーズみたいなフィクション小説を読んでいる感覚で楽しめた1冊でした。 【内容まとめ】 0.プライベートバンクの目的 富裕層顧客との間に長期的な信頼関係を築き、ハウスバンクとして顧客資産の総合的な調査とリスク管理をする、運用コンサルティングを行うことにある。 資産を「減らさない」ことが原則。 伝統的なプライベートバンクは、顧客から預かった資産を大きく増やすことは目指していない。 1.米国の金融機関 典型的なアングロサクソン・カルチャー 中長期の資産保全よりは短期の運用で大きな利益を上げようという志向が非常に強く、トレーディングやレバレッジを使って積極的に投資する。 顧客となる資産家も、どちらかといえば自己責任でハイリスクハイリターンを許容する。 2.ヨーロッパ アングロサクソンの英国と、それ以外の大陸系で違いが見られる。 フランスの金融マンは少し日本に近いところがあり、人情や人間関係を重視していた。 大陸系でドイツ圏のドイツ・スイスは、人間も実直で生真面目な人が多く、日本人がビジネスを行うには安心感があり信頼できる国民性。 3.中国 特徴的なのはファミリー意識の強さ。 家族という単位のみならず、ひとたび身内と認識した相手には何かと世話を焼き、運用も頑張ってくれる。 逆にファミリーの敵になれば、徹底的に攻撃することも辞さない排他性も持っている・・・ ただ香港については中国と全く違い、英国の流れを汲んだアングロサクソン・カルチャーが金融業界に色濃く反映されています。 4.「プライベートバンク」と「プライベートバンキング」の違いは? プライベートバンクはプライベートバンキング業務を専業としている銀行で、経営形態がパートナーシップ制になっている。 パートナーの一人が無限責任を負うのが大きな特徴。 一方、プライベートバンキングとは、一般の商業銀行等が手がける富裕層向け金融サービスの一部門を指す。 5.プライベートバンクの歴史的な成り立ち スイスの伝統的プライベートバンクでは、「ジュネーブ系」と「チューリッヒ系」の二つ、バックボーンは微妙に異なる。 ・ジュネーブ系のルーツは宗教弾圧の時代にさかのぼる。 ⇒弾圧を逃れてフランスからきた貴族たちが、自分たちの資産保全のために銀行を作ったのがジュネーブ系プライベートバンクの始まり。 ・チューリッヒ系のルーツは、戦争で活躍した傭兵たち。 ⇒傭兵は命をお金に換えるのが仕事のため、その見返りとして多額のお金を一度にもらうことになる。 一家の大黒柱が不在の中で、資産を守る存在として生まれた銀行が、チューリッヒ系のプライベートバンクである。 6.プライベートバンク従業員の人物像 一般に営業ノルマといったものがない。借入れを進めたり、金融商品を買わせようとする必要がないから。 顧客担当者は、他の大手銀行のプライベートバンキング部門などで経験を積み、一定の年齢になってからプライベートバンクに移籍するケースが目立つ。 年齢は40代以上が多い。 語学は二か国語以上、3~4カ国語を操るのは当たり前。 国際的な広い視野を持ち、金融業界の最先端の動きにも通じている。 【引用】 本場の伝統的プライベートバンクは一体何を考え、どのようなサービスを提供しているのか? 歴史の中で培われた本物の発想と哲学を、またどのように利用すれば最大のメリットが得られるのか? p48 ・米国の金融機関 典型的なアングロサクソン・カルチャー 中長期の資産保全よりは短期の運用で大きな利益を上げようという志向が非常に強く、トレーディングやレバレッジを使って積極的に投資する。 顧客となる資産家も、どちらかといえば自己責任でハイリスクハイリターンを許容する。 p49 ・ヨーロッパ アングロサクソンの英国と、それ以外の大陸系で違いが見られる。 フランスの金融マンは少し日本に近いところがあり、人情や人間関係を重視していた。 大陸系でドイツ圏のドイツ・スイスは、人間も実直で生真面目な人が多く、日本人がビジネスを行うには安心感があり信頼できる国民性です。 p50 ・中国 特徴的なのはファミリー意識の強さ。 家族という単位のみならず、ひとたび身内と認識した相手には何かと世話を焼き、運用も頑張ってくれます。 逆にファミリーの敵になれば、徹底的に攻撃することも辞さない排他性も持っています。 ただ香港については中国と全く違い、英国の流れを汲んだアングロサクソン・カルチャーが金融業界に色濃く反映されている。 p58 ・「プライベートバンク」と「プライベートバンキング」の違いは? 本場ヨーロッパでは、この2つは全く別の概念です。 プライベートバンクはプライベートバンキング業務を専業としている銀行で、経営形態がパートナーシップ制になっている。 パートナーの一人が無限責任を負うのが大きな特徴。 一方、プライベートバンキングとは、一般の商業銀行等が手がける富裕層向け金融サービスの一部門を指す。 本場スイスでも、大手のクレディ・スイスやUBSは入っておらず、4行しかない! p61 ・プライベートバンクの歴史的な成り立ち スイスの伝統的プライベートバンクでは、「ジュネーブ系」と「チューリッヒ系」の二つでバックボーンは微妙に異なる。 ジュネーブ系のルーツは宗教弾圧の時代にさかのぼる。 弾圧を逃れてフランスからきた貴族たちが、自分たちの資産保全のために銀行を作ったのがプライベートバンクの始まりである。 チューリッヒ系のルーツは、戦争で活躍した傭兵たちにルーツがあります。 (現在も、キリスト教の聖地であるバチカン市国の警備兵はスイスの傭兵) 傭兵は命をお金に換えるのが仕事のため、その見返りとして多額のお金を一度にもらうことになる。 一家の大黒柱が不在の中で、資産を守る存在として生まれた銀行が、チューリッヒ系のプライベートバンクである。 p114 プライベートバンクの目的は、富裕層顧客との間に長期的な信頼関係を築き、ハウスバンクとして顧客資産の総合的な調査とリスク管理をする、運用コンサルティングを行うことにあります。 p130 ・プライベートバンク従業員の人物像 一般に営業ノルマといったものがない。 借入れを進めたり、金融商品を買わせようとする必要がないから。 顧客担当者は、他の大手銀行のプライベートバンキング部門などで経験を積み、一定の年齢になってからプライベートバンクに移籍するケースが目立つ。 年齢は40代以上が多い。 語学は二か国語以上、3?4カ国語を操るのは当たり前。 国際的な広い視野を持ち、金融業界の最先端の動きにも通じている。 p140 ・資産を「減らさない」ことが原則。 伝統的なプライベートバンクは、顧客から預かった資産を大きく増やすことは目指していない。 目指していることは、預かった資産を「減らさない」ということ。ほぼ全てのプライベートバンク経営者はこの点を強調する。 ・インフレによる資産価値激減の回避 ・戦争や天災によるダメージ p149 ・リスクとリターンを数値化した「シャープレシオ」 1のリスクに対して1のリターンが期待できるのであれば、「シャープレシオ=1」。 リスクに対してリターンが大きい(=シャープレシオの数値が高い)ものが「おいしい案件」なのである。 p187 ・利用コストについて アカウントメンテナンス・フィー →口座を持つために必要な費用、年間数万円程度 アセットマネジメント・フィー →資産運用を任せる場合に必要な費用で、預かり資産の凡そ1.5% カストディ・フィー →証券や債券などを預ける際の保管料、年0.2% アドバイザリー・フィー →必要に応じて個別相談したりアドバイスを受けるための費用で、年0.6%?1% トランザクション・フィー →顧客側から株式等の売買依頼をした場合の手数料 p205 ・もはやプライベートバンクは「富裕層のため」だけの銀行ではない。 多くの人々がプライベートバンクはお金を隠すためのモノだと思っているが、現代においてそのようなことはあり得ません。 プライベートバンクに共通しているのは、銀行と顧客が非常に親密で個人的な関係を持っているということに尽きます。 p215 どんなに時代が変わったとしても、伝統的プライベートバンクの価値は未来永劫、保たれていくと断言できる。 ・徹底的な顧客目線 →顧客の顕在的および潜在的要求を汲み取り、顧客資産を何百年も守り継ごうという歴史と伝統に裏打ちされたサービスは、機械には決してできない! ・すでに高収益なので、さらに収益追求しなくても生き残るビジネスモデル 少数精鋭の経験豊富なバンカーによって運用されており、無理に新規獲得しなくて良いので、長期的なビジネスを考えて活動できる。続きを読む
投稿日:2019.04.11
24yama
機関投資家として長年トレードを経験してきた方が著者であり、資産運用に対するスタンスは非常に合理的で納得のいくものだった。 スイスやリヒテンシュタインのプライベートバンクの歴史的な位置づけやビジネスに…対するスタンスがわかりやすくまとまっていた。 今は世界的に富裕層の資産把握が推進されているので、プライベートバンクに預けても秘密が守られるとは言い切れないみたい。 ただ、スイスは日本等に比べたら規制当局が厳しくないようだし、自分の要求によって世界中からベストな金融商品を見繕い、ベストな運用方法を提案してくれるサービスは日本の金融機関とはレベルが違いそうなので、利用する価値は十分にあるのだろう。 リスク許容度が高い資産を守りながらも増やしたい世代が1.5%ほどのフィーを払いながら利用するのが合理的か否かは難しいところではあるが、欧州の上流階級と交流できるきっかけになるのならいずれやってみるのもありだと思う。 ただ、資産を守るだけというのも退屈だし、もっと社会的に影響力のある使い方をした方が良いかもしれない。続きを読む
投稿日:2017.07.23
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