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魚住昭, 佐藤優 / 講談社文庫 (36件のレビュー)
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raga-movie
部落出身の為政者、野中広務の政治動向はイデオロギーよりも政局に注視する。ある時は弱者救済に力を入れ、ある時は政敵の凋落を画策するあまり弱者への視座をやり過ごす。そのバランスは果たして政治能力として一筋…縄ではいかない。政(まつりごと)は本来弱者へ寄り添うことが必然であるのに権力という魔物が彼を含めて局面を狂わせる。だが、部落差別をなくすのが自身の政治生命だと語る老獪な為政者は今後この国に現れるのか、このままでは現在腐敗する政局を打破できないのではないかと嘆息する。続きを読む
投稿日:2023.10.13
hokkaido
自民党の代議士として強大な権力を持ちながら、小泉政権の誕生によってその力を削がれ、2003年に政界を引退した野中広務の生涯に迫ったルポルタージュ。 野中広務という政治家の背景として最も重要なのは、や…はり被差別部落の出身であるという点である。本書では、そうした点も包み隠さずに書こうとしたことから、あるときに野中広務本人に呼ばれ、彼の涙と共に著者はこう告げられる。 「君が部落のことを書いたことで、私の家族がどれほど辛い思いをしているか知っているのか。そうなることが分かっていて、書いたのか」 それくらいに、野中広務の出自に関する本書での調査は微に入っており、野中広務という人間の全体像が浮かび上がってくるかのような作品に仕上がっている。 どうしても世間のイメージというのは、権力を用いた老獪な政治家、というあまりポジティブではないものだと思うが、一方で弱者に対する優しさに溢れた一面も持ち合わせており、この二面性が本書を貫く通奏低音にもなっている。続きを読む
投稿日:2023.09.09
sagami246
野中広務は、1925年10月に生まれ、2018年1月に、87歳で亡くなった自民党の政治家。被差別部落出身で、大学教育も受けていない。町議会議員から政治家のキャリアをスタートさせ、最後は国会議員・大臣ま…で昇りつめた、たたき上げの政治家である。2000年の自民党総裁選挙で、野中の推す橋本龍太郎が、小泉信一郎に大敗を喫し、政治的影響力をなくす。2003年に引退宣言をし、政治の表舞台から姿を消した。 本書は、そのような経歴を持つ野中広務の評伝である。 普通の評伝と異なるのは、筆者が評伝を書くことに対して野中の了解を得ていないことだ。逆に、本作品の月刊誌への連載が始まった頃、筆者は野中から抗議を受けたことを、本書中に記している。 野中広務が、自民党の中枢で仕事を始めた頃から、日本の政治は大きく動き始める。長年続いた自民党政治が終止符をうち、細川連立政権が成立する。羽田首相を挟んで、自民党が巻き返し、自民党と社会党という当時考えられなかった連立が成立し、社会党の村山委員長が首相に就任する。その後、橋本・小渕・森と繋がった後の総裁選挙で、上記の通り、橋本が小泉に敗れ、野中の影響力は急速に衰えるのである。 本書は、色々な読み方が出来る。 自民党、あるいは、広く、日本の政治の歴史、あるいは、日本の政治家の暗闘の歴史の物語として読むことが出来る。京都府の革新府政との闘い・部落解放同盟等の被差別部落関連の政治との関係・田中角栄との関係・公明党との関係、等、野中が関わった政治家や政治団体の物語も知ることが出来る。 また、評伝なので当然であるが、政治家・野中広務の物語としても抜群に面白い。野中が様々な闘いを勝ち抜きながら立身出世していく様子、最後には野中自身の政治家としての限界により挫折してしまう、その様子。 上記した通り、本書を書くことを筆者は対象である野中広務から了解を得ていない。従って、取材は書籍・資料、あるいは、関係者へのインタビューによってなされている。膨大な取材量を、このような物語とした筆者の力量にも驚く。続きを読む
投稿日:2023.08.22
Little black bean
被差別部落に関する人達への直当たり取材ができていることが素晴らしい。さぞ骨が折れた事と思う。野中氏本人はほとんど語っていないのは致し方ないのか。 解放運動、とざっくり認知していたが、その中にも解放運動…と融和、共産党がらみなど、スタンスの違いがあることが知れた。 その中を巧みに泳ぐ政治家としての野中氏の、ゆらぐように見える政治理念の精神的背景が想像できて、とても興味深かった。 自分の信念を体現する手段として政治活動があり、政治理念が一貫することがないのは当然とも言える。それを本人も自覚している所が、彼の懐の深さだと思う。 これらのゆらぎを踏まえても、地力の強さは今の政治家の何人分以上であることは間違いない。 続きを読む
投稿日:2022.05.03
dai-4
kotobaノンフ特集から。名前くらいしか知らなかった政治家の人物評伝。少なくともいま現在、”自民党”の響きにポジティブな印象は持ち得ないんだけど、それは歴史全てを否定したい感情ではなく、寧ろ第一政党…を走り続ける舞台裏とかは、大いに興味あり。55年体制を俯瞰する書も手元にはあるんだけど、特定の人物にスポットを当てつつその歴史を総括する、みたいな本書の方が、より取っ掛かりやすいのでは、と思ってまず本書に当たることに。そしてその思惑は、まあ正解だったかな、と。本書は、戦後政治史としても良くまとまっていて、適度にビッグネームの名前も挙がってくるし、入門書としても機能するものだった。当人物については、差別に対し断固立ち向かう精神などは注目すべきものがあるけど、反面、沖縄問題とか国歌の法案とかについての姿勢は大いに疑問で、正直、良い印象は抱けんかった。でもそれについては、他の視点も必要かも。当然、別の同系統本にもあたっていこうと思います。続きを読む
投稿日:2021.11.22
skmths
知らない世界を知りたくて読了。権力闘争の果てにある政治の世界を垣間見た。部落差別に対する考え方や、逆差別、非干渉など非常に難しい問題だと改めて思った。政治家としての野中広務はやはり妖怪。
投稿日:2020.08.30
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