【感想】夜更けの川に落葉は流れて

西村賢太 / 講談社
(7件のレビュー)

総合評価:

平均 4.7
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ブクログレビュー

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  • hito-koto

    hito-koto

    このレビューはネタバレを含みます

     中卒、免許なし、北町貫多の20歳過ぎから50歳位までの人生、アルバイトでの飲酒での失敗、彼女との別れ、食事の際の性癖を描いた連作3話です。寿司乞食、夜更けの川に落葉は流れ、青痰麺。西村賢太「夜更けの川に落葉は流れ」、2018.1発行。食事中、我慢できないことの性癖を鮮やかに?描ききった第3話、青痰麺に大拍手です!

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    投稿日:2022.07.20

  • getdownto

    getdownto

    私のブログ
    http://blog.livedoor.jp/funky_intelligence/archives/1994903.html
    から転載しています。

    西村賢太作品の時系列はこちらをご覧ください。
    http://blog.livedoor.jp/funky_intelligence/archives/1998219.html

    ほんっとに、西村賢太作品は面白い。何故今まで出逢わなかったんだろうっていうくらい。出逢わせてくれた後輩のFantasmaくんには感謝しきれない。そう言えば、そのFantasmaくんは先週の人事異動発表で隣県へ栄転することになったとの情報。西村賢太を紹介してくれたお礼も兼ねて盛大にお祝いしてやろう。

    さて、本書は短編3作品から構成されており、全て初見。どれも甲乙つけ難いほどの面白さ。

    「寿司乞食」
    念願の築地市場で働くことになる21歳の貫多。初日の勤務後に開かれた歓迎会で酒に溺れて翌日無断欠勤する、というダメダメな話。人間の本質そのものを描いており味わい深い。

    「夜更けの川に落葉は流れて」
    警備会社で短期アルバイトに勤しむ24歳の貫多の恋の話。地味な性格良さげな簗木野佳穂と付き合うも、またぞろ倦怠期を迎え、貫多の暴言と暴力により破局を迎える。面白かったのが、佳穂の変貌。貫多の暴言がエスカレートしていくと、それに伴って人が変わったように佳穂も信じられないほどの罵倒となる。こういうのが人間の本質なんだな。私も過去に体験済みなのだが。

    「青痰麺」
    お気に入りのラーメン屋さんで席を変わらざるを得なかったことに腹を立て、出されたラーメン
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    投稿日:2022.01.22

  • HIGASHI

    HIGASHI

    この人の小説を読むと非常に憂鬱な気分になる。読後の胸糞悪さは計り知れない。主人公貫多の病的な性格はまるでコント。あまりの不憫さに笑けてくるほど。まあいつものこと。
    でも何故か、不思議とこの作者の作品を読むのはこれで11作目。読後のあの胸糞悪さを求めて、作品にまた手を伸ばしている。そんな私はもはや西村賢太作品の中毒者なのかもしれない。続きを読む

    投稿日:2018.12.06

  • cozyconan

    cozyconan

    このレビューはネタバレを含みます

    いつもの北町貫多である。身勝手で怠け者、アルコールが入るまでは小心者なのに、酒の力を借りて、暴言を吐く。『夜更けの川に落葉は流れて』の貫多に至っては、一滴も飲んでいないのに、交際相手に罵詈雑言を浴びせ、暴力までふるってしまう。
    私小説は日本独特のものだ。古くは田山花袋、佐藤春夫、太宰治といった著名な作家に、主人公北町貫多が古本屋で出会って、傾倒していく田中英光、後に歿後弟子を名乗る藤澤清造もこのカテゴリーに入る。その私小説作家として芥川賞を受賞したのが作者西村賢太である。作家になっても、昔の因縁を忘れられず、夜な夜なラーメン屋にタクシーで乗りつけて狼藉をする『青痰麺』。いつも、つまらない凡庸な人間であると自覚している僕だが、もうこの歳で、破滅型の人生もきつい。己の人生の凡庸さと、ささやかではあるが納税者である自分に少し安堵しつつ、この本を読み終えた。

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    投稿日:2018.07.29

  • さぬきうどん人

    さぬきうどん人

    西村賢太お得意の私小説、北町貫多シリーズ。3作品が収録されている。

    気が弱いくせに相変わらずの愚行を繰り返し、着実に破滅に向かう寛多の生き様は、寛多ファンにとっては清々しい。心の底では平穏を望んでいるのに、どうやっても破滅に向かってしまう寛多の運命を傍観するのが、ファン心理だ。悪代官が水戸黄門の印籠にひれ伏すのを待つようなものだ。

    そんな主人公の破滅への道は3作品それぞれ。新たな職場の初日の歓迎会で飲みつぶれ、翌日から無断欠勤。恋人を殴りつけて、その父親に土下座謝り。店主の態度が気に入らず、出されたラーメンにゴミを打ち込んで店から逃走。これぞ、北町貫多で、何者でもなかった若き著者。

    と、過去の何者でもない著者の話ばかりだと思っていたら、小説家として大成した著者は今でも変わることなく、破滅に向かう。そんな衝撃的なラストが展開される。
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    投稿日:2018.06.16

  • 宮本知明

    宮本知明

    クリスマスイブの華やかな店内。見渡せばほとんどが若いカップル。その只中、四人掛けのテーブルに揃いの作業着姿の男が6人。女に一切縁がなくテーブルには一様にミックスグリルとライスの大盛り。皆一様に押し黙り、ただひらすらに箸やフォークをカチャカチャ動かしている。その座のそれぞれが虚しさと寂寥を漂わせている。短気さえ起こしていなければこんな場所にいなくてもよかった。加えて意想外な方向からワリカンと知らされる。自分で払うのなら吉野家で良かった。悔恨の波が次から次へと押し寄せる。
    普段はえらく大人しく小心者が、何かを契機にスイッチが入ってしまうと、人が変わり暴言が暴力に発展し破滅へとまっしぐらに落ちてゆく。水戸黄門ばりのワンパターンだが、物語は初から終わりまで引き締まっており一寸の隙もない。終始唸らされながら読まされた。二度読み三度読みしてよい傑作。凄すぎる。
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    投稿日:2018.03.21

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