【感想】不確かな医学 (TEDブックス)

シッダールタ・ムカジー, 野中大輔 / 朝日出版社
(6件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • bachbygg

    bachbygg

    がんの歴史に関する本でピュ-リッツァーを受賞した著者が、医学の不確定性について考察したエッセイ。医学には法則と呼べるものは無いが、著者は3つの経験則があると考えている。
    1.鋭い直感は、信頼性の低い検査にまさる。
    2.正常値からは規則がわかり、異常値からは法則がわかる。
    3.どんなに完全な医療検査にも、人間のバイアスはついてまわる。
    この3つのルールは医学に関するものだが、経験則という観点では、いつも理論通りにはいかない競馬にも応用できそうだ。それはともかく、内容はとても面白かった。
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    投稿日:2019.11.21

  • 桜ヶ丘_med/dent/health_

    桜ヶ丘_med/dent/health_

    http://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB25475665

    投稿日:2019.02.21

  • 澤田拓也

    澤田拓也

    『病の皇帝「がん」に挑む』(文庫版は『がんー4000年の歴史』)や『遺伝子 ‐ 親密なる人類史‐』の著者シッダールタ・ムカジーが医学の歴史について書いた本。TEDブックスという形式で、本としては短い。特に彼の他の二冊の本と比べると驚くほど短い。それはたぶんよいことだ。

    本書は他の科学と比べて不確かな部分がまだまだ多い医学について「医学の法則」を探って、紹介するもの。その法則とは、
    1. 鋭い直感は信頼性の低い検査にまさる
    2. 正常値からは規則がわかり、異常値からは法則がわかる
    3. どんなに完全な医療検査にも人間のバイアスはついてまわる

    まとめると「事前知識、特異な症例、バイアス。この3つの医学の法則がどれも人間の知識の限界や制約に関わっていることは示唆的」だということ。お医者さんであれば、実感を持ってその通りというのかな。医学もますます統計学が重要な分野になっているということだろうか。Evidence Based Medicineというものと現場の医療との関係にまつわるお話でもあるかもしれない。
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    投稿日:2019.01.01

  • pbookbird

    pbookbird

    これはすごい。ベイズってなんでしたっけ?という状態で読みはじめて、日常はもちろん、医療において特に、そういう見方が大事になることを改めて理解した。たぶん。。


    類似の多数の事例を調べて見つけたひとつの傾向(法則)があるとして(ex. 疾患Aの患者でのみマーカーaが一定値以上になる)、それが個々の事例(ex. 今目の前にいるこの人の状態)を正しく当てるケースは、推定項目によっては全ケースの多くを占めるが、推定項目によっては逆に、当てないケースが多数どころか大半を占めることもある。
    現実に目の前にある対象について推定と判断を行うには、類似の多数に関する調査結果に基づく1軸の類推だけでなく、目の前の対象自体(世界にも歴史上にも1人/1家族しかいない)の情報を幅広く集めることも重要になる。その対象が"典型的な"ケースではなく外れ値である場合、そのことは、幅広い情報を得る過程でのみ見えてくる。外れ値は既に、検査に付随する一定の不確実性としてよく知られているものでもあり、正常値からの逸脱自体は、検査対象に、典型的な健康上の異常があるのか、例外的な数値のみの異常(偽陽性)しかないかを見分ける根拠を与えない。
    エビデンスが役立つ場面も多いが、総合判断や勘はEBMじゃないからダメと言っても、EBMは外れ値の個人に対しては意味がない(または結果として害悪にもなりえる)。不完全なエビデンスだけが手元にあるとき、それを使える場面と使えない場面を見分ける仕事は当面重要であり、AIが貢献する余地もありそう。
    ともかく、医学の相手はブラックボックスばかりなのだから、よく見えた部分だけでなく、よく見えないが参考にできる情報を集めることは、全くバカにできない重要性を持つという話。

    鋭い直感は信頼性の低い検査に勝る
    正常値は規則を、異常値は法則を教える

    これに加え、本の最後の警句が重かった。
    きちんと覚えてないけど以下のような感じ。

    医療とは、どういう仕組みで生じているか(キモの部分さえ)よくわかっていない種々の症状に対し、効き方の一例は示されていたとしても全体としてはいつどう効いていつどう効かないのかよくわからない薬や処置を、正常に命を維持する仕組みが最もわからない人間(個体)という対象に与え、対象の回復を狙う営みである。

    例えたら、
    触ったこともない機械が壊れて、"箱の中身は何でしょねー?"のハコの中に入ってる。手を入れていろいろ触ると、壊れてそうな箇所が推定される。そこを、使い慣れてない不十分な工具でいじって、修理してみる。
    みたいな感じ。
    フタが取れただけならはめれるけど、マザーボードが傷んでたら、、現時点ではムリ。
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    投稿日:2018.03.10

  • ぽんきち

    ぽんきち

    著者はがんの専門医であり、研究者である。意欲的に著述も行っており、近年では『病の皇帝「がん」に挑む ― 人類4000年の苦闘』(早川書房)(文庫版は『がん‐4000年の歴史』(ハヤカワ文庫NF))(原題:The Emperor of All Maladies A Biography of Cancer)は話題を呼び、ピュリツァー賞を受賞した。

    本書は、各界の著名人がプレゼンテーションを行うことで知られるTEDでのトークが出発点になっている。但し、このTED Booksというシリーズは、トーク自体を元にしているというよりも、そこから派生してさらに膨らませた内容となっているようである。

    本書の原題は"The Laws of Medicine"。
    ムカジーは医師として診察に当たる際、非典型的な事例、一般的な傾向に当てはまらない事象に多く遭遇してきた。医学は膨大な知識を積み重ねて発展してきた。教科書的な知識が重要なのはもちろんだ。だが、「通例」から外れた患者がやってくることは珍しくない。すべてのデータが揃うわけでもなければ、患者自身が何らかの理由で隠している情報もある。情報が不完全、不十分、不確かな中で、できる限り完璧に近い結論を出すにはどこに気を付ければよいのか。本書はそうした思索のまとめである。
    これは医学に限らず、人がさまざまな場面で、非典型例に接した場合にも応用しうるものだと著者は言う。これらは、不確かな世界を生きる上で、心に留めておくと役立つであろう「法則」である。

    本書に挙げられている「法則」は3つ:
    ・鋭い直観は信頼性の低い検査にまさる
    ・正常値からは規則がわかり、異常値からは法則がわかる
    ・どんなに完全な医療検査にも人間のバイアスはついてまわる


    いずれも具体例を挙げて説明されているので、興味のある向きには参考になるだろう。
    130ページ程度の薄い本で手軽に読めるのも美点である。
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    投稿日:2018.02.11

  • AkikoSuginohara

    AkikoSuginohara

    データと直感どちらを信じる?異常値をどう見る?組織がバイアスにまみれたら?いまのやり方がバイアスであったとしたら、それをどう検証する?そもそも、いまを疑える?
    データ社会が加速していく中で、はっとさせられる。自分自身も、永遠の課題。
    #不確かな医学 #バイアス #tedbooks
    続きを読む

    投稿日:2018.01.26

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