【感想】対デジタル・ディスラプター戦略 既存企業の戦い方

マイケル・ウェイド, ジェフ・ルークス, ジェイムズ・マコーレー, アンディ・ノロニャ, 根来龍之, 武藤陽生, デジタルビジネス・イノベーションセンター / 日本経済新聞出版
(14件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • Mkengar

    Mkengar

    タイトルにひかれて深く考えずに購入しました。まず翻訳は非常に質が高く、全体的にとても読みやすかったです。また書かれていることについても、大きな違和感を持つような箇所はありませんでした。ただ本書からは一貫して「底の浅さ」を感じました。書かれていることが浅いといいますかとにかく薄い。巻末に早稲田大学の先生による12ページの解説がありましたが、そのくらいのページ数で十分伝わります(お時間ない方はこれだけ読めば十分)。なにか「カタカナ言葉」で無理矢理バリューアップを図ろうとしているかのようにも見え、正直ほとんど感銘を受けませんでした。面白い本ですと2ページに1回くらいの頻度で赤線を引くのですが、本書は全部で3箇所しか赤線を引きませんでした。

    本書の最後の方に著者が書いているように、この本自体も「アジャイル」に作ったと言うことなので、内容が浅くなるのは致し方ないとは思います。またこの本は今後も?アップデートされるということですので、読者の意見を参考に内容を深めて欲しいと思うのですが、特に気になった点はデジタル技術を使った意思決定のパートです。本書によれば、デジタル・アジリティを身につけるためには、「情報に基づく意思決定力」が必要とのこと。そしていくつかのデジタルサービスを事例に、それらがどう人間の意思決定を改善できるかが淡々と記述されていますが、正直言って人間に対する洞察が浅すぎます。IMDにも意思決定の専門家の先生がいらっしゃるかと思いますが、そのような専門家の意見を聴きながら、人間がいかに単独もしくはグループで意思決定をあやまるか、あるいは様々な心理的なバイアスに影響を受けるかを理解した上で、デジタル技術がそれをどう改善できるか深掘りしてほしいと思いました。本書のなかでも人種や性別の偏見を受けない意志決定、という記述はありましたが、これは初心者でも言えることであって、「集団思考」「追認バイアス」「新近性バイアス」「アラーム疲れ」など技術の助けを借りたとしても人間が意思決定を間違える可能性は常にあります。意思決定×デジタル技術、というのはテーマとして非常に興味深いので、是非今後深掘りして欲しいと思いました。
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    投稿日:2023.04.30

  • Rob

    Rob

    このレビューはネタバレを含みます

    VUCA時代の重要なキーワードである「Disrupt」と「Digital Transformation」を融合した、まさに”Disrupt, or to be disrupted, that's the question.”という問いへの回答の一助になる一冊。
    デジタルトランスフォーメーションの本質は、単なるコスト削減ではなく、顧客への提供価値を高めることを目的としている(その上でコストも下がる)。3つのバリューはその方向性を検討する上で重要。
    そのために、データドリブンな組織の構築(ビジネスアジリティ)は必須。

    カタカナの造語が理解にしにくく、訳が頭に入ってこないの等の欠点はあるものの、デジタルを理解した経営戦略を体系的に学べる。


    以下、本書からの学び

    【「破壊者」ではなく「破壊の力学」に注目する】
    重要なのは「ディスラプター」ではなく、「ディスラプション」。

    【デジタル・ディスラプションの破壊力】
    デジタル・ディスラプションと従来の競争力学とのちがいは、「変化の速度」と「利害の大きさ」。
    業界ごとのデジタル・ディスラプション(p.338、表A4)
    製薬業界ではデジタル・ディスラプションの可能性は低いが、影響を免れるというわけではない(パーソナライズ、デジタル・マーケットプレイス等)。
    既存企業の強み(資金調達力、ブランド力、顧客基盤)は「規模」頼み。デジタルによって規模は容易に突破可能。ディスラプターは規模の不経済から利益を得ている(小規模の方が良い)。
    ディスラプターはバリューチェーンの構築なしにバリューを創出。重要なのは、「バリュー」そのもの。
    「自らをディスラプト」は、会社が顧客に価値を提供してきた方法がどれだけ強固かを疑うところからはじめる。

    【デジタルが可能にしたビジネスモデル】
    デジタル技術が新ビジネスモデルを可能に。
    デジタルがもたらす3つの「カスタマーバリュー」
    ①コストバリュー(p.52、表1):競争におよぼす効果が最も強い。製品・サービスの非物質化。解析を駆使した情報優位、また情報優位による業務最適化。
    中間業者として商取引に介入。
    ②エクスペリエンスバリュー(p.58、表2):製品・サービスをアンバンドルし、安価に提供。
    ③プラットフォームバリュー(p.66、表3):ネットワーク効果(メトカーフの法則)。
    組合せ型ディスラプション:ビジネスモデルが組み合わさり、3つのバリューの破壊的な組合せが顧客にもたらされる。

    【バリューバンパイアが市場の利益を飲み干す】
    自らの競争優位により市場の売上・利益を縮小させるディスラプター。既存企業のマージンを枯渇、時代遅れの存在にさせる。市場の急激な変化を促進。
    大きなイノベーションを経験していない市場では、多くの顧客が既存サービスに不満。
    デジタル化可能なあらゆるものがデジタル化される。製品そのものではなく、「チャネルや消費行動のあるステップ」がデジタル化の可能性。
    事例:ナップスター(p.91、表4)
    顧客はデジタル・ディスラプションには大きな価値があると理解。
    デジタル・ディスラプションによって、新たな市場機会生じる。一時的な空白地帯。『ホワイトスペース戦略』参考。
    既存企業が3つのバリューを創出し、攻勢にまわれるチャンス。
    『ブルーオーシャン戦略』の「市場の境界線」「模倣を防ぐ壁」は無意味に。
    事例:アップル(p.111、表5)

    【ディスラプターとどう戦うか―4つの対応戦略】
    防衛的戦略:収穫戦略、撤退戦略
    攻撃的戦略:破壊戦略、拠点戦略
    ①収穫戦略:ディスラプティブな脅威を遮断。顧客、提携業者、規制機関、世論形成者、資本提供者との関係を利用。法的措置、マーケティング活動、料金引き下げ等。低迷期間中に引き出せるだけのマージンを引き出す。デジタルで効率性を向上。収穫戦略が唯一の対策ではない。(p.124)
    ②撤退戦略:今の市場から離脱しニッチな市場に逃げる。事業維持コスト>利益 の場合。
    ③破壊戦略:デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを駆使して3つのバリューの創出に専念。
    提供業者としての自らの役割から離れ、顧客の気持ちになって考える。
    コストバリューとエクスペリエンスバリューは一般的には相容れない選択肢だが、デジタル・ディスラプターは違う。
    ④拠点戦略:ディスラプションにおける競争上の利益を維持。
    ディスラプションをもたらした企業が最終的な勝者になるとは限らない。
    「新設」「買収」「提携」のいずれを採るべきか?
    戦略ごとのカスタマーバリューの形態(p.145、図13)
    技術コストは指数関数的に減少していく(ムーアの法則)が、既存企業は高い技術コストを負わされている。コスト曲線の自らの立ち位置を「リセット」することが課題。

    【アジリティを高める3つの組織能力】
    ディスラプターのスピード、柔軟性、有効性に対応できる能力(p.304、図18)
    「察知力」「情報に基づく意思決定力」「迅速な実行力」
    3つの能力には連続性がある。
    時には、ディスラプターのデジタル技術が必要な能力獲得を助けてくれる。

    【これまで手に入らなかった情報を集める―ハイパーアウェアネス】
    察知力:関連するデータ・洞察を収集し、自社が置かれた環境の変化を察知し、監視する能力。
    どんな洞察を得たいか?何を監視するか?そのためにどんなITインフラ・人的資源が必要か?

    【解析力を高めてバリューを見抜く―情報にもとづく意思決定力】
    情報に基づく意思決定力:データを解析して知見を吸収し、適切な人材を引き込みつつ、一貫して正確な意思決定をするための能力。
    良い意思決定ができるかは、良いデータ解析ができるか、社内外の専門家たちが必要なデータにアクセスし、適切な段階で意思決定プロセスに関与できるか。

    【リソースとプロセスを動的にする―迅速な実行力】
    迅速な実行力:うまくいっていない、時代遅れのアプローチを捨てて迅速かつ効果的に実行する能力。

    【いかにして競争力を高めるか】

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    投稿日:2020.11.02

  • f601

    f601

    詳細は紙に記載。

    デジタルがもたらす3つの[カスタマーバリュー」
    ?コストバリュー
    ?エクスペリエンスバリュー
    ?プラットフォームバリュー

    4つの対応戦略
    1.収穫戦略
    2.撤退戦略
    3.破壊戦略
    4.拠点戦略

    デジタルビジネスアジリティ
    1.ハイパーアウェアネス
    2.情報に基づく石決定力
    3.迅速な実行力
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    投稿日:2020.09.21

  • athtomoki

    athtomoki

    既存企業が、いかにスタートアップに勝つかという視点は、あまり見ないテーマ。

    デジタルの破壊を、デジタルボルテックス(渦)と表現。

    デジタルは、
     コストバリュー、エクスペリエンスバリュー、プラットフォームバリューの3つを可能としている。

    スタートアップがバリューバンパイアとなり襲いかかってくる。

    既存企業は、以下の戦略がありえる。
    収穫戦略、撤退戦略、破壊戦略、拠点戦略

    デジタルのアジリティーは、以下の3つ。
     ハイパーアウェアネス、情報に基づく意思決定、迅速な実行力
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    投稿日:2020.07.05

  • mikuriya

    mikuriya

    うだうだ書いてあるが最後の訳者あとがきに簡潔にまとめてある。

    既存企業がデジタル・ディスラプターに対してどのように立ち向かうかは、4つの対応戦略しかない。これを見る限りでは、ディスラプションに逆らうことはできず、立ち向かうか・喰われるかの2つしかないと分かる。

    1.収穫戦略
    既存事業の顧客体験や価格を改善して既存事業を守る戦略
    2.撤退戦略
    中核事業分野を諦め、利益が出るニッチ領域に集中する戦略
    3.破壊戦略
    既存の中核事業に対して自らディスラプションを起こす戦略
    4.拠点戦略
    ディスラプションと対峙するポジションを市場内に確保する戦略

    既存企業のバリューチェーンは、物理世界に拘束されていて、企業と企業のつながりで成り立ってきた企業の場合、変えるのが難しい。
    自らディスラプションする組織を立ち上げるのがよい?
    自分なりの答えを探したい。
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    投稿日:2020.02.21

  • sota

    sota

    ー デジタル・ディスラプターが狙っているのは「バリューチェーン」ではなく「バリュー」そのものだ。そのためB2B企業は価値がどこで生み出されているのかを理解しておかなければならない。残念ながら私たちが調査してきたB2B企業の多くは、高いハイパーアウェアネスを持っていなかった。

    これはおそらく、生み出された価値が最終顧客(すなわち消費者)によってどう消費されるかという観点から数歩離れたところにいるからだろう。 ー

    体系的で分析的で現実的で面白い。

    ディスラプターが重要なのではなく、ディスラプトという事象そのものの方が重要。ディスラプターの成功や失敗が重要なのではなく、ディスラプトそのものの当社への影響を考えることの方が重要。
    本質を見誤らない議論が重要なんだなぁ〜。
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    投稿日:2019.07.07

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