【感想】不完全性定理 ──数学的体系のあゆみ

野崎昭弘 / ちくま学芸文庫
(9件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • ichiro.mariners

    ichiro.mariners

    無矛盾とは、命題Mと、命題!M(!MはとMの逆命題)が同時に真とならないこと。完全とは、すべての命題が証明(正しいか否かは別として)できること。不完全性定理とは、「無矛盾な公理系は、不完全である」ということ。この定理は、理性の限界を示すような危険な事実である。私は大学で数学を専攻したので、当然この定理は知っていたが、この定理が発見された経緯等の歴史的事実は全く知らなかった。この本を読んで、発見経緯や、発見者であるゲーデルまでの数学者の系が分かりほんとに面白かった。ところで、この辺りの仕事ですばらしい貢献した数学者は、カントールと、ゲーデルであるといってよいと思うが、彼らは晩年精神を病んでしまった。純粋な論理追求は精神を破壊することなのであると思う。ですので、この本を読んで数学に目覚めた数学者の卵へ、「間違っても、基礎数学論には足を踏み入れないこと!」。続きを読む

    投稿日:2018.10.23

  • masudahidehiko

    masudahidehiko

    『数理論理学の基礎・基本』とは対照的な本。この本では不完全性定理を題材にして、ギリシャ数学の証明から集合論、論理学の基礎をとてもていねいに易しくたどってくれる。本の大半はそうした基礎的なことの解説で、最後にそこまで理解した人だったらきちんとわかる形で簡潔に不完全性定理とはどういうものかが書かれている。
    その”本の大半”でなされる基礎的な解説が出色。現在の IT の基礎となっている数学的な知識・理論を理解するにはかかせない、集合・論理学の知識がとてもわかりやすくまとめられている。副題の「数学的体系のあゆみ」の方が本の中身を正しく表しているように思うが、まぁマーケティング的な考えでキャッチ―な「不完全性定理」がメインのタイトルになっているんだろうなぁ。
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    投稿日:2016.08.22

  • cheapeer

    cheapeer

    歴史やら人文系の本への偏重を抑制すべく、数学の本か数学でなくとも理系色の強い本を読みたいと思い立って購入。予備知識なし。

    副題に“数学的体系のあゆみ”とあるように、数学を包括的に網羅的に取り扱う本だった(本当に網羅されているか否かを判定するには私の数学の知見は不足している)。タイトルの不確定性定理は後半の後半でようやくその姿を現す。今までの数学を超えたもの、即ち超数学という立ち位置なのだね。数学にとっての自意識。科学に対しての科学哲学のような位置づけなのだろうか。「数学ってほんとうに正しいの」、「数字を使って考量できることばかりじゃないよね」……そういった私たちの小さな声を代弁してくれるような感覚もあったな。
    昨今の科学原理主義とそれに付随する社会的概況。そこに警鐘を鳴らす。原発の安全神話。敷衍すると文明批判的含意すら醸し出される。確かに科学文明は私たちに無限の利便と暮らしの安寧をもたらしてくれた。ただ、それを過信して、数学や科学を妄信すると大いなる崩壊・取り返しのつかない破綻が人間社会に起こりうることを示唆する(このあたりは私が勝手に抱いたことね)。
    閑話休題。細部は分からなかったけれど、数学も数学でセルフチェック機能のようなものを持っているということだけは理解できた。
    また、数式というのは詞(詩)に少し似ている。私たちが見聞きする数多の事象を抽出的に表現しているという点で。

    http://cheapeer.wordpress.com/2013/08/01/130801/
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    投稿日:2013.08.01

  • morithin

    morithin

    このレビューはネタバレを含みます

    実は読むのは2回目です。竹内薫さんの本を読んで、また少し理解が進んだと思って、我が家の不完全性定理関係の本を眺め直したところ、次に読むべきはこれかと思い手に取りました。

    しかし、やっぱりよくわからない。けども、また少し分かった部分もあったので、死ぬまでに理解できればいいなあくらいの気楽さで、また気が向いた時に類書を読んでみたいと思います。

    さて、不完全性定理とは、数学に関する定理で、著者によれば「自然数論を含む述語論理の体系Zは、もし無矛盾ならば、形式的に不完全である」です。

    数学は最も論理的な学問ですから、これが「不完全」とは何事か、というのが僕の不完全性定理への興味の源です。そして、解説本を読んでみたところ、これがさっぱりわからない。これが僕の不完全性定理への執着の源です。わからないというのは、少々気に入らないというわけで意地になっているというわけです。

    読み物としても楽しいし(不完全性定理に至るまでの話は結構ドラマティックなのです)、内容的にも一般向けには調度良い深さくらいまで掘っているのが本書だと思います。竹内薫さんの近著の次くらいに読むべきものかと思います。僕のライブラリでは、この次が数学ガールかなあ。

    さて、不完全性定理の解説本では、それが難しいとされているため、著者なりの難しいポイントの解説に力が注がれることが多いと思います。

    本書では、ゲーデル文が”¬Probable(sub(x,17,g(x))”なのはいいとして(17は変数のゲーデル数、g(x)は自然数xを表す記号列のゲーデル数)、では単に”¬Provable(x)”のゲーデル数をxに代入しただけではなぜだめなのか、というところが詳しく書かれています。理由は、代入によって論理式が変わってしまうから、ということですが、むー自分が理解できていないことを書くのは何とも気持ちの悪いことです。

    ま、死ぬまでに理解できたらいいな位のトーンで今後も勉強です。

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    投稿日:2013.05.19

  • grappa

    grappa

    このレビューはネタバレを含みます

    う~ん。
    挫折...。
    第四章前半までは理解できたのだけれど。
    他の本に挑戦することにしよう。

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    投稿日:2012.11.30

  • asaitatsuya

    asaitatsuya

    数学の形式化がどのように行われてきたか、ギリシャ時代から近代までの歴史を振り返り、最後に不完全性定理の意味と意義を説明している。直観主義(無限を扱う場合は排中律を認めない、という立場)をめぐるクロネッカー、ブローエルとヒルベルトの論争は、人間味に溢れていて面白い。数学の形式化の歴史は、数学から「意味」を極限まで取り除いていく歴史に他ならないのだが、ほとんどの数学者は「意味」や「直観」に基づいて仕事をしている、という事実も興味深い。

    私は、昔から数学的対象から「意味」や「直観」を意識的に排除しようとしてきたし、公理から機械的(演繹的)に理解するように努めてきたので、今さら「実際はそんなことしないよ」と言われても困ってしまうのである。しかし、「形式的に理解する」ことと「本当に分かる」ことの間に大きな乖離があることには気づいていたので、本書でそのような乖離が起きる構造をズバリ解説してくれたのはありがたい。
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    投稿日:2011.05.29

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