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上野誠 / ちくま新書 (13件のレビュー)
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みきちゃん
こんな話を高校時代に聞いてれば、古典が好きになったかも。学習要領にもないし、受験にも関係ないから仕方ないか。大学でやっと教えてくれる(先生と一緒に議論しながら考えていく)内容だね。 そういえば数学で…も、当時は何の役に立つかわからなかった微分積分も、いまでは仕事で大いに役立ってます。解き方も、考え方も。 自己啓蒙度:★★★★★続きを読む
投稿日:2019.09.09
大一大万大吉
令和元年にあたって万葉集関連の本を読もうと選択。かねてより上野誠氏の万葉集解説の身近さはしっていたので面白く読めた。文字で記録することの重要さ。漢文、万葉仮名、の使い分けなど興味深い内容。
投稿日:2019.05.29
abba-rainbow
このレビューはネタバレを含みます
元号が「令和」となって、書店に「万葉集」本の紹介コーナーのようなのが増えている。改元はちょっとした「万葉集」ブームを引き起こしているようだ。 しかし、本書はそのブームの前に出された本で、著者は「本書は、普通の『万葉集』の入門書ではない」と述べており、本書は「古代社会において歌とは何か、『万葉集』とは何であったか」を考えるヒント集、提案集としている。 まず最初に面白いなっと思ったのは、歌の流通チェーンの話。そもそも、今から1300年前の歌が現在もこうして読まれ、語られていること自体不思議な感じがするが、それが著者のいう、この流通チェーンによるものと考えられる。 古代の歌は、「歌を作る」人だけでなく、「歌唱する人」「歌を伝える人」「歌を記す人」「歌を理解し批評する人」たちに支えられているという。当時はそういう役割の人(職業的にその役割を担っている人)がおり、歌を後世に残していく努力をしていた。万葉集が現在も語られているということは、これまでの期間、連綿とそういう役割をしてきた人たちがいたということだ。 次に興味深かったのは、出土された木簡。木簡とは細長い板のようなもので、そこには歌が書かれている。その文字が漢字の羅列であったりするが、それが当時の日本独特の言葉の伝達方法だったということを知ることができた。日本の言語文化という視点でみても面白かった。 本書では、聖武天皇の奈良の大仏建立や、遣唐使壮行の場面なども登場する。本の扉をめくって1300年前にワープしたかのような感覚だ。 当時は、そういうイベントにおいて、必ず宴の場があったという。そして宴では歌が詠まれるというのが決められた様式のようでもあった。そこには、必ず「作る人」「歌う人」「記す人」「批評する人」たちがいたのだ。 本書には、著名な二人の歌人、山上憶良と大伴家持がと登場するが、これらの二人についての記述も非常に興味深かった。 山上憶良は、儒教、仏教、道教、老荘思想に精通した天平時代を代表する知識人だったと著者は述べていた。なぜだか野菜のオクラをイメージしていた私は非常に失礼なことをしてきた(笑)。 また大伴家持の歌日記についても、とても興味深かった。家持はビッグイベントで歌を披露するチャンスに最高のパフォーマンスが出せるよう、事前に歌日記を用意していたという。 出席するイベントがどういうものか、出席した天皇を喜ばせるには、他の参加者を唸らせるには、といったことを十全に事前検討し、いつ指名がかかっても大丈夫なように歌を事前準備していたという。非常にビジネスライクだと感じたし、家持は優秀なプレゼンテーターだったのだなと思った。 そういう家持もせっかくの準備が没ったこともあったり、それでもそれらの情報の蓄積を次回に生かすツールとしたりと、なかなか天平の時代も大変だったのだと胸の内で苦笑いをしてしまった。 著者の「万葉集は、七世紀、八世紀を生きた日本人の声の缶詰」、「万葉集は、言葉の文化財」という言葉が印象的だ。
投稿日:2019.05.19
いこ
万葉集の歌の解説ではなく、万葉集そのものから読み取れること、万葉集が後の時代、文学に対してどういう縁を「結び」繋いできたか、そんな背景や役割について掘り下げていたと思います。 読めば、日本語の成り立ち…や特色についても分かるし、万葉集を作り上げてきた人たちの想いも受け取れると思います。 歌を残したいと思う意志があって、歌を残す技術を持つ人たちがそのために尽力した。 二つの確固たる意志があったからこそ今の時代にもこうして残っている万葉集。 ただ歌を楽しむだけでなく、万葉集が今の自分たちに繋がることに何を残してきたか、その辺りのことも掘り下げて考えてみるのも、万葉集を読む楽しみなのかもしれません。続きを読む
投稿日:2019.05.11
Στέφανος
第1章 歌と文字との出逢い 第2章 歌を未来に伝える意志 第3章 歌の作り手と歌い手 第4章 木簡に書かれた歌 第5章 日本語を漢字で書く工夫 第6章 日本型知識人の誕生 第7章 日本型知識人と神々 …第8章 消えゆく物語をどう残すか 第9章 日記が芸術になる時 著者:上野誠(1960-、朝倉市、日本文学)続きを読む
投稿日:2019.02.06
kuma0504
万葉言葉から、(私の関心領域である)弥生時代まで遡る「古代」を読み解くことができないか?と思って紐解いたのではあるが、飛鳥・奈良の辺りまでしか描かれていないのは、少しがっかりした。 とはいえ、小説も…書いているという著者の語り口はたいへんわかりやすく、かつ興味深いものだった。以下、面白かった処をメモする。 ・アニメ「君の名は。」を大きく評価。この素の発想は、万葉集の「誰そ彼と 我をな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つ我を」を受けてのものだった。男と女、友と友、土地と人、親と子、神と人、田舎と都会、現代と古代、それら関係が、結びによって生まれるものと思い、それこそ生きる力の根源であり、日本人の信仰心の根源なのだ、と説いた折口信夫に繋がる。という。新鮮な見方だった。 ・右兵衛という役名の男は、宴会に呼ばれて即興で「物の名を歌い込んだ歌」をつくる芸を持っていた。芸名で呼ばれていたために、姓名が伝わっていない。蓋し、芸名の始まりであり、芸人の始祖(これは私見)であろう。 ・作り手、歌い手、伝え手、聞き手、等々と歌を巡る流通チェーンがあって初めて「歌集」は出来上がる。その背景に古代の文化、文明があり、想いがある。 ・日本語や韓国語は膠着語と呼ばれる。四千年の歴史のある漢字文化圏の辺境である。よって、著しい後進性があり、だからこそ、古いものも残る。また、遅れているから、先進性を取り入れる構造も持っている。 ・山上憶良は「日本型知識人」の最初期の代表である。無位無官の身でありながら、その学殖によって遣唐使に任命され、帰国後学問によって、最下位ながら貴族に列した。漢字文化や仏教思想を熟知しながら、漢字と大和言葉を駆使して、「組み合わせ」「ずらし」て独自の「大和魂」を語り残した。この型に、近代では森鴎外、夏目漱石、九鬼周造、和辻哲郎などがいるだろう。また、加藤周一もその中に入る(私見)。 ・万葉集に「竹取の翁」の話があるが、竹取はしなくて、かぐや姫は現れず、九人の仙女と歌の力で結婚する話になっている。当時は仙女邂逅譚がブームだった。「竹取物語」の「異伝」というのが著者の見解。万葉集は物語文学の萌芽である。 ・「文章こそ人が生きた証なのだ」という「文選」を手本にしたのが「万葉集」である。よって、天皇から庶民まで登場し、文は個人の思いを述べるものであり、詩歌は個人の情を伝えるものであって、そこに身分の上下など関係ないはずだ、という思想がある。もちろんどちらも貴族文学だから、それが徹底されていたわけではない。でも、積極的に「オールジャパンの歌集」を演出している。 ・著者は、奈良大学のゼミナールがこの本の元だと謝意を表している。しかし、「睡魔と闘いながら粘りつよく話を聞いてくれた」「十哲には、あらためてお礼を申し上げたい」とかなり「あとがき」とは思えない皮肉を書いている。蓋し、こういう人なのだ。 2019年1月読了続きを読む
投稿日:2019.01.26
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