【感想】欧州複合危機 苦悶するEU、揺れる世界

遠藤乾 / 中公新書
(19件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • koh

    koh

    コロナ禍前から欧州はずーっと波乱続きだと読みつつ思い出し、各国の国政に携わる方々は本当に大変だとしみじみ。。
    それでも、たくさんの課題と共に、一定の結束を続けるEUのしぶとさについても言及。
    中身がみっちり詰まった充実の1冊でした。続きを読む

    投稿日:2023.12.31

  • 芥川直木

    芥川直木

    第一次世界大戦前のバルカン半島が「ヨーロッパの火薬庫」であったように、今ではウクライナが現代版「火薬庫」になっていますね。
    この本を読んで、今現在、進行しているウクライナ情勢の背景を垣間見ることができました。
    しかし、ロシアの思惑ばかりが進行しているとは一概に言えず、EUをはじめとする国々の利害が錯綜していると思われました。
    それはともかく、早く戦闘が終わることを願っています。
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    投稿日:2022.03.13

  • moto

    moto

    このレビューはネタバレを含みます

    日本を代表するヨーロッパ統合研究者によるEU論。

    「複合危機」における「複合」とは、「複数性」(複数の危機が同時多発的に発生していること)、「連動性」(これらの危機が互いに連動し、相乗効果をもたらしていること)、「多層性」(危機が国際、EU、加盟国、地域・地方といった多次元で起きていること)を指す。

    2016年出版ということで、「複合危機」を具体的に扱った第Ⅰ部は、今日においてはやや古さは否めない。しかしながら、今世紀の危機を政治学的に分析した第Ⅱ部は、大変読み応えがあった。

    とりわけ、機能的にはさらなる統合の深化が必要であるにも関わらず、民主的な正統性を得られないために統合が滞り、さらなる悪循環を招くといった指摘は、非常に興味深かった。

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    投稿日:2022.02.14

  • horinagaumezo

    horinagaumezo

    ユーロ危機、欧州難民危機、ウクライナ危機やパリ同時テロ事件といった安全保障上の危機、イギリスの国民投票によるEU離脱決定という、2010年代のEUを襲った複数性、連動制、多層性を持った危機を「欧州複合危機」と捉え、EUが大きな分岐点にあることを指摘した上で、それぞれの個別の危機を振り返るとともに、欧州複合危機の背景や構造を歴史的、政治学的に分析し、今後の展望を示している。
    本書では、歴史的には、EUは、ドイツ問題と東西冷戦の解決の手段として形成されてきたが、現在のEUは「問題解決としてのEU」から「問題としてのEU」になってしまっていることが指摘される。そして、それを読み解くキーワードとして「アイデンティティと連帯」、「デモクラシーと機能的統合」、「自由と寛容」、「国民国家の断片化/再強化」が挙げられている。特に、複合危機に対処するためには、機能的にEUを強化する必要があるが、それを支えるEUの民主的正統性が稀薄であるために、機能強化が進まないという悪循環に陥っていることが強調されている。一方、危機に見舞われても生き残るEUのしぶとさについても、EUの権力性の点などから言及されている。そして、EUのインナーを中心とする同心円的な再編を展望するとともに、欧州複合危機が現代の先進民主国に通底するものであることを、〈グローバル化=国家主権=民主主義〉のトリレンマという観点から明らかにしている。
    本書は、必ずしも読みやすいものではないが、複合的な危機に見舞われている現在のEUを理解するために有益な、骨太の内容だと感じた。
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    投稿日:2020.06.06

  • kantamrt

    kantamrt

    20世紀に戦火にまみれた欧州を国境を越えて統合する壮大なイニシアチブは、ユーロ・ギリシア危機をはじめとして、シリアからの難民や、テロ、そしてはたまたBREXITと、2010年代に入って次々と困難に渦に飲み込まれることとなります。

    PWCの予測ではEU加盟国が世界のGCPに占める割合が10%未満へ低下する、としています。そうした中、欧州はアメリカそして今後より成長していく新興国(中国、インド、ロシア、ブラジルなど)に伍していくために、より一層バーゲニングパワーを結集させていく必要があることでしょう。著者は、そうした競争的側面から、EUは存在意義があることを本書の後段で述べています。

    一方欧州共同体が、パリ協定など環境基準や人権問題などで、世界的なスタンダードの構築にリーダーシップを発揮している分野も多岐にわたることも事実です。欧州が、今の危機を乗り越えて統治のモデルを提示し続けることができるかどうかが、欧州各国の首脳(政治だけでなく、経済や文化各界での)たちの双肩にかかっていると思いました。
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    投稿日:2018.11.10

  • zhuanius

    zhuanius

     学者先生の本というのは、どうにもお堅いものが多い印象で、この本もお堅いなあと感じました。
     ただ、文章こそお堅いものの、難解な表現はそれほどなく、EUのことなど全然よくわかっていなかった自分にも、EU事情をだいぶ整理することができました。

     この本で特に注意すべきは、大要次のとおりだと思います。
     いま世間の人々をエリートと大衆という形で大雑把に二分した場合、大衆のエリート不信が高まっている、ということです。
     我が国でも左派とかリベラルとか言われる人たちが選挙の得票はからっきしで、アメリカであればポピュリズムと言われながらもトランプ大統領が誕生したわけですが、これは断じて軽視すべからざることです。
     どうも我が国のマスメディアも、アメリカ国民の選択を訝しんでいるわけですが、民主主義の先輩をそう侮らないほうがいいでしょう。
     彼らに選挙で勝てる人々がいないという事実、国民から選ばれるリベラルではない、という事実は、民主主義の世の中にあって、致命的な問題です。
     民主主義における正統性の所在について、もっと真摯に向き合わない限り、EUと同様の危機に瀕するのではないか。
     理念が崩壊するというのは、理念の体系が崩壊することではなくて、理念の聴き手・担い手がいなくなることだと、私は感じるわけです。
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    投稿日:2018.11.05

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