ITと熟練農家の技で稼ぐ AI農業

神成淳司 / 日経BP
(7件のレビュー)

総合評価:

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  • 60過ぎたら農業なのか?

    国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では2065年に総人口は8200〜9500万人になる。直近の出生率からすると中位推計を達成するかどうかも疑問だがこの場合で8800万人と現在の約7割になる、14歳未満が10%、生産年齢人口が4529万人と現在の6割で52%、65歳以上は現在とほぼ変わらず3381万人で38%を占める。出生率が一定の場合はこの後は年齢別の構成比はほぼ変わらない。思い切った少子化対策をするか外国人を受け入れるのか、あるいは人口減を受け入れて社会の構造を全て変えるか、いずれにせよ20年後には大きく変わっているはずで、そうすると経過措置も含めた準備期間は10年〜15年ほどだろう。
    会社で言えば今の新入社員が現役のうちに働き手が6割になり、国内需要も同じように減りかねないという話。目先の問題は色々山積みだとしても日本全体で言えばこれがあらゆることに影響する最大の問題のはずなのだ。

    本書のテーマの農業に限れば、農業従事者人口と平均年齢は2005年/335万人/63歳、2010年/260万人/66歳、2015年/209万人/66歳だ。2015年65歳以上が133万人、50歳未満は25万人となる。実はこれは将来真っ暗ということではない。現状でも65歳以上が農業をやってるのだ。40年後も65歳以上の人口は変わらないので単純な働き手であればなんとかなる。ただし今の農業だと水やり10年と言われるほど技能の習得に時間がかかる。

    問題は熟練者の技術の伝承で、そこでAIの話になるのだが人工知能ではなく、人工知能を含む農業情報科学=AIだった。書名は意図的なひっかけだろう。人工知能=AIについては適用範囲が限定されると考えているようで中心的な話題にはなっていない。ついでに植物工場はコストが高く生産性は高くないと否定的な評価だ。

    本書で紹介している事例は簡単に言うと、熟練者の本人も気づいていない暗黙知をモデル化しITを初心者〜中級者の教育に生かすことで、一人前になる期間を10年から3年程度に短縮することを目指している。アイカメラを使い何をどう見ているかを見える化し、外部環境変化はセンサーで測定する。加えて主観的な気づきデータを入力するのが熟練者の暗黙知を見える化するためのポイントだろう。同じような取り組みは工場でもできるし、一部ははじまっている。色や形や匂いに音、そして触覚や味、人工知能でもなかなか勝てない熟練者の技術は確かにあるが、センサーに置き換えやすいものも多い。

    それで日本の農業が何を目指すかというと、比較されるのがイスラエルとオランダでいずれも農業の先進国だ。イスラエルは食料自給率が高い農産物の輸出国であり、水不足は点滴栽培で補う。熟練農家は富裕層に属し、キブツの伝統で指導者となる熟練農家を育てる仕組みが特徴だという。広大なビニールハウス、毎日指示をする熟練者と海外からの労働者二人という組み合わせが儲かる仕組みのようだ。

    オランダは少人数で、大規模な農場にITを取り入れていることで知られている。施設面積は日本の1/5、生産者数は1/60、単位面積あたりの平均収量は4〜5倍、平均単価は1/3ながら総生産額は日本とほぼ同じ低コスト大量生産が特徴だ。ただし筆者の意見ではオランダは目指すべきではない。規模では周辺国とのコスト勝負になるので熟練者の知恵を生かし、他社には真似できない高付加価値品をめざすべきだという。

    ここは新たな就農者をどう設定するかにもよるのではないか。60過ぎて就農する人を考えればコストは勝負できるだろう、2ー3年でものになる作物の栽培が入り口にあっていいはずで、上級者になれば違う農場に移ればいいのだ。いずれにせよ本書のような取り組みは農業以外にも広まっていくはずだ。そうしないと回らなくなるのだから。
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    投稿日:2019.08.27

ブクログレビュー

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  • sota

    sota

    ー 我が国が持つ可能性は決して小さくありません。ただし、残された時間は少ないのです。そのことを胸に、我々は次の社会システムを模索し、早期に歩み出していかなければなりません。 ー

    食料自給率の低下、農業人口の減少、少子超高齢社会化、こういったことは国防の観点からも最重要課題にも関わらず、抜本的な対策が行われているようには思えない。

    本作はこうした状況を解決に導くヒントをくれる作品。
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    投稿日:2019.01.19

  • nkon

    nkon

    政府系コンサルの人が書いた本。主張はタイトルの通りだが、自説を繰り返し述べているだけで、実施して効果が上がるようには思えない。補助金をもらってプロジェクトを立ち上げ、自分だけ実績ができて、他へ行く感じ続きを読む

    投稿日:2017.09.03

  • nagaramaru

    nagaramaru

    農家での導入実例を踏まえての現状の問題点などの指摘。まずあまりAIの話はない。ICT導入といったレベル。はやりでタイトルをつけたのだろう。アイカメラによる視点分析と、それをもとにした初心者へのテスト問題作成、レクチャーなどの事例は面白いが、技術的には何世代も古いものではないだろうか。気付きとしてはノウハウの共有レベルがポイントだと思ったこと。筆者は日本の農業を守るためノウハウは海外にだすな、といいつつ、後継者をつくるためノウハウを共有しろという。共有範囲の問題だと言いたいのだろうが、それこそが難しいポイントだろう。公共価値としては共有スべきだが、事業としては最大規模で囲い込んだものが勝つ。ビックデータをだれがもつのか、というだけの話なる。さて自分だったらどこまで共有すべきか? AIどころかITCさえ関係ないレベルでも方針はきめなければならない。続きを読む

    投稿日:2017.08.27

  • headshrink

    headshrink

    このレビューはネタバレを含みます

    農業の標準化・合理化、ITによる暗黙知の利用などを進めていこうという提言
    テクニカルな話題はあまりなく、基準つくりや啓蒙活動などの地道な努力の重要性を説く

    ・世界の農業生産量は1960からの五十年間で約2.4倍になった。農地面積はあまり増えておらず、単位面積あたりの収穫量を増やすことで生産量をふやしてきた。しかし世界人口は2050には90億人に達するといわれており、一段と効率化を進めていくべきだ。
    しかし、栄養という観点から見ると1950と2005の比較でほうれん草のVitAは85%、VitCは77%減少している。人参のVitAは81%、VitCは60%減っている。単位面積あたりの収量を無理にふやそうとすると栄養価は低下しやすい。旬を外れた作物では特にその傾向が強い。今後は季節外れの作物で品質と栄養価の高い作物を安定的に供給するということもビジネスチャンスを広げるためには重要

    ・IT農業では、これまで経験や勘に頼ってきた部分をセンサーやネットで補おうとする。定年後に農業を始めようというひとにとって「水やり10年」はあまりに長い。センサーなどで適切な水の量を決め、熟練者からのフィードバックを受けながらエラーを修正していくという過程が大事になる。全国で使われている言葉の定義をはっきりさせることもIT農業では重要になってくる。「収量」というは収穫した量か、出荷する量か、乾燥後なのか、、、、など様々な意味で用いられているのを統合し、データの比較を可能にする

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    投稿日:2017.05.30

  • katmania

    katmania

    国内農業を救う一つの手段として注目されるAIを取り上げ、現状や今後の可能性を解説したタイムリーな本。ただ、国内農業の現状のデータや、最近の取り組みを広く取り上げて紹介してくれてはいるが、やや踏み込みが浅く、構成にもあっちこっちに話が飛ぶ散漫さがあり、今後AIの活用に期待されるさらなる可能性、あるいは問題提起などの論点整理もやや中途半端で物足りなさを感じる。それだけ農業の今後について、問題点を明らかにしたり、解決策を示すことがいっかな容易ではないということだということを改めて思わせられる。
    ウェアラブルデバイスの活用など、具体的な事例については興味深かった。これらの活用が広まるか、収量増加や就農者の増加にどうつながっていくか、今後も興味がある。
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    投稿日:2017.05.03

  • andalusia0705

    andalusia0705

    筆者は農業にAIを導入奨励なのかイマイチ分かりにくい論調。農業従事者の教育が第一だとの主張。工業製品とは違い、作り手、土地などの要因が大きく影響する、そこにAIの力を発揮させたい。AIと言うよりデータ解析ができれば良いみたいだ。植物工場の生産性が悪いことは驚きだった。続きを読む

    投稿日:2017.03.10

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