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小山田浩子 / 新潮文庫 (53件のレビュー)
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総合評価:
KENT
不条理だが読み易かった芥川賞受賞作
本作『穴』は第150回芥川龍之介賞を受賞している。最近の芥川賞は有名人や若い女性の受賞が多く、内容的にも分かりづらく読みにくい作品が多かった。そんな中で本作は、久々に分かりづらいが読みやすい作品であ…った。 話のあらすじは、主人公が夫の転勤で、田舎にある夫の実家隣に引っ越してきたところからはじまる。 とある日、姑に頼まれてコンビニに支払いに行く途中で、不思議な黒い獣と遭遇し、河原のほうへそれを追いかけるうちに、胸の高さくらいある穴にすっぽりと落ちてしまう。 この黒い獣も謎めいているのだが、姑が連絡してきた支払金額がだいぶ違っていたり、突然聞いたこともない義兄が登場したりと、かなり不条理な雰囲気が漂いはじめる。ところが主人公は、それほど奇妙には感じていないようだし、悩むでなし夫や姑に相談するではなし、抵抗感が全くなく淡々とかまえている。そんな主人公の飄々としたような生活感度も、さらに不条理さの深みに誘っているような気がするのだ。 だからなんとなく、つげ義春の後期のマンガや安倍公房や村上春樹の小説を読んでいるような雰囲気が漂ってくる。またインタビューによると、作者自身も何を書こうとしているのか不明であり、何なの分からないまま推敲し彫琢したものが、この作品になっているのだと言う。 この『穴』という作品は約90頁で、本作だけで書籍するには短過ぎる。それで『いたちなく』と『ゆきの宿』という短編二作品を追加して書籍としてまとめられている。この『ゆきの宿』は本作を書籍化するにあたり書き下ろされた作品で、『いたちなく』の続編といったポジションのようだ。そしてどちらも舞台は田舎である。『穴』も田舎が舞台であることを考えると、著者は田舎に対して憧れ感を抱いているのであろうか。続きを読む
投稿日:2018.03.20
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ぷり之介
仕事を辞め、夫の実家の隣に引っ越した私。専業主婦になり、家事以外の時間をもてあます。そんなとき、見たことがない獣が掘った穴にハマる。さらに、いるはずのない義兄が登場し、不思議な物語になっていく。芥川賞…受賞の表題作のほか、2作品収録。続きを読む
投稿日:2024.01.18
ク~
このレビューはネタバレを含みます
芥川賞受賞作。 3つの短編集。 ■穴 夫の転勤で、義実家の隣の一軒家に住むことになった、あさひ。不便な田舎なので、非正規の仕事を辞めて、専業主婦に。子どもがいないこともあり、仕事を探そうと思うが、バスの便も悪く…ダラダラと過ごす。 田舎の暮らしに戸惑いながら、ある日、義母に頼まれ、コンビニにお金を払い込みに行く。その途中で、変な動物を見かけ、ついていくと、草むらの中で、突然穴に落ちる。すると、義実家の反対隣りに住むという奥さんに助けられる。 その後、全く知らされなかった夫の兄に出会い…中学のころから引きこもりなので、話題にされなかったのではないかと…。しかし、夫や姑などに、義兄の存在を聞くことができないでいた。 ある夜、眠れないでいると、物音に気が付き、外を見ると、義祖父がどこかへ出かけようとしていた。少し認知症気味でもあるので、心配になり、後をつけた。すると、義兄もついてきた。そして、義祖父が穴に落ち、あさひも同じ穴に落ちた。兄に手伝ってもらい、自分も義祖父も穴から出て帰る。その時、寒かったからか、肺炎にかかり、義祖父はまもなく亡くなる。 その葬儀にも、義兄は出席しない。 その後、あさひは、コンビニで働くことになる。 で、終わる。不思議なお話。 義兄の存在も、実在?幽霊? う~ん、何を描いて、何を伝えたいのかわからない。 ■いたちなく 実家の友人:斉木から結婚したと年賀状が届く。40歳を過ぎて、32歳の妻をめとり、築50年の家を買いリフォームして新居にしたと。 主人公は、不妊治療中。 春先に、斉木から電話があり、家にいたちが出て困っていると。そんな話から、妻と一緒に、斉木の家にシシ鍋をご馳走になりに行った。妻は、田舎育ちのため、シシ鍋の美味しさを知っていた。 斉木の家を訪問。シシ鍋をご馳走になる。 そこで、妻が、実家で行われたいたちの退治法を伝授。 その後、いたちは出なくなったらしい。 いたちの退治法は、母いたちを水に沈めて溺れさせる。死ぬ間際の鳴き声が、父いたちや子供いたちに向けて、この家は危ない、このいえにいると、水に沈められて死ぬよ、近づいちゃいけないと、知らせたと。 ここが、「いたちなく」のポイントですね。そして、ぞわっとする感じ…。 ■ゆきの宿 「いたちなく」の続き。 斉木の家の赤ちゃんが生まれ、車でお祝いに行った。 雪が降りだしたが、すぐやむだろうと思っていたが、本降りになって、帰宅困難に。結局、泊まることになった。 赤ちゃんの名前が「ゆきこ(幸子)」。 帰宅できなくなったと聞いて、近所に住むおばあさんが、お米の代わりにおからを入れたお稲荷さんを差し入れてくれる。母乳が良く出ると言う。 泊めてもらった部屋には、水槽がたくさんあり、珍しい魚を飼っていた。僕は、夜中、その魚に襲われる夢を見た。 翌朝、雪は止み、外で、近所のおばあさんに会うと… 妻のお腹に赤ちゃんがいると、予言?される。 まだ、わからないが、ちょっと幸せな気分になったかな。 う~ん。やっぱり、あまりよくわからない物語でした。 ブクログ内で、小説読了219冊。
投稿日:2023.11.01
sminami
表題作の「穴」だけ読んだ。 このホラー感は何? 小学生の夏休みの不思議な体験の大人版という印象。 読んでいてずっと気持ち悪さがまとわりついてくる感覚がかなり良かったですね。 (追記) 「いたちなく」「ゆきの宿」の二作もかなり良かった。こちらのほうがまだ怖くなくて良かったかな なかなか読み解けていない部分もあるが、面白かったですね
投稿日:2023.08.27
かおり
暗くて不気味で怖い 登場人物がみんな怪しく感じる描写 でも表立って何も起こらない 気味悪がりながら続きを読んでしまう
投稿日:2023.08.21
yuta
穴は難しかったです。姑からの振込依頼のお金が足りなかったこと、水を撒き続ける義祖父、黒い獣、義兄や子供たちの存在、そして穴。 色々考察してみたがわからないことが多い、だが一つだけわかるのはコンビニで働き始めてからは日常がもどったことだけだということ。 いたちなくは妻の語りが不気味でラストもよかった。
投稿日:2022.11.15
aqua
表題作を読み終わって「ああ、土地の人になったんだ……」と腑に落ちた気がした。これまではどこかお客さんのようなぎこちなさや、生活に実感もなく暮らしてる感じだったけど、義祖父の死をきっかけに嫁としてそこに居着いたという感覚。 田舎には田舎のルールがあるとでもいうような通夜の席は異様だったけど、あの場で自覚も出たのかな。そうと決まってからはグズグズ考える頼りなさみたいなものが消えている。役割を得て姑のような人になるんだろう。 義兄の言う事が印象的だったし存在自体も面白かったから、現実に居なかったのはちょっとショックだなぁ。 「いたちなく」と「ゆきの宿」は、夫目線では妻の考えが分からず不気味な人物に映った。これは夫が妻のことを何も分かっていない証拠かもしれない。洋子の前では妻は涙を見せているのである。 「穴」の主人公も夫との意思疎通は出来ていない感じだった。義父と義母の関係もそう。家族ってそういう孤独なものかもしれない。
投稿日:2022.10.26
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