小山田浩子 / 新潮文庫
(26件のレビュー)

総合評価:

平均 3.2
2
6
9
5
0
  • 不条理だが読み易かった芥川賞受賞作

     本作『穴』は第150回芥川龍之介賞を受賞している。最近の芥川賞は有名人や若い女性の受賞が多く、内容的にも分かりづらく読みにくい作品が多かった。そんな中で本作は、久々に分かりづらいが読みやすい作品であった。
     話のあらすじは、主人公が夫の転勤で、田舎にある夫の実家隣に引っ越してきたところからはじまる。
     とある日、姑に頼まれてコンビニに支払いに行く途中で、不思議な黒い獣と遭遇し、河原のほうへそれを追いかけるうちに、胸の高さくらいある穴にすっぽりと落ちてしまう。

     この黒い獣も謎めいているのだが、姑が連絡してきた支払金額がだいぶ違っていたり、突然聞いたこともない義兄が登場したりと、かなり不条理な雰囲気が漂いはじめる。ところが主人公は、それほど奇妙には感じていないようだし、悩むでなし夫や姑に相談するではなし、抵抗感が全くなく淡々とかまえている。そんな主人公の飄々としたような生活感度も、さらに不条理さの深みに誘っているような気がするのだ。
     だからなんとなく、つげ義春の後期のマンガや安倍公房や村上春樹の小説を読んでいるような雰囲気が漂ってくる。またインタビューによると、作者自身も何を書こうとしているのか不明であり、何なの分からないまま推敲し彫琢したものが、この作品になっているのだと言う。

     この『穴』という作品は約90頁で、本作だけで書籍するには短過ぎる。それで『いたちなく』と『ゆきの宿』という短編二作品を追加して書籍としてまとめられている。この『ゆきの宿』は本作を書籍化するにあたり書き下ろされた作品で、『いたちなく』の続編といったポジションのようだ。そしてどちらも舞台は田舎である。『穴』も田舎が舞台であることを考えると、著者は田舎に対して憧れ感を抱いているのであろうか。
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    投稿日:2018.03.20

ブクログレビュー

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  • ひでぽんZ

    ひでぽんZ

    なんとなく怖いような不思議なような独特な雰囲気のある物語だった。
    なんでもない日常の中にぽつんと入り込んだ非日常みたいな感じで個人的には好みの世界観だった。
    表題作の「穴」よりも「いたちなく」が面白かった。続きを読む

    投稿日:2019.10.14

  • 太田豊太郎

    太田豊太郎

    このレビューはネタバレを含みます

    主人公のどんくさいところとか、働かなきゃいけないと思いながら動けない罪悪感とかにすごく共感する。
    あさひが黒い獣を追っていて落ちた穴。穴から引き上げてくれた世羅さんはあさひを「お嫁さん」と呼ぶ。その獣を観察し捕まえて置こうとする義兄。義兄は、子孫を残すために滅私奉公をする家族という制度から逃れて物置に住んでいる。雨の日も水撒きをしていた義祖父は穴に落ちて肺炎にかかって死に、早くに亡くなった義祖母と並んで写真が飾られることになるが、それは夫婦のように見えなくても間違いなく同じ一族に見えるだろう。義祖父の葬式では「お嫁さん」と呼ばれた姑はもはや反応しなくなっており、あさひが代わりに「お嫁さん」としての役割を果たして行く。義兄や子供達は幻のように消える。
    コンビニ店員として働き始めることにしたあさひの顔は姑に似ている。姑が義祖母に似ていたように。それは夫の家に入って一族を支える「働く嫁」の顔なのではないか。
    穴に落ちることは今の家族制度に絡め取られて行くこと。
    働くことの虚しさや徒労感と、女性をとりまく家の不条理を感じた。
    後の二編は「ディスカス忌」と重なる。登場人物も共通しているし、その続編?不妊と妊娠・出産のテーマも続く。

    小山田浩子の作品は、今回の三作品も、ディスカス忌、いこぼれのむし、も、フェミニズム的な視点というか、女性が子供を持つこと、が共通するテーマである気がする。

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    投稿日:2019.08.16

  • naoponhon

    naoponhon

    このレビューはネタバレを含みます

    芥川賞。深そう。
    何度も何度も読んだら理解できるのかしら。
    普通に読み進めていったら
    大人のとなりのトトロみたいな、アリスの世界みたいになってって、 嫌ではないけど戸惑った。
    義兄って名乗ってる人、正体不明だし実在してるか分かんないけど、嫌いじゃなかったな。
    まっすぐだし。
    表題作じゃない「いたちなく」「雪の宿」も
    静かで不気味。
    母親になりたい女性と水に沈められた母いたち。。
    いやーなんか説明できないけど
    心には残る。モヤモヤするけど。

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    投稿日:2019.08.13

  • もーゆう

    もーゆう

    このレビューはネタバレを含みます

    なんというべきか…曖昧さの漂う雰囲気。

    表題作「穴」:非正規雇用労働の話とか、夫の実家の隣で家賃ゼロで世話になるので姑問題なのかな…と思いつつ、義祖父や義兄への気がかり(主人公は淡々としてるが)…ん?幻想?等 色々思って読んでいるうちに終わってしまった。
    まるでろうそくがす~っと静かに消えたような感じ。
    …なのだけど、主人公はラストには違う自分にシフトしてる。
    激動があるわけではないが、物事は確かに終わっている。

    ずっと読んでると正直疲れるのだが、何故か読みたいと思わせられる。
    不思議な惹きつけ感があるが、浸りすぎると憂うつになる;

    とりあえず、表題作のみの感想。
    小山田作品、好きです。

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    投稿日:2019.07.14

  • あずき

    あずき

    これを読んだあとにホラー小説読んだからか「こえーよ!」な記憶で上書きされてしまった。
    いや、怖くはない。不気味で不穏ではあるけど。
    異界とこちらを行き来する。

    投稿日:2019.04.14

  • 真夏日和

    真夏日和

    読み返してたら、全部読み返したくなって『工場』も『庭』も棚から出してきた。文庫も単行本も両方買っている小山田作品大好きすぎるんだけれど、他の人の感想見てたら、よくわからないとか何が言いたいのか?とか書かれてあって、そっかーそんな風に読む人もいるんだなと思ってしまう。この面白さって息するみたいなものでうまく言葉に出来にくい。あとから何回も読み返したくなってそうしたら新しい発見とかあって、小山田さんの好きなものが滲み出てるわー、うふふとかなるわけで、そういう自分だけの楽しみ方をわかち合えたりわかち合えなかったりそれもふむふむなるほどー!!って感じも面白くて、今回は『いたちなく』『ゆきの宿』が本当に面白くて『工場』の『ディスカス忌』の斉木君と同じ人物であって違うのかなとか、世界がずれてるかドッペルさんかな、とか小さな繋がりは熱帯魚だよなとか考えたらうはうはしてしまったのでした。あーほんまに、好き。小山田作品大好き(笑)続きを読む

    投稿日:2019.03.11

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