【感想】触楽入門

仲谷正史, 筧康明, 三原聡一郎, 南澤孝太 / 朝日出版社
(17件のレビュー)

総合評価:

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  • 触って楽しいことをちゃんと原理的に説明できますか…?

    携帯電話の普及、SNSの登場以来、わたしたちは今まで以上に文字や画像という視覚情報中心の生活をしています。VR(ヴァーチャル・リアリティ)の分野が好調だそうで、これからは目に見える世界すべてをヴァーチャルなものが覆うかもしれません。もしかして私たちは触感を徐々に失っている…?

    東大などに在籍する若手研究者を中心とした“技術にもとづく触感のデザイン”を考えるグループ「テクタイル」が、“触れる”という行為をもう一度捉え直し、触感テクノロジーの最前線として紹介しています。

    VRなどの仮想世界が現実味を帯びるためには触感が非常に重要です。視覚に錯視などの谷間があるように、触覚にもさまざまな錯覚があります。触覚がない世界とはどんな世界なのか。さわり間違いとは何か。握手をするとき私は手を“握っているのか”“握られているのか”。わずか数ミクロンの髪の毛を裸足で踏んだ時に気づけるのか。あまりに日常すぎるがゆえに、客観的に意識してこなかった触感の世界には、これからの未来が詰まっているのかもしれません。
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    投稿日:2016.11.01

ブクログレビュー

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  • fanta

    fanta

    対象を捉えるのに、ヒトは、5感によって齎された情報を繋ぎ合わせてパッケージすることで体の中に情報としてインプットしている。反対に、それを取り出すときには、パッケージされた情報のただ一部に触れるだけでも、対象が自然と浮かび上がってきて、認識することができるようになる。ヒトが作り上げていく世界は、そうやって情報を蓄積していくことで、対象とその情報を適切に認識できるようになることで、生きるために必要な反応を起こし、対応を生み出すことができるこの体によって、表されていく。


    自分と世界とがある。自分という側と世界という側があるということを知るために、大きく働いているのが「触れる」ということではないか。存在というものを見出すのに、触れることができるという反応を得ることで、実在するということの意味が分かるようになる。その感覚が「見える」ということと繋がり、ほかにも「聞こえる」や「味わう」、「匂いがする」ということがあることも知って、そのどれもが対象なんだと理解することで、情報がヒトの躰に蓄えられていく。


    氷を見れば、その固さや冷たさ、触れたときの皮膚にくっついてくるイメージ、口にほうったときの舌の反応や、噛み砕いたときのこめかみに走るキーンとかだって、ヒンヤリとか、ガリガリとかの音だってまるで聞くことができる。それぞれの認識は繋がっているということだから、それを取り出すときには、検索するときには、全部を捉えなくても一部だけの情報から、引っ張り出すことができるという仕組みだ。ショートカットが出来上がるということだ。その効率性は、ヒトが安全に安心に世界と向き合うことができるようにし、生命的にもエネルギー的にも望む方向として合理的なシステムとして作り上げてきたものだろうけど、そこには省かれてしまうものが沢山あるのだということも、簡単に理解できるだろう。


    ある機能が損なわれたときに、例えば視覚が失われたときに、ヒトは残された方法でそれを補おうとする。見えないことを、手を探り踏むことや、耳をすませることで、世界がどう広がっているのかをもう一度認識できるようにしていく。世界は再構築されるということで、ヒトの躰はそれができるのだ。そうしてみると、世界はまるでひとつの姿をしていないことに気づく。その当たり前のことを確認することができる。一つでなくていいということではなくて、一つなんかでは決してありえないということを理解できるということだ。僕たちがいま手に入れているこの世界に対して、そうではなく、それ以外として圧倒的に広がっていく世界の存在の仕方を想像できるということは、生きるということのためにこれからますます必要になってくることではないだろうか。


    このようなヒトが世界を認識する仕組みにおいて、そのシステムを解読し、テクノロジーとして、損なわれたものを補う技術が作られたり、省かれてしまう情報をもう一度ヒトに振り戻して捉え直させることである範囲で認識の広がりや深さを拡張させて、捉え方を刷新させるような方法が研究されている。そのような先端の取り組みによらなくても、普段の中でだれでもが、感覚というものにちょっと意識を向けるだけで、世界が少しだけ広がるのだということも描かれている。見えるだけで分かった気になる。知っているだけでそれで十分だと思ってしまう。ただただ反応するだけで毎日を生きることが当たり前になってしまうけれど、そうではないこともあるのだと、そうではないことのほうが圧倒的で、それに意識を向けるだけで、簡単に「新しい世界」は表れてくるのだということこそ、常に自分のそばに置いておきたい「意識」だと思う。
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    投稿日:2021.06.21

  • Yu Kino

    Yu Kino

    伊藤亜紗さんの「手の倫理」で知り、読んでみた

    めちゃくちゃ面白かった
    まさに入門編ですが、触覚の未開拓の広さ、そしてまたもやアリストテレスなんですが、あいつすげーなーほんと

    アリストテレスを超克することにほとんどの現代科学の端緒はある
    期待大

    なんか関わりたい
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    投稿日:2021.04.22

  • ganko165cm

    ganko165cm

    触感は触り方で左右される。
    握っているか握られているか。
    いろんな触感を楽しむ。分類してみる。
    五感の複合体験。
    目で見て、触れてみる。
    指先を人は注目してしまう。
    指先だけでなく、いろんな場所で食感を感じてみる。
    心を落ち着かせる触感のお守りを作る。
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    投稿日:2021.03.23

  • だいふくちゃん

    だいふくちゃん

    私たちはすでに感覚が拡張された世界に生きている。
    著者のワクワク感が伝わってきて面白かった。
    「心臓ピクニック」とか、驚きのある事例もたくさん載っていて楽しく読めた。ソーシャルディスタンスが唱えられる中で、触感伝達ってすごく重要なだテーマになるかもね。


    ★かもめブックス@神楽坂で購入
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    投稿日:2020.05.05

  • ghostrider

    ghostrider

    いかに観念の世界に使っているか,特に視覚情報に頼った文字や映像から構成する表象世界だけで世界を認識している。

    さまざまな感覚,本書では特に触覚,に満ちあふれた世界であるにも関わらずそれに気づかない,気に留めない,毎日を送っていることがもったいないと思った。

    心ここにあらざれば見えども見えず云々の通り。

    感覚を使う,身体を動かす,そのフィードバックに関心を寄せてみたい。
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    投稿日:2020.04.23

  • koishi-2018

    koishi-2018

    新刊棚で見つけてパラパラ見ると面白そう、
    皮膚感覚の新しい情報が満載のようです。

    触覚ってあまり意識していなかったけれど、もしこれがなかったら身動き取れない !!(>д<)ノ。
    その触覚について、いろんな観点からアプローチする本書は、すごく新鮮で面白い。



    2016/02/20 新刊棚で見つけて借り、読み始める。4/1 読み終わる。

    内容と目次・著者は

    触楽入門 〜 はじめて世界に触れるときのように

    内容 :
    つねにネットに接続し、皮膚感覚を失ってゆく私たち。
     もしも触覚がなくなったら?
     触覚は「五感の交差点」?
     おでこが網膜のかわりになる?
    「触れる」ということの面白さを紹介します。
    触感年表 山本貴光監修

    つねにネットに接続し、皮膚感覚を失っていく私たち。
    さわってないのに、わかったつもりになっていませんか?
     ・触覚の錯覚は50種類超!
     ・さわり心地が思考をつくる?
     ・握手をするとき、握っている? 握られている?
    私が感じている「触感」を記録・再生して、だれかに伝える。
    そんな装置を開発した著者が、触感の科学からモノ、心、身体、アートまで、忘れられている「触感の世界」をご案内します。
    私が感じる「この感覚」のふしぎに、目をひらく ―― 触感テクノロジーの最前線!

    この本は、触れるということの面白さを、だれでも気軽に試せる「問い」の形で紹介してゆきます。
    触感を意識化するための実践トレーニングや、身体を動かして試してもらう項目もあります。
     (…)本書を読んでいるみなさんが自分自身で感じながら考える、能動的に遊べる本として使っていただければと思います。(「はじめに」より)

     触感により引き起こされる情動は、理屈を超えた実感として、私たちの深いところに届く
     (…)それは、この世界に受け入れられているという感覚をもたらし、私たちの毎日を支えるものになるでしょう。(終章より)

    ★14ページにわたる「触感年表」(監修:山本貴光)を収録!

    ★本書の内容の一部
    ・もしも触覚がなくなったらどうなる?
    ・人に信頼してもらうには、手があたたかい方がいい?
    ・ノイズがあったほうが感覚がするどくなる?
    ・目の見えない人が描いた触感の絵?
    ・触覚は「五感の交差点」?
    ・心が「ざらざら」するとき、実際に触感としてざらざらを感じている?
    ・テディベアに触れると死への恐怖がやわらぐ?
    ・他人の身体に起きた触覚を自分のものとして感じられる?
    ・周辺視野を指でたどると、身体感覚が拡張する?
    ・おでこが網膜の代わりになる?

    目次 :

    ■ はじめに ―― 触楽への招待状
    ■ 1 触れるってどういうこと?
    ■ 2 私たちは外の世界をどのように知る? ―― 科学からみた触覚
    ■ 3 なにかを感じるとき、いったいなにが起きている? ―― 共通感覚としての触感
    ■ 4 触感は世界と「わたし」をつなげている
    ■ 5 実在感をつくり出す ― テクタイル・ツールキットの発明
    ■ 終章 触感の未来
    ■ 付録 触感年表

    著者 : URLはこちら http://www.techtile.org/ 『TECHTILE(テクタイル) 』 :  URLはこちら http://www.techtile.org/blog/ 『Blog 』 : 
    仲谷 正史,
    筧 康明 → URLはこちら https://twitter.com/xhi_ 『Yasuaki Kakehi 筧 康明 (@xhi_) | Twitter 』 : 
    三原 聡一郎, 南澤 孝太,山本貴光
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    投稿日:2019.01.12

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