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トルストイ, 原卓也 / 新潮文庫 (40件のレビュー)
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総合評価:
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あかさや
このレビューはネタバレを含みます
読み終えてきてから時間が経っているのでうろ覚えです。 クロイツェルソナタ 列車で居合わせた、浮気をした妻を惨殺し実刑を受けた紳士が男女間において愛の存在を証明することはできないと主張を挟みながら凶行に至る経緯を赤裸々に告白する。 紳士が語ったことはほとんど覚えてないが彼の主張は一見して女性への偏向として受け取れ実際その通りだが、しかし安易に一蹴するのが躊躇われる一般的な見方を内包しており嫌悪感が湧かない。 妻の浮気相手は若くハンサムで積極性があって人受けも良く妻と共通の話題も持ち出会って早々に紳士は不貞の予感をもったわけだが、そうであるにも関わらずそのことに苦悩しつつも嫉妬や見栄か、彼らを隔離させるどころか我が家に招待し親睦を育むきっかけを与えているのは興味深い。 悪魔 若き領主が独身時代に性欲を抑えきれず領地で逢瀬を重ね結婚を機に自然と関係が消滅した豊満な肢体を持つ既婚女性への性的な欲望が祭りの日に一瞥してから再来し理性では抗しがたく、事あるごとに既婚女性との接触を図ろうとし偶然も手伝って未遂に終わる日々が続き彼に献身的な妻への裏切りに対する苦悩と性欲との狭間で遂には欲望の成就を予感しそれから逃れるために自殺に至るまでの軌跡。 この誘惑は男性からの一方的なものではなく女性からのアプローチや領民の間での既成の事実、それが許される彼の地位といったものもそれを深く根付かせている点が興味深い。あるいは彼を慮って余りある妻の存在が罪の意識の源泉なのかもしれない。
投稿日:2023.12.09
がんちゃん
肉欲への軽蔑の意味が込められているのかもしれないが、殊更に描かれているのは、それへの憧憬も入り混じっているとも思う。 クロイツェルソナタが悲劇を加速させるファンファーレのように作品を生々しく躍動させ…る。 続きを読む
投稿日:2022.09.12
蓮子
フォロワーさんのレビューを見て面白そうだったので読んでみました。何気にトルストイを読むのは初めて。『クロイツェル・ソナタ』も『悪魔』も人間の持つ際限のない性的な欲望が様々な不幸や悲劇を生み、人を破滅さ…せるのだと主張します。特に『クロイツェル・ソナタ』で書かれる男女観、女性が男性に隷属的であることは今も尚続いている問題であり、それを解決するには途方もない意識改革が男女双方に必要なのだなと改めて感じました。『悪魔』はトルストイの体験と実際の事件が元になった作品とのことで、人に備わった欲望は呪わしく、それこそ悪魔のようだと思わずにはいられませんでした。トルストイは思ったよりも読みやすかったので、他の作品も読みたいです。続きを読む
投稿日:2022.08.07
たまどん
クロイツェルソナタとは、ベートーベン作曲のバイオリンソナタ第9番イ長調作品47のこと。私は聞いたことがなかったが、動画を検索して聞いてみると、バイオリン1台とピアノ1台が互いに調和しながら進行していく…優雅な曲だった。そう、まるで仲睦まじい男女が目配せながら言葉を交わし合うかのように。 ところで収録2作品のうち「クロイツェル~」のほうは文庫本で173ページ。だが、ある男が列車に乗り合わせた初対面の男性に対し、性欲はすべてに勝るという主張を自分の半生を織り交ぜて語る文体は、サスペンスの要素濃い内容とあいまって、長さを感じさせない。 内容を見ると、ある男の妻の前に若くて気障なバイオリニストが現れ、妻もピアノでその男と合奏するのが楽しみになっていく。一方で性欲の絶対的存在感を信じる夫は、妻と男との間に音楽の結びつき以上の“何か”を感じるようになり、2人に対する嫉妬が徐々に高まっていく…という話。 ある日、夫は長期出張しなければならなくなったので、妻と男とに自分が不在の間は絶対に会うなと念押ししたものの、不穏なものを感じて予定を切り上げ帰宅する。列車が遅れて深夜に家に着いた夫が目にしたものは、夜遅くにもかかわらず仲良さげに演奏する2人だった―― ここで私は、この場面が妻の不貞を夫が証拠としてつかんだ瞬間という一般的評価(と思われる)とは少し違った読後感をもった。 私にも妻がいるし、女性を聖人化するつもりはまったくないのだけれど、妻と男の2人は、夫が不在の深夜という時間であっても、本当に性的関係を最終目的に逢引していたのだろうか?例えば、夫の想像に反し、実は2人は月が美しい夜だったので純粋に演奏を楽しみたかったのだとは考えられないだろうか? トルストイの履歴に照らし、意識的にも無意識にも性欲に支配される男と女が必然的に陥らざるをえない悲劇が描かれたと読むのは簡単。だが、大阪弁でゲスく言うと「愛だの芸術だのって言いながら、結局はアレしかないんかい!」みたいな結末を文豪があえて書いたとは思えない。 だから私は「クロイツェル~」を、性欲の絶対性とそれに結局負けてしまう人間の悲劇を描きながら、性欲に芸術的欲求が打ち勝つ可能性も微量に含ませていたのでは、と考えるのである。 でもそんな読み方では三島由紀夫なんて読めないし。私が浅いだけなのだろうか。続きを読む
投稿日:2022.02.10
アツシ
トルストイは本当に人を殺したことがあるんじゃ無いかと思うような殺しのシーン。 万人が直視するのを避けがちな性の魔力について生真面目に問いただした純潔の文学。
投稿日:2021.04.11
katsuharu1977
パウロ・コエーリョの11分間の次に読了。 重たい。そして、ドス黒い。 人間は、性欲に支配されている。 と認めるしかないのか? 綺麗な女性を見れば、姦淫してしまうのが、 男性という生き物ではないだ…ろうか? ただ、女性も男性にモテたいから、 綺麗でいたいのではないだろうか? 毎日、出会う人全てが、ドス黒い性欲に、 支配されている。続きを読む
投稿日:2020.05.07
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