【感想】断片的なものの社会学

岸政彦 / 朝日出版社
(239件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
98
78
26
2
1
  • なんてことのない、話です。

    社会学、と銘打たれているけれども、どうか気負わずに開いてみてください。ここには、社会学者岸政彦がすれ違った市井の人々との出会いが、淡々と、かつ丁寧に書かれています。

    見知らぬ他人から話を聞く、という行為は社会学者である岸が常日頃行っているもの。しかし、様々な人たちの、様々な話を聞いていくと、どの論文にも報告書にも使うことのない断片的な物語を受け取ることがある。そして、そういうものこそいつまでも印象に残っている、と彼は語ります。

    かつて新興宗教の教祖を務めていた老人、ゲイをカミングアウトした南米の青年。どのストーリーも山場を迎えそうになると、ふっと静かに立ち消えてしまう。普段の生活の営みに沿った話だからこそ、据わりのよいオチなんて用意されていない。でも、その掌編のひとつひとつが、不思議と読み手にも染み込んでいくのです。
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    投稿日:2016.10.25

  • 物語以前の出来事や想いの断片

    ハリウッド映画とかで、ビルに押し入った悪役が警備員を射殺してどんどん中に入っていったりするじゃないですか。その登場5秒で死んじゃう警備員さんのこれまでの人生ってどんな風だったんだろう…。

    昔から時々私はそんなことを考えてしまうことがありました。そして、自分がそういうことを考えることがあったということを、この本は思い出させてくれました。

    多くの人が語る物語がある一方で、当事者しか語ることのない、あるいは当人が死んでしまった時点で誰も語ることのできなくなる、物語以前の出来事や想いの断片。圧倒的な数で存在するそれらのいくつかに、筆者は社会学の調査インタビューで出会い、社会学の分析の対象からこぼれたそれらを、ただそういうものとしてここに綴っています。それを読むことで私たちは何かを知ったり学んだりする訳でもなく、でもふと忘れていた自分と出会ったり、誰かを思い出したり、誰かと話してみたくなったりします。
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    投稿日:2019.03.12

ブクログレビュー

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  • 本好き初心者

    本好き初心者

    友人が貸してくれたエッセイ。自分があまり読むタイプでは無かったので最初はその世界観にたじろいだ。練りに練られた言葉というよりは作者の強い思いが溢れ出し、何とか言葉としては封じ込めたように感じた。普段何気なく過ぎていく「日常」。当たり前だがやはりこれが人間の数だけあるのだと強く感じた。読み終わる事が惜しくなってしまうような作品。
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    投稿日:2024.03.30

  • まに

    まに

    タイトルの通り、いろいろな人の人生について綴っている。
    ざっくりとした解説ではなく、概念的に事細かく解析している岸さん。なんて面白い本なんだ。

    投稿日:2024.03.21

  • 作工画図

    作工画図

    短期間で3回も読んでしまった。。。
    目の前で起きている事を、そのまま理解する「観察」は今最も重要な事の一つだが、これが意外と難しい。どうしてもバイアスがかかる。
    この本の作者の岸さんは、目の前で起きる、語られらるどうしようもない事を、どうしようもないと、ただ記録する。でも、諦めつつも受け入れている。そんな気がする。この態度は、デザイナーの深澤直人氏もその著書で同じ事を書いている。
    観察とは、残酷でありながらも、どこか温かい。
    この暖かさは、何なのか。。興味、気掛かり、愛おしさ。
    「笑い」についての記載がある。それは自由だと、、この自由の捉え方が、アッバスキアロスタミ監督の桜桃の味でのそれと同じ事だったのは、記憶しておきたい。
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    投稿日:2024.03.09

  • Anony

    Anony

    感想
    平凡さと特殊な経験。どうして1人の人間の中に同居できるのか。彼らは何を考えどう生きているのか。翻って。きっと自分も何か欠けているはず。

    投稿日:2024.02.16

  • まかろに

    まかろに

    断片的に様々なテーマについて触れられた短編が収録されている。書いてあることすべてを理解できた気はしないけど、読んでいると心の軸がいい位置に落ち着くような、少し気分がスッキリするような、そんな感じ。時々パラパラと読みたい。
    全体的にふわっとした表現が多く内面的で理解が難しく感じるのですが、子どもを持つことや結婚について語られた編はかなり解像度高く読めました。これは作者が日頃から強く考えている内容だからなのか、私自身よく考える内容だからなのかどっちだろう。
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    投稿日:2024.02.02

  • こうひこ

    こうひこ

    断片的な物語を集めた本であった。著者は自分はマジョリティと考えていても、断片的な存在の苦しさや社会における厳しさを把握している。それを乗り越えるのは難しいと理解しながらも、昔拾った石が存在しているように、その物語をあつめる一つの社会学が存在していることを知られて良かったとおもえた。続きを読む

    投稿日:2024.01.25

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