知と愛

ヘルマン・ヘッセ, 高橋健二 / 新潮文庫
(45件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
25
10
4
0
1

ブクログレビュー

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  • 蓮子

    蓮子

    フォロワーさんのお勧めで読みました。知に生きる人ナルチスと愛に生きる人ゴルトムントの物語。物語はゴルトムントの生涯を追う形で展開されてゆきます。数々の女性達との愛の戯れ、あてどもなくさすらう日々。移ろう季節の美しさを目の当たりにし、または飢えと寒さに喘ぎ、芸術家てして才を開花させ、得た名誉によって定住するかと思えば人里離れて荒野を、森を、独り彷徨う。彼は目と耳と肌で人の生き様と死に様をありありと体感した。規律を守り、秩序の中で暮らしてるナルチスには味わうことのできないような形で生と死の神秘をゴルトムンは知ったのだ。修道院を飛び出して放浪の最中にあってもゴルトムンの中には常にナルチスがいた。本作においてヘッセの書きたかった主題は最後の5章ではないかなと思いました。特に感動的だったのはナルチスがゴルトムントと彼の芸術によって自分が豊かになった、ナルチス自身がいかに自分は貧しかったかを悟る場面。ゴルトムントの存在によってナルチスは己が体験できない全てのものを得たのだと思います。その人自身が愛だったのだと。素晴らしい作品でした。続きを読む

    投稿日:2021.04.04

  • Keito

    Keito

    ヘッセの人生というのは、常に知性と感覚のせめぎ合いだったのだろう。この激しい二項対立を抱えて生き続けたと言ってもいい。知るとは何だ。目の前にあるこの美しい景色を感じるこの心はなんだ。彼は幼い時からそう思う心を非常に大事にしてきたに違いない。彼にとって学問は感覚抜きに行われる、純粋に抽象的なものであったのだろう。なぜ、感じられもしないそんなことをしなければならないのか。どこまでも素直な彼にとって、こんな理不尽なことはない。彼はそうして何もかも捨てて飛び出していくのであった。
    旅に生き、流れのなかに生き、とめどないひとの世でさすらうということは、別れが必然であり、定住はできない。ひとが好きなのに、ひとと別れねばならない。ずっと一緒にいられればいいのに、心がそれを望まない。そんなせめぎ合いの中、ゴルトムントは何を残せるのかと問い、ついに芸術というものを知る。しかし、その芸術さえも超え、ついに形而上の世界へ飛び出してしまうのだった。生きているということは、それ自体不思議で、魂は不滅なのだと彼は気付いたのだろう。そんな彼の生き様を抱えて、ナルチスは生きていかねばならないのだ。ナルチスの選んだ道はそういう生き方でしかないのだ。かくしてふたりは結局わかりあうことはなく、ゴルトムントはナルチスを置いてひとり旅立っていく。
    多分に『デミアン』や『シッダールタ』で培った精神分析や、諸行無常観が取り入れられている。ヘッセにとって、そうした考え方にどこかひかれるところや、新しい境地を見出したのは間違いないようだ。おそらく、二項対立という考え方をどうにかして乗り越えようとしていたに違いない。ずっと愛したい、けれど限りある命だからずっと一緒にはいられない。ここではないどこかへ行きたい、けれど安住の場所などなく、どこにもいられない。それならば、なぜ自分は今こうして生きているのか。それはすべてを生みだした母なる原型に帰るためなのだ。これこそ悟りであり、人間の目指すべきところではないか。彼はそう感じていた。
    いい意味でも悪い意味でも、ヘッセはいわゆる西洋的な信仰に裏打ちされて生きてきたゆえの発想なのだとは思う。しかし、知と愛はそれほどまでに対立するものなのか。「知る」ということと「感じる」ということはそれほどに違うのか。終盤ゴルトムントも触れており、ナルチスも気づいているが、心象のない思索というのはありえない。形式と内容というものはどうあがいてもそれ単一では存在しえない。形式のない内容、内容のない形式、そんなものはおおよそあり得ないのだ。
    二項対立という現象自体、そもそも、それを見出す第三者の存在なしにはありえない。二項対立を作りだすのは他でもない、この自分だ。内容と形式を分けているのは、他でもない内容と形式を併せ持ったこの自分でしかない。『シッダールタ』でみられたあの一体感というものが、この『知と愛』ではまったく感じられないのは、おそらく、この辺についての考察がヘッセ自身煮え切っていないからなのだと思う。母の姿を持たなくとも、ひとは愛だとか、死ということばを先に持ってしまっているのだ。その母という原型さえも、ことばの存在ありきでないといけないのだ。ほんとうに原型に帰るのなら、ことば自体を成り立たせている、ことば以前の存在を感じているはずではなかったのか。ゴルトムントはその生涯を終える際に、あのようなうわ言ではなく、ことばにならない叫びをあげるか、静かに何も語らず従容と消えていくべきではなかったのか。そう思わずにはいられない。
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    投稿日:2016.08.21

  • 横溝ルパン

    横溝ルパン

    知の追求者ナルチスと、芸術の道を進むゴルトムントの友情の物語です。物語は、ゴルトムント中心に語られますが、その心の中には常にナルチスがあります。
    昔読んだ時は、ゴルトムントに惹かれながら読みましたが、今回読み返してみたらナルチスの存在の大きさを感じました。続きを読む

    投稿日:2016.08.19

  • tissueman

    tissueman

    正反対の人格を持つナルチスとゴルトムントがお互いに惹かれ合い、支え合う。次々に新しいことが起こるストーリーに引込まれた。長さもあり、18世紀以前の世界に浸れて良かった。
    なんだか求道的な話ではあるが、ゴルトムントのプレイボーイぶりがただひたすら羨ましくもあって、浅はかな自分を痛感した。出てくる女性がそれぞれ独特の色香を放っていてみな魅力的なところも良かった。
    主人公の二人はどっちも極端で個性的だけど、ナルチスは修行を追求しすぎて人生を楽しんでいないとも言えるし、ゴルトムントは奔放過ぎて殺されかけたり危なっかしい。実際のところはその間ぐらいのいい感じのポジションがベストなんでは?となんとなく思った。それが凡庸ということなんだろうけど。
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    投稿日:2016.01.06

  • Chanrisa

    Chanrisa

    知と愛、ナルチスとゴルトムント、一見反芻する立場の二人が互いに惹かれ合う姿を描いている物語。あとがきにあるように、この2つは永遠のテーマでもあるからそれをこのように物語として完成させた本書は素晴らしい続きを読む

    投稿日:2015.09.02

  • danonak

    danonak

    これまで読んだヘッセの作品中最も刺激的。精神世界と肉体の交差点。ストーリーテラーとしてヘッセは退屈だと思っていたがこの本は緩急、静動あり、全く退屈しなかった。

    投稿日:2014.11.06

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