【感想】ボヴァリー夫人

フローベール, 芳川泰久 / 新潮文庫
(23件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
5
5
6
2
1

ブクログレビュー

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  • のすけ

    のすけ

     主人公エンマは自分が既に持っているもの、手を伸ばせば届くものには幸せを見出さず、だから遠くにあるもの、かけ離れたもの、失ったもの、身分不相応のものを追い求める。その気質は奇しくも彼女の忌み嫌う市民的な平凡さそのものとして描かれているように感じた。おそらくフローベールもそのように意図して書いているのだろう。
     対して夫シャルルには特別の同情を禁じ得なかった。ただただ可哀想。
     文体や自然描写は悪くはないけれど、一文一文が長くて難解。もう一回読まないと全然分からん。フローベールは自由間接話法を初めて小説に取り入れたとされているそう。私は語り手と登場人物が一体となって臨場感のある、この文体が結構好き。
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    投稿日:2024.03.19

  • Aoi

    Aoi

    よく、繊細で精密な絵画なんかを、よく書き込まれていると表現するけど、小説に対して書き込みがすごい、と初めて感じた。細すぎて回りくどい、とはならず、情景がありありと目に浮かぶようで、より物語に没頭できた

    それにしても金、恋の恨み…おそろしいね。。(この一言では収めたくないけど)笑

    1856年✏️
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    投稿日:2024.02.29

  • J.T.Hammer

    J.T.Hammer

    配偶者や恋人以外の男女に心が傾くことを浮気と呼ぶのは実に言い得て妙だ。足が地につかず、まさに気持ちがフワフワと浮き立つ如きその感覚は、恥ずかしながら私自身にも経験がある。以前読んだ桐野夏生著「柔らかな頬」のなかで、不倫相手と密会する主人公が「このまま彼と生きていけるなら子供を捨ててもいい」と考えるのだが、これは誇張でも何でもなく実際そんな風に思えてしまうものなのだ。本書の帯に記された「甘い恋の毒が人妻を狂わせる」のキャッチコピー通り、悦楽と陶酔さらには高揚感をもたらす浮気の作用はもしかすると麻薬に似ているのかもしれない

    少女の頃から数多の小説を読み耽り、劇中のヒロインが胸焦がす洒落たロマンスに夢中だったエンマにとって、恋愛や結婚とは美しく魅惑的なイメージを伴う出来事のはずだった。従って、ほぼ成り行きで契りを交わす運びとなった夫シャルルの鈍感さや野暮ったさを激しく嫌悪し、どうにも我慢ならなかった彼女の気持ちは何となくわかる。だからって不倫をしていいとは言わないけども、あまりにも理想と現実のギャップが大きかったのは事実だ。夫はおろか、娘も顧みず(娘は乳母が養育)、手練手管の色男ロドルフや年下の青年レオンとの情事に溺れ、嘘と借金を重ねたエンマの行いは良識ある方々からすれば浅薄でふしだらにしか映らないだろう。しかしながら、そんな彼女のことを映画「リトル・チルドレン」のなかでは、良妻賢母などという如何にも男本位の社会が仕立てた枠組みを一蹴し、自分の好きなままに生きた、前時代におけるフェミニストと言及しており、個人的にその見方はあながち間違いではないようにも感じられる

    最後にエンマは服毒自殺を遂げるのだが、文字通り彼女にとっては結婚が人生の墓場となってしまった。エンマの死後、シャルル・ボヴァリーとロドルフが偶然顔を合わせる場面は出てくるものの、レオンについての描写は一切ない。彼が元愛人の選択をどう受け留めたのか、ちょっと気になるところだ
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    投稿日:2024.02.02

  • kana

    kana

    美しい夫人の不倫を描くフランスの近代文学の名作。
    恋に憧れ欲の尽きることのないエンマと、足るを知るシャルルの相性は最悪で、人の幸せは多様なことがよくわかります。
    ちゃんと働いて(しかも名声はないとはいえ医者!)、無謀なことをしない、日々の暮らしで十分満足できるシャルルに共感できるだけに、彼と夫婦の子供がかわいそうでしょうがないです。
    あと、当時の交通手段に欠かせない馬の扱いがひどすぎるのもあわれです。
    情景描写が緻密で、物語の筋を忘れかけることがしばしばなので、スキマ時間のちょい読みには向いていないと思います。
    一文の中で主語が変わる箇所が何回も出てくるため読みづらいのですが、これは自由間接話法というそうで、原文を忠実に訳しているらしく、そういったことが最後の解説に書かれています。読み始めて「?」となり、解説を読んだら、だいぶ理解しやすくなりました。
    (津村記久子「やりなおし世界文学」で紹介)
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    投稿日:2023.07.03

  • けんご

    けんご

    足るを知らない人間の破滅劇。

    夫の鈍感さ(なにも気づいていないふりをしていたのか?)も相まって、救われない。

    投稿日:2023.05.20

  • 読む子

    読む子

    このレビューはネタバレを含みます

    『ボヴァリー夫人』

    「そろそろやばいかな」とかこの若妻は思いません。
    元祖ゴーイングマイウェイな”ボヴァリー夫人”。

    若い時の夢見がちな空想って、
    いつしか現実と向き合う時間が増えるにつれ
    にこやかに送り出せるものだと思うのですが、
    (と言うかサヨナラせざるを得ない…?)

    この妻、諦めない。
    夢想で無双。

    ナボコフは『ナボコフの文学講』の中で、
    「俗物の中の俗物」みたいな勢いで彼女を評していましたが、今で言うと

    スイーツ大好きインスタ映え命の韓流ドラマ大ファン女子って感じでしょうか。
    (悪気はないです。例えね例え。)

    もうね、ここまで貫かれると賞賛しちゃう。
    あっぱれだよあっぱれ。
    最後のほうなんてむしろちゃんとやりきってくれよって若干思ってた。

    1857年の作品が、2023年に新訳で読めてるってもうやべーことだと思うのですが、
    何でそこまで語り継がれているかって言うと、
    当時のフランス文学をガッツリ変える革命を起こしているからなんですねぇ。

    起こっている事を何もかも知っている俯瞰の第三者に語らせるという物語進行をせず(神の視点の排除)、
    話者がかわるがわる交代することにより
    それぞれの主観を際立たせ、感情移入を容易にしている。

    つまり話者が、
    誰かがこちらへ向かっているけどそれが誰かは分からないという状況なら、
    我々読者も誰が来るのかわからない。

    こういったミステリアスな仕掛けが、個々の文章や小説全体から受ける印象を形作っており、
    まさにハラハラドキドキソワソワの追体験を読者に提供してくれています。

    そして当然ストーリーとしても面白い。
    これは当時のフランスで意欲作というか、
    最早喧嘩腰作ですね。やるやんフロベール。

    うまいなこの料理ってなって、
    複雑な調理法や意外な材料を考えながら食べることもできるし、
    「とりあえずうまい」とそのものの全体の味を楽しむこともできちゃう、と盛り沢山でありました。

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    投稿日:2023.05.11

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