【感想】ディスコルシ ――「ローマ史」論

ニッコロ・マキァヴェッリ, 永井三明 / ちくま学芸文庫
(8件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • kent749

    kent749

    君主論とかぶる部分も多いが、全体としてはより具体的な実例に裏打ちされている。特に第二章以降は参考になることが多い反面指示代名詞が多いため何の話をしているかわからなくなる箇所も多かった。運命を受け入れること、その中で幸運を願うこと、軽蔑や悪口は憎まれるもとで無益、相手が倒れた後自分が後につくには自分がその近くにいなくてはいけないなど今まで見てきた会社の政治とよく似ていた続きを読む

    投稿日:2020.06.25

  • E/p

    E/p

    現代の政治を考えても、思い当たることがある箇所もあり、人間は500年以上たっても、本質はそうそう変わらないと思いました。

    投稿日:2019.02.01

  • nt

    nt

    マキャヴェリは思想家とは言えても決して哲学者ではない。フィレンツェ社会の荒波でもまれた経験から育まれた彼の「教訓」はパワー・ポリティクスに基づく実践的な処世術ではあっても、善悪の価値判断を伴わないし、たぶん彼には信仰心は無い。
    本書は古代ローマの歴史をたどりながら、当時のフィレンツェを含めたヨーロッパ社会に適合するような、政治的教訓を取り出していこうとする努力の結晶である。「君主論」では君主制が絶対的なものとして支持されているかのように見えたが、ここでは古代ローマ的共和制を、少なくとも冒頭の辺りでは賛美しているかに見える。
    たぶんマキャヴェリは、政体に関しては何が良いとかいう判断をすることを、最初から放棄しているのだろう。現に与えられた枠組みの中での、政治判断を評論するようなスタンスは一貫しており、善-悪論に傾いた近代以降の思想家・哲学者達とは一線を画しており、私たちにはそれが異様に映るのである。
    だが彼の持ってくる「教訓」はどうだろう。複雑系科学に依拠するダンカン・ワッツの『偶然の科学』を先日読み、「結果から歴史をさかのぼってあの時のあの行動はああだったとかいう断定は、多くの人が陥りがちな知的過ちである」という見方を体得してしまった私から見れば、ここでのマキャヴェリの「教訓」はすべて、これ式の「結果オーライ」的な断定に満ちているように思える。
    国が存続をつづけ繁栄するならば、権力者は人を何人殺してもよい、とするマキャヴェリ的テーゼは、結果が良かった(ように思える)からそう言えるのであって、臣下や庶民を無数に殺した権力者が結局良い統治者だったか、悪い統治者だったかは、将来の結果を見なければ判断しようがないのである。
    そしてその「結果」は、ダンカン・ワッツ的に見るならば、ひとつふたつの原因によって到来するのでは無く、無数の要因や条件が重なって、ほぼ「偶然のように」やってくる未来でしかないはずなのだ。
    後半、戦争に関する術策を評論するマキャヴェリは実に生き生きとして書いている。自分自身の政界での体験や歴史的な本を沢山読んで得た彼の「処世術」は、たぶんその人生から必然的に生まれた有機的生命ではあるのだろう。15−6世紀にこのようなディスクールを展開したこの高名な著者の、歴史上の重要性を、私は否定する気はない。むしろ、彼がこのように「書いた」という現象を、興味深い史実として受け止める。
    それでも、「結果」から遡行して「原因」をたぐり寄せようとする貪欲な知的欲求に関しては、現代のパラダイムにおいては、そのままで価値があるものとは思えないのも確かなのだ。この貪欲な「原因」の要求については、確かに近代的な知の前兆として、見事なものではあったとしても。
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    投稿日:2015.10.10

  • mkt99

    mkt99

    余談だが、ニッコロ・マキァヴェッリの思惑とはおそらく異なり、不届きにも寝ころんで読書する習慣の自分にはいささか腕が疲れた・・・。(笑)

    原題は『ティトゥス・リウィウスの初篇十章にもとづく論考』とのことで、リウィウスの著作『ローマ史』から読み取った古代ローマ史よりの事例に加え、マキァヴェッリの生きた現代イタリアの状況から得た事例をふんだんに教訓として盛り込んで、国家のあるべき姿やどのような時に国家は栄え、そして滅亡するかを論述する。
    各章の論述はそれほど長くなく読みやすくなっており、スタイルとしては章頭で、「人間は、悪党になりきることも善良になりきることも、まずはできないものである」とか「同盟を結ぶのには、共和国と君主のいずれに信頼をおけるか」とか「いつも幸運に恵まれたければ時代とともに自分を変えなければならない」などと自ら課題を立てた上で、それに対してギリシャやローマ史、現代イタリア史における事例を根拠に論理を展開してマキァヴェッリなりの結論を下す、というものである。
    当初は君主制と共和制の2本立てで、そのメリット/デメリットを含めた考察を行っていたはずではあったが、途中で『君主論』の執筆を行い完成させたこともあり、また、古代ローマの繁栄は共和制によりもたらされたとの考えから、かつての都市国家フィレンツェの政治形態と比較する上でも次第に共和制国家としての視点に力点を移しているようだ。
    訳者解説によれば、本書は古代ローマなどを理想国家と位置づけた上で、その倫理観などをどうすれば人間行為へ適用できるかということを課題とした当時流行の人文主義の思想に基づいているというが、そのため理想を追求するあまり、歴史事例からの結論を急ぎ過ぎ、現実的ではない議論もたびたび繰り返されているという。確かに今日ではもはやビジネス書の類くらいでしかお目にかかれないような無批判のテキスト解釈や人物視点の称揚と反省としての教訓化に彩られており、あまりにもストレート過ぎる「歴史から学ぶ」姿勢にはかなり戸惑いも感じるのだが、マキァヴェッリは歴史は同じ人間であるからこそ繰り返されていくものであるとの考えに立ち、人間によって繰り返される歴史をどう現実に活かせるかというマキァヴェッリなりの冷徹な政治思想としてよく昇華されているともいえる。マキァヴェッリの冷徹な政治思想といえば、パワーポリティクスに重点を置いた有名なマキャヴェリズムが真っ先に思い浮かぶのであるが、国家や政治運営に対する厳しく冷酷無比なその考え方は本書にもよくあらわれていて、これから国家を興し世界征服を企む人にはもちろんお薦めの古典テキストには違いないのだが(笑)、そのようなわけで理想化された政治思想を追う一方で、現実のイタリアやフィレンツェの国際政治状況との狭間で、いささかの矛盾や迷いも感じられるともいう。
    今回本書では、単なる歴史事象だけではなく、人間心理や宗教や社会の内面にまで踏み込み洞察することで「力の法則」の適用を訴えかけるものになっているが、その底流に流れる思想の原点は、本文中に繰り返されることになるヴィルトゥ(実力、手腕、武勇、美徳、才能、活力、繁栄)であり、その一方でのフォルトウナ(運、幸運)であるだろう。あるいはフォルトウナ(運)はヴィルトゥ(力)を持つ者だけに微笑むとも言い、結果が全てで手段を問わないとするマキャヴェリズム全開の論述には思わず笑みがこぼれてしまうが(笑)、さらに人間を突き動かすのはネチェシタ(必要)に迫られた時であるといい、人間の行動パターンを見極めた対策の数々の基本思考はなかなか興味深かった。
    このような一貫した考えに基づく本書は、例えば、複数の敵対国家の効率的な潰し方や、敗戦国を合併することなく同盟国として使いぱしりにせよとか(我が国だ!)、軍隊は国民皆兵でどんな恥辱を受けても生き延びさせろとか、最も長い章である「謀略について」での謀略の方法論など、今日でも立派に通用する話も数多く(笑)、特に謀略の仕方などは今後の参考にしたいと思う。うそ!(笑)
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    投稿日:2014.10.26

  • いしはら

    いしはら

    教養のためのブックガイドより
    p126
    世の識者は、将来の出来事をあらかじめ知ろうと思えば、過去に目を向けよ、と言っている。この発言は道理にかなったものだ。なぜかといえばいつの時代をとわず、この世の中のすべての出来事は、過去にきわめてよく似た先例をもっているからである。つまり人間は、行動を起こすにあたって、つねに同じような欲望に動かされてきたので、同じような結果が起こってくるのも当然なのである。続きを読む

    投稿日:2014.05.13

  • モンタニャールおじさん

    モンタニャールおじさん

    ティトゥス・リヴィウスの『ローマ史』に取材して、国家経営のあるべき姿を説いたマキャベリの大著。

    『君主論』においては、ひたすら君主制について論じ、国家を強大にするために君主はいかに行動すべきかを説いた。しかし、『ディスコルシ』においては、古代ローマに範を求め政治がいかにあるべきかを説く。ルソーがマキャベリを共和制論者として評価したのも強ち間違いではないことに気付かされる。続きを読む

    投稿日:2011.06.03

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