【感想】不毛地帯(一~五) 合本版

山崎豊子 / 新潮文庫
(1件のレビュー)

総合評価:

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  • 巻を措く能わず

    非常におもしろくて,一気に最後まで本を読んでしまうことを表現した言葉だそうだが,まさにそのような感じで全五巻を読破してしまった。とにかく続きが読みたくて,通勤時間はReaderで,トイレに入っているときはスマホアプリでひたすらに読み続けた。今まで特に理由もなく敬遠していたことを反省。ストーリーとしては陸軍の参謀を努めた主人公が,シベリア抑留を経て帰国し,心ならずも商社マンとして就職し,大きな課題に取り組みながら出世していく,,,と書くとなんとなくありがちな話のようではあるが,おそらくは徹底的な取材に基づいた細部の積み重ねと全体の緊密な構成が,この小説を凡百の企業小説と一線を画したものにしているように思う。まず圧倒されるのが,初めに1巻を丸々費やしたシベリア抑留の部分。この部分だけでも作品として成立する,気迫のこもった内容であり,ぜひ多くの日本人にシベリア抑留がどのようなものであったかを感じる意味でも読んでもらいたいと思う。終戦時に大本営の参謀でありシベリア抑留を経験したことがのちのストーリーに明らかに目に見える形でかかわってくる度合いというのはそんなにないのだけれど,終戦から高度成長に向けて立ち上がった日本の一つの象徴というか,典型として主人公である壹岐が描かれたのだろうか,とぼんやり考えた。主人公を見出した大門社長やライバル社の鮫島など,脇役・敵役もそれぞれに個性的で非常に魅力的。主人公がプライベートではなかなかうまく立ち回れなかったり,息子と衝突したり,恋人ともどかしい関係を延々続けたりと,仕事でのスーパーマンぶりとの対比も主人公の人間的な欠点を見せてくれて,親しみが持てる。この作者の長編をこれから順番に読んでいくのが楽しみである。続きを読む

    投稿日:2016.08.05

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