【感想】アメリカン・スナイパー

クリスカイル, ジムデフェリス, スコットマキューエン, 田口俊樹 / ハヤカワ文庫NF
(28件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
4
11
6
2
1
  • 一人の狙撃手の物語

    クリス・カイル(1974〜2013)が、自身の半生を綴った作品です。物語は、自身の生い立ち、軍への入隊と訓練、イラクでの実戦、家族への想い、退役という形で進んでいきます。また、筆者のクリスだけでなく、妻のタヤが綴った文章も文中に散見されます。愛に溢れた文章もあれば互いのすれ違いに悩む文章もあるなど、一人の兵士の妻である女性の想いも推し量ることが出来ます。

    ある程度の制約はあったと思いますが、実際の軍の訓練や戦闘について明かしています。また、女性を射殺したことを平然と述べたりと、大胆なことを述べている部分もありました。
    本作の魅力は、個人的には「筆者の蝕まれていく心」を描いていることだと思います。特に後半になるにつれ、蝕まれた心が、露見していきます。

    〈戦争とはどのようなものであるのか?〉この疑問の答えの一つになるのが、本作であると私は読書後感じました。また、普段ノンフィクションを読まない方にも読んでほしいと思えた作品でした。
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    投稿日:2015.03.11

  • この人は、ザ・レジェンド? もしくは悪魔?

    アメリカで公式上、最も多くの人を狙撃したスナイパーの自伝。
    今年のアカデミー賞を受賞した作品の原作。
    狙撃手として、アメリカでは「ザ・レジェンド」と呼ばれ、
    敵方の武力勢力では「ラマディの悪魔」と呼ばれた男は、
    当時の体験をデスクトップで仕事をするように語っている。
    仲間の死や夫婦関係の悪化や手術するけがをしても決して
    戦場から離れないのは、戦場が好きであると本人も語っている。
    クリス視点だけではなく、嫁のタナ視点からも当時の状況や夫婦関係の
    悪化が進んでいることが赤裸々に書かれている。
    しかし、ある負傷から戦場から離れたいと思うきっかけを読んだときには、
    人として弱いと感じたとたんに全てが崩れていくことも実感した。
    また、Sealsの訓練や隊員内の激しいいじめについても語られていて、
    伝統だからと言って新人には行う事について罪が無いのは、
    読んでいていい気分ではない。
    また、戦争に行くことに関しても、好きな仕事をしているだけとかたり、
    階級が上がると現場から離れてデスクワークばかりだからと
    拒否する辺りは、現場至上主義の人だったのだとうかがえる。

    除隊後に、戦友のケアに従事し始めるところで終わるのだか、
    出版後の人生を読むと運命は残酷である。
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    投稿日:2015.06.19

  • アメリカン・ノンフィクション

    映画も観たうえでのレビューです。
    うーん、正直主人公には肩入れできません。何もかも自分を正当化しているようで、葛藤なんて露ほどで、自分らが殺されないために殺す・・・って意識です。これが正義なのか。正直戦争狂いのアメリカ人って印象。それだけ精神を病んでしまうような行為という意味では、このノンフィクションの意味はあったかもしれない。

    9・11でたくさんの犠牲者が出たことは、とても悲しいこと。でもだからといってテロには武力でって構図は賛成できない。対話はないものなのか。もっとたくさんの犠牲者が中東やアフリカの紛争地域で出ていることを忘れてはいけないと思う。それを助長するようなアメリカの参戦には同感できない。

    それと、映画はもう少し良心の呵責もある主人公として描かれている。ハリウッド映画感たっぷり。さすがイーストウッドです。

    素人だから仕方がないが文章力もないし、読み進むにつれつらくなってきた。本人が亡くなってしまったことは、残念。一つ、奥さんの苦悩だけはとても共感できた。
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    投稿日:2015.10.02

ブクログレビュー

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  • キミ

    キミ

    先に映画を見た。映画とはかなり違うが、これはこれで興味深かった。特に、派遣中と本国での心境変化や、敵、味方そして自分自身の死生観や描写が『本物』なので、本を読むことで少しだけ追体験できた…かな。

    投稿日:2022.09.11

  • 横

    イラク戦争で活躍したスナイパーの生涯 ドキュメンタリーで多数のイラン人を射殺した男の話だが、戦争のある断面をみることからは価値はあるかも。

    投稿日:2021.10.08

  • nur1202

    nur1202

    (たぶん)標準よりも過激な愛国者のスナイパーの自伝。
    敵を殺すことに対しての躊躇が全くないところが、十字軍的なものを感じます。
    アメリカ国内なら爽快な話として読む人もいるだろうけど、個人的には性格破綻者の日記を読んでいるかのようでした。
    奥さんの手記の方が共感できましたね。
    主人公に味方がつけたニックネームが "The Legend" と読んで、地球最後の男(映画じゃ無くて、小説の方)を思い浮かべたような、そんな感じの本でした。
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    投稿日:2020.02.23

  • asita-asatte-siasatte

    asita-asatte-siasatte

    同名映画の原作。
    ちょこちょこ心配する奥さんの回想が挟まれている。
    これがアメリカで模範とされる理想の家族像の一つなのだろうか?

    映画では戦場のトラウマに苦しむ姿がクローズアップされていたが、原作はそうでもない。
    監督のクリント・イーストウッドは帰還兵のPTSDに関心があるらしいのでその影響でしょう。

    アメリカが中東で苦戦する大きな要因はイスラム教です。
    平定するということは人の心を変えるということで、ある意味改宗させるのに近い。
    人権意識が高まった結果、街ごと燃やすようなことができなくなり、一人一人を説得するとなると時間がかかるのです。
    物理対物理なら絶対負けないアメリカが手こずるのも無理はない。
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    投稿日:2018.12.22

  • saga-ref

    saga-ref

    映画公開で興味を持ち購入したが、またしても映画は見なかった。安保法案の強行採決は、戦争を考えるために本書を読む良い契機を与えてくれた。テロリストがルール無用で命を奪いにくるのに、米兵は交戦規定に縛られているという現実を日本は理解しているのか? 天命と思って戦場へ行く夫と、本国で幼子と一緒に無事の帰りを待つ妻。家庭が崩壊に向かいつつあるときの二人の文章を読むと辛い。彼の最期がPTSDの元海兵隊員による射殺というのも遣る瀬ない。続きを読む

    投稿日:2017.08.24

  • totssan

    totssan

     イラク戦争の最前線で狙撃手として従軍した兵士による、リアルすぎる戦記。SEALという舞台の内実や、実践時の心境や作戦上のネタを、多少の検閲を経たもののほぼそのまま記している。とにかく強烈。
     敵の射殺に対する良心の呵責は一切ない、と言い切るところにまずドカン、と来た。喧嘩やいじめ?など不明な感覚もあり、何かと感情が揺さぶられる。兵器の解説も具体的で、日本の本ではまず記されないだろう(マニア系であるか)。
     退役後、会社を興すが、まさかの結末を迎えたところもまた小説のようで、何とも言えない感覚を残す。
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    投稿日:2017.08.03

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