【感想】特捜部Q―カルテ番号64―

ユッシ・エーズラ・オールスン, 吉田薫 / ハヤカワ・ミステリ
(38件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
7
16
9
0
0

ブクログレビュー

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  • Aの本棚

    Aの本棚

    『人間の一生は、誘惑の奈落の上を綱渡りし続けることであり、一歩間違えれば、どん底に落ちることもある。』


    北欧ミステリーの人気シリーズ【特捜部Q】の第4弾。
    本作は50年ほど前に実際にスプロー島に存在した女子収容所と、そこで行われていた非人道的な行いの史実をもとにしたストーリーだ。

    映画化もされているが、映画とは違うストーリー展開なので、原作未読の方はご安心を。

    本書では収容所出身のニーデの壮絶な過去パートと、現代の複数の失踪事件を捜査するパートが交互で構成されており、なぜ事件が起こってしまったのかを丁寧に描いている。

    今回も胸糞が悪くなる内容ではあるが、史実をもとにしているので内容もより重く感じた。

    作中に登場し、実際の収容所で行われていた強制不妊手術と優生思想は、けしてデンマークだけの問題ではない。世界中、日本でも行われていた。
    現代では、出生前診断がそれにあたるのではないかと人種差別問題として取り上げられている。

    この問題に関しては、漫画【進撃の巨人】等でも取り上げられているように多くの作品に影響した問題であり、私たちが考えなければならないことのひとつであると改めて思った。

    【ダンサーインザダーク】のような救いがないストーリーだが、作中登場するニーデと教師の触れ合いが素晴らしく、これだけで1冊出来そうなエピソードだ。
    ラストのエピローグも救いがありよかった。
    また、カールと仲間たちのユーモラスなやり取りも健在で楽しく読ませてもらった。

    エンタメとして楽しむだけではなく、社会問題として考えさせられる著者の熱い思いが込められた1冊だ。


    こんな人におすすめ .ᐟ.ᐟ
    ・北欧ミステリーが好きな人
    ・社会派ミステリーが好きな人
    ・イヤミスが好きな人
    ・考えさせられる話が好きな人
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    投稿日:2023.01.30

  • ひまわりめろん

    ひまわりめろん

    結局ミステリーの面白さはどれだけ魅力的な敵役を登場させられるかで決まるような気がする
    あるいはどれだけ憎らしい敵役を

    その意味で本作は合格点だ
    今回カールたちが立ち向かうのはとんでもないくそ野郎でアサドやローセの怒りも大爆発だ

    それにしても人の歴史とはこんなにも黒いのか
    果たして人とは本当にこの地球に存在する価値のある種なんだろうかと思ってしまう

    本作に描かれているスプロー島の女子収容所はデンマークに過去に実在していて、倫理的でないと思われた女性や軽度の知的障害を持つ女性を民族衛生法や優生法といった鬼畜な法律を根拠に不妊手術が行われてたのだという
    作者のユッシ・エーズラ・オールスンはそのことへの″怒り″で本作を書き上げたようだ

    ご承知の通り日本にもかつて優生保護法という法律が存在して″選別″が行われていました
    これはとても恐ろしいことだと思います
    なんの罪もない人が正義の名の下に未来を閉ざされてしまう
    しかも障がい者や犯罪者に対して生まれてきたこと自体が罪なのだと考えるような人は今の世の中にもごく少数ながら実在し、神の代弁者のように振る舞っている

    人の未来を作るのは、そんな悪魔たちに惑わされない人たちだと思う
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    投稿日:2023.01.23

  • nekotaro

    nekotaro

     シリーズ4作目、デンマークの窓際刑事2人と変わり者アシスタントが地下の特捜部Q部屋で未解決事件に挑む物語りです。

     時代設定は、2010年11月ですが25年前の1985年11月に妻の暗い過去がクアト・ヴァズによって暴かれたその晩に夫婦の乗った自動車が事故を起こし夫は即死、妻ニーデ・ローセンは生き延びた。ニーデは、結婚前に売春宿で働いていたが宿の女主人リタ・ニルセンが1987年に失踪しカールの有能なアシスタントで二重人格者のローセ・クヌスンが未解決事件として取り上げた。事件を見つけるのはいつもローセの仕事になっていた。

     25年前には更にリタが失踪してからの2週間で5人が失踪し、全員がニーデに呼び寄せられたのだった。ニーデは、人種選別の為に非合法な強制中絶や強制不妊手術を行なっている医師で政治活動家のクアド・ヴァズに人生を滅茶滅茶に破壊され復讐に執着していた。

     ストーリーは、現在(2010年)の捜査の進行と25年前の失踪に関わる事件と、その事件の発端となった更に15年程前のニーデやヴァズと失踪した人達の過去が綴られる。終盤ではっとする展開が起きるものの、始終暗く陰惨なストーリーだが最後の最後でこのストーリー登場人物で唯一、情と心を持った人がこの荒れた物語を引き締めてくれたのがとても救いだった。

     特捜部Qのメンバーは、個性的だ。ボスのカール・マークは、離婚同然の生活ながら妻の連れ子の面倒や不随となった元同僚を自宅看病しながらも、新しい恋人モーナに心を奪われてまるで高校生男子の様な繊細さだ。シリア人で過去が謎のアサドは優秀なアシスタントだが言葉が堪能では無く、頻繁にカールから指摘を受けるが、このやり取りとカールの心の叫びが面白い。

     本作は、シリーズ4作目ですが作者は10作で完結と発表してますのでまだまだ楽しめます。
    続きを読む

    投稿日:2022.01.17

  • 643096

    643096

    外れないわ~~
    めっちゃ嫌な奴がいて
    周りから攻める
    合間のカールの事情・・・
    堪能しました

    投稿日:2021.08.10

  • akatenkoban

    akatenkoban

    特捜部Qシリーズ4作目。スプロー島という島に1960年代まで実在したという、知的障害があったり品行方正でなかった(と独断で判断された)りした女性の矯正施設(という名の強制収容施設)を土台にしているそうです。よもやこんなひどいことが、と慄きながら読み進み、慄けることは幸運なのだな、としみじみ感謝しつつ、複雑な気持ちで読みました。子供の頃に母親を亡くしたことに起因する知識の欠如に、いくつもの不幸と無関心と不親切と悪意が最悪のタイミングで重なってしまったニーデという美しく魅力的な女性と、親子二代で優性思想にとりつかれつつも権威を持った医師であるため長期間に渡り非道な行為を続けてきて政治にも働きかけようという野心を持つクアド・ヴァズという男性が中心人物。もちろんおなじみのカールにアサド、ローセにモーナ、ハーディもみんなそれぞれの過去に傷やわだかまりなど他人と共有したくないことを抱えながら日々を懸命に過ごしています。カールが燃え尽きてしまった例の事件現場からは新たな遺体が発見されそこからカールの写真や指紋の残った硬貨が出てきたり、ローセには実際にユアサという妹が居ることがわかったり、アサドもカールも捜査中に死に直面したり、と、かなり心を揺さぶられる内容でした。早く続きを読まなければなりません。続きを読む

    投稿日:2021.02.21

  • Gen.

    Gen.

    面白かった。
    なんか、ますますカールを含めスタッフ一同ハチャメチャになっていくような・・だけどええ仕事するんやなー。。
    シリーズ最高かな。

    投稿日:2019.03.30

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