My Humanity

長谷敏司 / ハヤカワ文庫JA
(35件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
7
9
12
2
0
  • SFに求めるもの

    今のSFって何でしょうか。
    …僕はSFに文明論だとか社会正義だとかを求めていません。
    だからこの作品が少しつまらないのでしょうね。
    ハインライン、アシモフ、クラーク、ギブスン、ディック、it、it…。
    この作品には過去に現れ出たSFの中から最高の素材を抽出してあります。
    そしてやることはといえば、文学ごっこ、通俗的精神分析、そして家族ごっこ…。
    SFは黄金期を過ぎたのでしょうか?
    批判はこれくらいです。
    内容としては経験伝承、その応用が社会に及ぼす影響の特殊心理描写、そしてナノマシンの生物的進化ととても上手い材料が使ってあります。
    物語を求めないなら非常に良い出来です。
    そして非常に美しく"日本的"でもあります。
    確かに日本SF大賞にふさわしいでしょう。
    星5つ。
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    投稿日:2016.08.04

  • しみ出すような後味の悪さも,心を惹きつける

    SFとはつくづく「人間」を問う物語である。
    短編4編からなるこのMy Humanity。
    疑似神経制御言語による人格の補完技術,人の知性を超えた超高度AI,
    自己増殖し人の制御を離れてしまったナノマシンと,その超テクノロジーに心をくすぐられないわけがない! 

    しかしやっぱり物語の根幹は,それら超テクノロジーを介して描かれる「人間性」。
    4編通して,えも言われぬ絶望感や後味の悪さがしみ出すような物語であるのに,
    どれもこれもが,ぐっと心を惹きつける。

    長谷氏が描く絶望的な物語は,とてもよい。
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    投稿日:2015.02.16

  • ヒトとしての相克を描く中短編SF

    ITPという人間の脳の動きを言語に置き換えて記述する事が出来る技術が実現化した未来。「あなたのための物語」の後日譚でこの技術が浸透した若しくは浸透していく社会が語られる。

    「地には豊穣」は好景気に沸く世の中を背景に熟練技術者の不足を解消する為に彼らの経験と知識をITP技術を使って保存、移植するプロジェクトが立ち上がる。主人公のケンゾーは英語圏で開発されたITP技術を他言語圏(この場合は日本語圏)にアジャストさせる為の調整を行っている技術者でこのアジャスタの設定値を日本人被験者から集めて決定する作業を行っている。御船〈ミフネ〉と呼ばれる日本語アジャスタが日本文化の基準値となる設定が面白い。この基準値の取り方ひとつで日本文化モデルに入るか入らないかが決められるというのだ。最初は基準値などは機械的に足切りしてしまえば良いと考えていたケンゾーが、ある事をきっかけに寄って立つべきものが無い自分に気付きミフネを自分に取り込んで「謙三」という日本人になるエピソードが切ない。

    「allo,toi,toi」は同じITP技術を使って少児性愛者を矯正しようとする話なのだが、個人の好き嫌いと集団社会としての好き嫌い(やって良い事ダメな事)とのギャップが生む相克に晒される受刑者チャップマン。グロテスクだが考えさせられる作品。

    「父たちの時間」は原子炉廃炉の放射線を抑制する機能を持つナノマシンが変異して自己増殖し出す。暴走するナノマシンを捕食する為の新マシンを投入するのだがイタチごっこの様相になり・・・生物進化の生存戦略の話で語られるオスの役割。男にとっては耳の痛いツライ話かも。

    どれも短いが内容は濃くそして重い。あなたにとって文化とは、社会とは、父親とは、が問われる4つの中短編。私にはITP技術エピソードの「地には豊穣」が一番良かったですかね。前作「あなたのための物語」は結構読みづらいのでこちらの短編集から入るのもアリかと思います。

    しかしこのITP、グレック・イーガンの作品に出てくるMODを毎回思い出してしまうのは私だけか?
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    投稿日:2015.02.22

ブクログレビュー

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  • 水琴桜花

    水琴桜花

    甘いから好き、ではなくて、好きだから甘い。
    そもそも、最初に『好き』だけがあって、理由は後からつけてるだけ……。
    この考え方は、けっこう衝撃的でした。欲望も、欲望を抑え込むことも、グロテスク。

    すっごくおもしろいんだけど、長谷敏司さんの文章を読みづらく感じるのは、私だけかしら?続きを読む

    投稿日:2019.07.07

  • ま鴨

    ま鴨

    生まれた国の文化を捨てて生きてきたデラシネの話。
    小児性愛者を矯正しようとする技術と、その試験台になる終身刑囚の話。
    急激に進化するナノマシンを前に、科学者としての自分と父としての自分の相克に悩む男の話。

    冷徹で淡々とした筆致で描き出されるのは、SFの文体による個人の魂の話です。SFとしてのアイディアの尖り具合もなかなか面白く、そのアイディアに立脚した世界観を存分に活かしつつエモーショナルな視点を貫くスタイルは、グレッグ・イーガンの短編に近いものを感じます。

    ・・・が、エモーショナルな作風であることは認めるんですが、その「エモーション〈情動〉」の描き方が、理に走っているのが鴨的にはちょっとアレかなー、と。
    言いたいこと、表現したいことはものすごく伝わって来るんですけど、「あれがこうなってこのようになりました、だから私は云々」というト書きの描写が延々と続いて、いまひとつ登場人物に感情移入できないもどかしさがあります。理屈抜きでうわーーーっと魂を鷲掴みにする、そんな荒々しい表現もあって良いんじゃないかなと思うんですよね、「個人」をテーマに据えるからには。
    SFの枠に閉じ込めておくには、勿体ないタイプの作家さんなのかもしれませんね。一皮むけることを期待したいと思います。
    続きを読む

    投稿日:2019.02.04

  • airos

    airos

    あなたのための物語から関連で読んだ。なかなか良かった。
    2作目 allo toi toi:そこにあるようなSF描写と、脳にデバイスを埋め込んでも結局は変われない人間の根っこがうまく描かれている。なかなかの生理的嫌悪をもよおす結末で素敵。
    3作目 hollow vision:SF描写の迫ってくる感じが大変よかった。AIを描く作品はとにかく新鮮さが命だとはっきりわかる。テロ鎮圧の流れが怒涛の勢いで一気読み。
    気になったのが、自転軸という言葉の使い方。たぶん作者は(自転の円周方向という意味で)間違って使っているのではないか。
    4作目 父たちの時間:ナノロボットの自律進化の課程がなかなか真に迫っていてよい。生物学の描写は微妙に怪しい気もしたが、気になるほどではなかった。父という存在を描く小説なので蛇足とは思いつつ、やはり生存競争の結末まで書いてほしかったなあとは思った。
    続きを読む

    投稿日:2018.11.19

  • tep

    tep

    AIが人間の能力を超えてまもなく、様々な領域において人間を管理する役割を与えられ始めた黎明期を描くSF短編集。人類に有益であっても、人智を超えたAIに対する空恐ろしい雰囲気がそこはかとなく漂い、この物語の世界の今後について考えてしまう。続きを読む

    投稿日:2018.10.27

  • bukuroguidkodama

    bukuroguidkodama

    『地には豊穣』
    再読
    豊穣の月の下で薄れ往く文化差異を惜しむ話
    豊穣という言葉は普段使わないとかどうでも良いことを思う
    科学の力で言葉や国家や宗教と文化がたいらになるまで
    果たしてどれくらいかかるか
    他の話と比べると割と平和な話かもしれない

    『allo,toi,toi』
    再読
    犯罪者心理とSFてきに接触する話
    SFというより警察ものとか社会派とかああいう系統よりか
    SFというのもそういうものだけれども
    感情自律ができても犯罪は減らないだろうけれど文化は衰退しそう

    『Hollow Vision』
    スパイ大作戦な娯楽活劇調
    『BEATLESS』の超高度AI世界は無尽に広がりそうなので
    この話の結末もそのひとつとして見える

    『父たちの時間』
    今度の新ハリウッド版は期待できるのかという話
    もとい
    3年前のグダグダ神話崩壊ぶりがすごく日本人的だったが
    日本以外はどうなんですかね
    日本のことも良く知らない日本人には良くわからないけれども
    父たちというより雄一般なのではというあたりはちょっと腑に落ちないが
    閉じて終わる話でもないということか
    続きを読む

    投稿日:2018.10.26

  • hosinotuki

    hosinotuki

    短編集4編
    人工による経験の伝承と文化的背景を扱った「地には豊穣」、小児性愛者の矯正の物語「allo,toi,toi」、宇宙ステーションでの海賊との戦いを描いた「Hollow Vision」、原子力発電所を扱った「父たちの時間」。どれもが少々本格的で、わかりにくく、難しかったが、確固たる世界が構築されていた。一番好きなのは最後の物語で、増殖していく「クラウズ」が不気味でその後が気になる。続きを読む

    投稿日:2018.04.11

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