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太田光 / 文春文庫 (10件のレビュー)
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じゅう
「太田光」がリスペクトしている作家「向田邦子」への想いを綴った『向田邦子の陽射し』を読みました。 「向田邦子」関連の作品は、4年くらい前に読んだ「文藝春秋」編集の『向田邦子ふたたび』以来ですね。 …-----story------------- 最上のオマージュ、鋭利な批評 誰よりも「向田邦子」を讃仰している「太田光」による最も誠実なオマージュ。 「こんなことを向田さん以外の誰が書けるだろう」というその傑出した魅力を小説・エッセイ・シナリオの奇跡のような表現を通して綴る。 「太田光」が選ぶ、「向田」作品の「読む」「観る」ベスト10の原文も掲載。 「向田」読者の幸福を存分に味わえる、最高の入門書にして最強の「向田」論。 ----------------------- 「向田邦子」ファンには堪らない内容でしたねぇ… 「向田邦子」作品の評論に留まらず、お気に入りのエッセイ・小説・シナリオの名シーンの原文が掲載されていて、昔からの読者も懐かしみながら愉しめたし、これから「向田邦子」作品を読んでみようと思っている人への入門書にもなる良書でしたね。 ■Ⅰ ぼくはこんなふうに向田邦子を読んできた ○奇跡のような小説―思い出トランプ ○沈黙という、至福の表現―あ・うん ○“人”と“幸福”との距離―隣りの女 男どき女どき(小説) ○向田邦子にしか書けない作品―寺内貫太郎一家 ○色彩鮮やかに心を伝える―父の詫び状 ○向田さんの“愛し方”と“誇り”―眠る盃 ○“大きなもの”への怒り―無名仮名人名簿 ○“日本”と“日本人”への向田さんの意思―霊長類ヒト科動物図鑑 ○太宰治の“幼稚さ”と向田さんの“強さ”―夜中の薔薇 ○向田さんの“茶の間”と“世界”―女の人差し指 ○言葉を花にする作家―男どき女どき(エッセイ) ○“片思い”の対話―向田邦子全対談 ○生への“沈黙”―向田邦子の恋文 向田邦子の遺言 ○太田光が選ぶ「読む向田邦子」ベスト10 《小説》 ・かわうそ ・三枚肉 ・男眉 ・大根の月 ・あ・うん 《エッセイ》 ・ごはん ・水羊羹 ・なんだ・こりゃ ・鉛筆 ・マスク ■Ⅱ 向田邦子が書いた女と男の情景 ○向田邦子の不在の大きさ ○浮気をされても腹は減る ○男は女にかなわない ○ダメな男をかわいがる ○強いけど、もろい人―妹・和子さんに聞く ○太田光が選ぶ「観る向田邦子」ベスト10 《阿修羅のごとく(1979年NHK)》 ・女正月 ・虞美人草 《あ・うん(1981年NHK)》 ・こま犬 ・送別 《寺内貫太郎一家(1974年TBS)》 ・1 茶の間 ■あとがき 「太田光」も語っていますが、「向田邦子」作品に登場する人物って、愛せない人がいないんですよねぇ… 中途半端な人間でも、ダメ人間でも、ついつい許しちゃいたくなるような、そんな魅力に溢れています、、、 登場人物が嘘っぽくなくて、身近にいるような感じがするんですよね… そして、心の機微の描き方が巧い、そこが魅力なんだと思います。 収録されている短篇やエッセイは全て再読ですが… その中でも、特に印象的だったのは『かわうそ』や『三枚肉』、『男眉』、『大根の月』ですね、、、 男女の機微の描き方が秀逸… 再読で新たな気付きもあって愉しめました。 ずっと昔に読んだ短篇を、また読んでみたくなりました。続きを読む
投稿日:2023.02.01
Chisa
髙島屋の会報誌に掲載された太田光のエッセイを読んで向田邦子に興味を持ち、「寺内貫太郎一家」を読んだのが先月。家庭内暴力すごいし、亭主関白すごいし、現代の家族のかたちとあまりに違って、でもなぜか「時代…錯誤だ!」とか怒る気が全く起きないほど素敵な家族に思えて、混乱した。自分が夫から怒鳴られたりちゃぶ台返しされたらと考えると絶対に嫌なのに、寺内一家で繰り返される家庭内暴力の根底に圧倒的な愛や信頼関係を見出してしまって、不思議と腹も立たないし、憎めない。実生活で年上の夫にあれこれ指図されるのを何より疎ましく思う一方で、寺内家を見て「素敵だな」と思うこのダブルスタンダードさはなんなんだ。今のところ答えは出ていない。 経験上、混乱させられた本は長く記憶に残る。そういう本は、わたしの年齢や環境の変化に伴って、読むたびにまったく違った混乱を引き起こす。 それでもうちょっと他の作品も読んでみたいな、でもどれがいいかな、と思っていたところ、図書館でこの本を見つけた。全然知らなかったのだけれど、太田光の向田邦子愛は、かねてよりなかなか凄まじいものであるらしい。漫才をしているときの太田光は、毒舌が行きすぎてただの悪口をぶちまけているように感じることが多くて、正直あまり好きではない。その一方で、なんだかんだ毎週欠かさず見ているサンデージャポンで、(自身がMCであるのをいいことに)いくら時間がかかっても言葉をきちんと厳選して、できるだけ正確に言いたいことを伝えようとする姿勢には、ずっと好感を持っている。というわけで読んでみることにした。 前半は、太田光による書評。既述の通り、わたしは「寺内貫太郎一家」以外は読んだことがなく、ドラマも見たことがないので、内容を知らないまま解説を読むという謎の展開にどうしたもんかなと戸惑った(そうなることは予想できたのだけれど)。今は読むのを一旦やめておいて、他の作品を読んでみてから、答え合わせのような形でこの本を読んだ方がいいのかもしれないと思っていた。 しかし後半に救いがあった。前半で挙げられたいくつかの短編集とエッセイが、全文掲載あるいは部分的に抜粋されていた。つまり前半で「あぁこれ読んでみたいな」と興味を持った作品を、すぐ読むことができた。なんと幸運! 印象に残ったのはやはり「かわうそ」だった。ホラーを読んでいる感覚だった。娘の死の真相を知った夫が妻を殴ってやろうと思い、でも「この女を殴らないほうがいい、とどこかで思ったから、黙って玄関へ入り、酒の勢いで眠ったのだろう」というところがいちばん怖かった。なんでそう思ったんだろう。憎しみよりも愛が勝ったから?そんな単純なことではない。自分がいつかこの妻の世話にならなければいけない日が来るということを予見して?でもそうやって将来のために今の感情を犠牲にするという選択をしなければ、それ以降の人生も変わったかもしれない。 一見、平和そうな日常は実は白黒つけられないことに溢れていて、いつそのバランスが崩れてもおかしくないという不穏さを常に孕んでいるように思う。 「かわうそ」の他にも「あ・うん」も印象に残った。どちらも共通して、家族って綺麗事じゃないのよ、と語りかけてくるようだった。結婚する前は理想を自由に描くけれど、現実ってそうはいかない。気持ち悪いし、いろんな経験や感情が蠢いている。だとしても、そんなに悪いもんじゃないのよ、と言われているような気持ちになった。わたしも幼い頃、ドラマや小説で向田邦子が描く「家族」に触れていたら、なんの不備もない完璧な理想像に固執することなく、醜いところも不器用なところも含めて家族なのだと思えていただろうか。今は回り回ってわりとそういうふうに思えるようになったのだけれど、結婚して以来ここに至るまでがなかなか苦悶の日々だったから、もっと早く向田邦子に出会いたかったなぁと思う。続きを読む
投稿日:2021.06.01
jun
向田邦子への愛をふんだんに語った一冊。 執拗に「男は単純でバカ、女はスゴイ!」が繰り返されてる のがちょっと鼻につくけど、愛情あふれるとてもいい本だった。 向田邦子の短編などがそのまま掲載されてる…のはちょっと驚いた。こうゆう本もあるのだなと。続きを読む
投稿日:2020.12.27
なな
すごくよいなぁと思った。岩田さんのところで購入した本。 世代的に向田邦子は知らなくて、太田さんとうちの親が同じくらいみたいだった。ドラマというのを確立した人なんだなぁと思う。いわゆるお茶の間テレビの…最盛期、日本人に希望と笑いを届けた人たちのなかに、向田さんはいたのだなぁと思う。 本書は、そんな向田さんの人間くさいドラマに子どもの頃あてられて、すごく好きだった太田さんが熱烈に愛をつたえるファンブック&考察エッセイ。 構成はとてもシンプルで、まず太田さんが好きなシーンや文章、作品について語る。 そのあとに実際に抜き出した向田さんの原文が載っている。というのが、2往復ある。 おしゃべりはしない向田さん。大事なところではしゃべらず、登場人物の所作や動きに想いをこめた向田さん。それと対照的に、その向田さんの魅力をしゃべりまくる、おしゃべりな太田さん。 戦争の経験というのが根底にあるにせよ、向田さんはしゃべらない、という道具をうまく使う人だったんだなぁと思う。そもそも、物書きというのはしゃべるのが下手、伝えたいことがあるのにうまく伝わらない、という人が多い気がする。 とくに向田さんの作品のなかで描かれる『男眉』の主人公のような、男にうまく媚びられない、不器用な女性が、向田さんと自分に重なった。ついつい、わかっているのに可愛いげのないことをしてしまう。そういう、男女の、あうんの呼吸のなかに入り込めない目線がやさしく感じた。 お茶の間のシーンとか、観てはないけど、わたしは寅さんが好きで、もしかして、向田さんの作品は女はつらいよっていう感じなのかもしれない。 エッセイも小説も、ちゃんと読んでみたい。あとはドラマも一度観てみたいなぁ。男のおしゃべりもちゃんと役に立ってるよ、と著者に言いたくなる本でした。続きを読む
投稿日:2020.05.06
Pearl
「心の底から好き」をこれだけ明確に 言葉にできることが羨ましくもある。 どんなに慎重に言葉を選んだとしても、 止めどなく溢れ出る向田さんへの、 向田作品への愛情はどうしようもない。 手放しで思う存分に…語ることができる 幸せに満ちた表情が思い浮かび、 その気持ちは読み手の心に伝染してくるようだ。 そして半分は、太田さんの解説を読んでから 向田さんの作品を読むことになるのだが、 いちだんと冴え渡り迫力に満ちたと 感じられる文章が突き刺さってくるような 感覚になるのだった。 向田作品は20代〜30代の頃に何度も 読んでいたものだが、最近は遠ざかっていた。 今読んだらまた違う印象を受けるかもしれないと 再読したい気持ちになった。続きを読む
投稿日:2018.02.01
haruharudiary
『向田邦子の陽射し』(著:太田光) いわた書店さんの「一万円選書」の1冊(1/11) 今年の3月、キャンセル待ちに当選して、届いたカルテに記入し、待ちに待った本が届きました カルテに書いた私の希望…は「小説が読みたい」 選ばれた11冊の本はどれも素晴らしく しばらく小説を読んでいなかった私の胸のスポンジに たくさんの感情の雨を降らしてくれました また一万円選書をお願いしたいけど、大人気で再度は無理のよう・・・ いわた書店さんに選んで頂いた本から、自分で新たな世界を広げていきたいと思います いわた書店さん、小説の素晴らしさをまた思い出させていただいて ありがとうございました! 11冊の中には、テンポ良く読み進めてしまって付箋すらつけずにいたものもあります。 付箋が付いている本は付箋部分を紹介 付いていない本は備忘録としてタイトルのみご紹介します。 ・向田さんは少しも騒がず、やすやすと、ど真ん中で、誰も触れてはいけないはずの、悪くて魅力的なことを堂々と 書いてしまう。震えるほど恐ろしいが、惚れ惚れするほど、格好良い(p11) ・全てを持っているのに、たった一つだけは持っていない門倉と、何も持っていないようで、たった一つだけを 持っている仙吉。それは、喜ばす人間と、喜ぶ人間であり、発する人間と、受け取る人間であり、あとうんである(p16) ・幸福にすること、と、されること、どちらが幸福だろう、と(p17) ・誰かにとっての幸福が、別の誰かにとっての幸福ではないこと。すぐ隣に生きている人同士でも、同じ幸福を共有できないこと。 そのことがドラマを生んでいく(p20) ・乱暴さ、優しさ、無神経さ、繊細さ、強さ、いい加減さ、賢さ。これらのことが、実は全部同じことであること。 生きていけないなどどいうことはあり得ない。人間、食べて出して、を繰り返すことで、いつか全て笑い話になるのだ、 という思い。(p29) ・常に今自分がいる世界が、自分の居場所じゃないと感じていた。だからこそ、次へ次へ、前へ前へと進むしかなかった(p54) ・「どこで命を終わるも運です。体を無理したり、仕事を休んだりして、骨を拾いにくることはありません」(p77) ・幸せのなかにも不幸がある。もっと言えば、何事もなく過ぎていくようにみえる日常にも、一歩間違えれば事故や不幸や 残酷や暴力や死が入り込んでくるような隙間と瞬間がある(p207)続きを読む
投稿日:2017.12.31
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