【感想】エンディミオン(下)

ダン・シモンズ, 酒井昭伸 / ハヤカワ文庫SF
(8件のレビュー)

総合評価:

平均 4.7
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ブクログレビュー

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  • 一条浩司(ダギナ)

    一条浩司(ダギナ)

    惑星間を転位ゲートで繋げるテテュス河を舞台に過酷な逃亡劇が続くなか、意外な味方と恐るべき敵が現れる……。

    イカダで逃亡しつつ各惑星を冒険する主人公たちと、ジャンプごとに死亡と復活を要求される最速の宇宙船で追跡する神父大佐たちの対比、この絵面が何よりも面白い。

    神話の類型を彷彿とさせる現地種族チチャタクと賢者的な神父との出会いが冒険を盛り上げる。さらに深まるシュライクの謎、そして現れる脅威が、読者を怒涛のラストに引きずり込んでいく。

    いくつもの危機を乗り越えていくたびに深まっていく主人公たちの絆。ヒロインが12歳の少女であるため、本作の段階では恋愛まで深まらないが、暗示的な描写が続編に期待をもたせる。シリーズ全四部作の中で、三作目である本作が最も好きだという人がいるのもわかる気がする。(四作目はまだ未読だが)本作は王道SFアドベンチャーとしての魅力が凝縮されている、シリーズ最高傑作だろう。
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    投稿日:2023.03.01

  • ま鴨

    ま鴨

    このレビューはネタバレを含みます

    連邦CEOマイナ・グラッドストーンが転移ゲートを破壊して<テクノコア>との接触を断ってから約300年。転移ゲートを使えなくなった人類社会は大混乱に陥り連邦は崩壊、その隙を縫って宗教勢力<パクス>が人類を牛耳る一大勢力を築いていた。
    惑星ハイペリオンで暮らす青年ロール・エンディミオンは、横暴なパクスの神父の逆鱗に触れて死罪の判決をくだされるが、ある老人に窮地を救われる。禁制のアンドロイドに見守られながら密かに生きるその老人こそ、かつて<時間の墓標>への巡礼の一員としてシュライクに相見え、その後一大叙事詩「詩編」をまとめた詩人マーティン・サイリーナスだった。
    サイリーナスはエンディミオンに対し、死罪から救ったことと引き換えにある依頼をする。それは、まもなく<時間の墓標>から時を超えて現れる12歳の少女・アイネイアーをパクスの手から救い出し、彼女を守りながら、どこにあるかも判らない伝説的な惑星・地球へと連れて行くこと。気が遠くなりそうな難題を突きつけられたエンディミオンに渡されたのは、かつて領事が使用していた連邦時代の古い宇宙船、同じく領事が使用していた空飛ぶホーキング絨毯、彼に同行するアンドロイドのベティックのみ。そのとき既に、パクスは少女一人を捕まえるためだけに、フェデリコ・デ・ソヤ神父大佐率いる一大艦隊を派遣し、惑星ハイペリオンを、そして<時間の墓標>を包囲していた。パクスの大包囲網をどのように搔い潜り、アイネイアーを確保するのか?そしてどのように地球へと辿り着くのか?エンディミオンの絶望的な戦いが始まる・・・

    「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」の続編に当たる作品。「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」で描かれた顛末は、この世界ではサイリーナスが発表した「詩編」として広く知られており、登場人物たちもみんなその内容を熟知していて、その前提で話が進みます。前2作で登場したキャラやガジェットも説明なしでわんさか登場するので、前2作を読了していることは必須!

    で、読んだ感想。
    やばいわこれー。前2作より面白いわーー。
    前2作「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」も、鴨的にはジャンルSFの枠を超えた超絶エンターテインメント作品として最高に楽しい読書体験をさせてもらった傑作だと思っております。複数の主人公、複数の舞台、壮大な思想に支えられた前2作に比べると、「エンディミオン」はスケール感的には結構小振りです。ストーリーは一言でいうと「追いかけっこ」、逃げるエンディミオン&アイネイアーとそれを追いかけるデ・ソヤ神父大佐の描写が交互に登場する、極めてシンプルな構成です。
    そんなシンプルな作品ではあるのですが、描かれる舞台設定、そしてキャラクターの魅力と言ったら!主人公のエンディミオンは、ヒーローの位置づけにありながらもかーなり自虐的で情けない、つまり読者が親近感を覚えることが出来る「その辺にいるフツーのお兄ちゃん」。それに対してヒロインのアイネイアーは弱冠12歳でありながら強烈なカリスマ性があり、その出自にも依りますが謎めいた神秘性を有するキャラとして描かれています。この二人のバランス感覚が絶妙で、読者はエンディミオンと一緒にアイネイアーに振り回されるドライブ感を味わえますヽ( ´ー`)ノ
    それに加えて、敵役たるデ・ソヤ神父大佐!パクス有数の戦士でありながら、常に内省的で状況を冷静に見据え、部下たちへの気配りも欠かさない、たいへんに魅力的な人物として描かれています。ラストシーンのデ・ソヤ神父大佐の振る舞いには、敵役ならではの崇高なカッコ良さを感じました。続編にも登場するようなので、次回はどんな活躍を見せてくれるのか、とても楽しみです。

    そして、前2作にも引けを取らない、情景描写の圧倒的な美しさ。
    パクス燬光艦の猛攻撃を受け、漆黒の宇宙空間を背景に真っ赤に燃え盛るアウスターの軌道森林。
    学園都市エンディミオンの町並みを照らす、ハイペリオンの夕陽。
    ルネッサンス・ベクトルに遺された転移ゲート目指して突き進む宇宙船と、それをめがけて降り注ぐタイトビームの爆発的な眩しさ。
    月夜の海の上を静かに疾走するホーキング絨毯、その先に浮かび上がる海上要塞。
    ソル・ドラコニ・セプテムの凍てつく地中空間、その中で生きるチチャタクたちの英知と勇気。
    ゴッズ・グローブに現れた女怪と<シュライク>の秒速の戦闘描写。
    どんだけ「見せ場」を作れば気が済むのかダン・シモンズ!と言いたくなる、映像化して欲しいシーンがてんこ盛り。鴨の持論、「絵になるSF」は良いSFです。ぜひ前2作と合わせて映画化して欲しい!めっちゃ長編になっちゃうと思いますけど!!

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    投稿日:2018.06.27

  • paraparayomu

    paraparayomu

    新刊の単行本でも買いたくなる面白さ
    表紙   7点生籟 範義   酒井 昭伸訳
    展開   8点1996年著作
    文章   8点
    内容 810点
    合計 833点

    投稿日:2017.05.17

  • dnwtkys

    dnwtkys

    ハイペリオンからの続編。恋愛要素が入ってくるので苦手な人もいるかも。冒険色が強くなり、常に逃亡者、ハラハラする。

    投稿日:2011.02.07

  • 剣竜

    剣竜

     エンディミオン下巻。
     ヒロインであるアイネイアーが個性的ですね。
     ハイペリオンシリーズでは恐怖の対象だった「あれ」の意外な登場が熱い!

    投稿日:2010.11.14

  • 北の将軍様

    北の将軍様

    エンディミオンはアイネイアーに振り回されてばかり。どうやらアイネイアーは選ばれし者のよう。アイネイアーには不思議な能力があった。

    投稿日:2006.02.06

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