【感想】グラン・ヴァカンス 廃園の天使I

飛浩隆 / ハヤカワ文庫JA
(73件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
32
19
10
1
1
  • キーワードは「残酷」

    アミューズメントとしての仮想空間や、そこで来訪する客をもてなすNPC(ここでいうAI)たち……というモチーフは、確かにSF世界観としていまや新鮮味が薄いかもしれません。
    でも、声を大にして言える。
    んなことに拘るのは馬鹿馬鹿しいほど、圧倒的な魅力の溢れる作品だと。

    正体不明の〈蜘蛛〉は強靭で、〈夏の区界〉AIたちはみるみるなぎ倒されていきます。
    それも酷く残虐な方法で。
    そして物語が進むにつれ、〈夏の区界〉そのものがゲストたちの厭らしい欲望をぶつけられてきた歪な世界だと判明します。
    思わずぎょっとするようなグロテスクな展開も多いです。
    でも読後感はとても爽やか。
    あとがきに「ただ、清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。」とある通り、文章も端正でとても美しい。
    だからなのか、SFというジャンルでも、世界観の把握はスムーズにできます。
    仮に「SFって何だか苦手」という理由だけでこのタイトルを敬遠しているとしたら、それはとてももったいない。
    この一冊だけでは謎はすべて解けません。
    シリーズ続編である「空の園丁(仮)」が心底待ち遠しいです。
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    投稿日:2014.04.05

  • 美しくも残酷でエロテックな物語

    とにかく残酷な話である。話がはじまってから物語の舞台となる「鉱泉ホテル」に主人公たちが集う前半までに何千、何万という人々が死んでしまう。ここまでに主要メンバの知合いや家族が実にあっさりと殺される。で、ここからが逆に主要メンバが時間をかけてじわり、じわりとなぶり殺されるのだがスプラッタかというとそんな事はなく、むしろ鮮やかな日本刀で断ち切るような殺され方をする、そして鮮血の赤。苦痛と快楽。。。。最初は作者が何故ここまで執拗にこの大虐殺(ジェノサイド)を描いていくのかがわからなかったのですが、物語の進むにつれておぼろげに見えてくる、がそれも「夏の区界」の消滅とともに物語りも終焉を迎えるので結局のところはっきりとはわからず終い、またたくさんの謎が提示されたまま終わってしまう。

    その点では、この物語は完結していません。続きは作者が他の区画を舞台にした物語や「夏の区界」の前日譚を用意して「廃園の天使」シリーズを書き綴っていくらしいのでそれを待つことになります。

    ただ、非常に無駄のない文章で美しくも残酷でエロテックなこの物語、一読の価値あり。
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    投稿日:2013.11.15

ブクログレビュー

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  • ぬたろう

    ぬたろう

    理系ではない頭では設定に理解がついていかない部分はあるけれど、それにしても面白かった。
    登場人物はAIであり、グロテスクで救いのない場面が続くけれど、無機質ではない。むしろ、情や執着や羞恥心のような人間味と、生きていることの切なさのようなものがある。もっと雑にいえば、なんだかよくわからないけれど、切ない。
    なんだかよくわからないというのは、設定やストーリーではなく、読み終わった後の感情がうまく形容できないという意味である。その、「なんだかよくわからない」を受け入れられる人にはこの本をお勧めしたい。
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    投稿日:2024.02.25

  • ケンシロウ

    ケンシロウ

    このレビューはネタバレを含みます

    読み終わりたくなかった…読み終わってしまった…。
    「零號琴」が面白かったのでこちらも、と手を伸ばしたのだけれど凄まじかった。2章のアンヌの登場あたりから面白さがどんどん加速していく。徹底した、容赦のない残酷さ。無慈悲さ。全編とおして、それこそ「天使」みたいな無機質さと美しさを感じる文章。
    美しい永遠の夏の区界。表向きのコンセプトは「古めかしく不便な街で過ごす夏のバカンス」だけど、それは「踏みにじられる為のイノセンス、無垢」という意味合いも内包していて、その成り立ちからしてもう、この区界そのものが残忍さと美しさの集積で出来ている。 
    「零號琴」のときもそうだったけど、本作も一見美しく豊かな世界観の裏には幾重もの秘密と時間のレイヤーが埋まっていて、読み進めることはそれらを暴く作業になる。つらいんだけど、物語が進むのが面白くてやめられない。個人的にアンヌが好きなのでアンヌのところが辛かったな。ジョゼも可哀想だった。貧しい農夫と刺繍妻の話は本当に怖かったし。
    とにかく続きが楽しみ。

    ⚫︎あらすじ
    仮想リゾート〈数値海岸〉の一区画〈夏の区界〉。南欧の港町を模したそこでは、ゲストである人間の訪問が途絶えてから1000年、取り残されたAIたちが永遠に続く夏を過ごしていた。だが、それは突如として終焉のときを迎える。謎の存在〈蜘蛛〉の大群が、街のすべてを無化しはじめたのだ。わずかに生き残ったAIたちの、絶望にみちた一夜の攻防戦が幕を開ける――仮想と現実の闘争を描く〈廃園の天使〉シリーズ第1作。
    (ハヤカワオンラインより引用)

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    投稿日:2024.02.08

  • 瀀

    瀀

    これほどまでに文章だけで人を惹きつけることができるのか、と思った。どこまでも残酷で、救いがない。「作られた」存在であるAI。だがそこに確かに感情は存在している、心はある。例えそれすらも最初から規定されていたものだとしても。読めば読むほど苦しくなるのに読むのをやめられない。かけ離れているように思える残酷さと美しさが共存していた。そのアンバランスで脆く壊れそうな、高度の低い宝石のような美しさが好きだった。続きを読む

    投稿日:2023.11.03

  • ふりら

    ふりら

    私は何を読んだんだろう。
    何度も読むのやめようかと思いながら読み進めて、半分を過ぎてからは一気に駆け抜けた。
    めちゃくちゃにグロくて、気持ち悪いけど、けどなんだろう。
    よくわからない。

    投稿日:2023.07.21

  • すーも

    すーも

    全体の辻褄の合い方が心地よかった。
    グロさ、官能、残酷さ、優しさ、諸々の要素が絡み合った、AIながら人間味あふれる描写が魅力的だった。
    描写が丁寧なためか、感情移入して辛い場面が多かった。酷く痛々しく、醜い。
    ありふれた設定かもしれない。それでも引き込まれる強さがあった。

    ど好みではない。
    続きは読みたいと思う。
    続きを読む

    投稿日:2023.06.07

  • kaaazunoko

    kaaazunoko

    人の訪れることのなくなったリゾート地での一夜の攻防戦。設定はむずかしいものではなく読みやすい、けど耽美でありエログロでありすごくそそられる世界でした。

    投稿日:2023.01.04

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