【感想】永遠の森 博物館惑星

菅 浩江 / ハヤカワ文庫JA
(79件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
18
31
17
6
0
  • 技術は進歩しても……

    惑星丸ごと博物館!という小さな惑星を舞台に、学芸員・田代の悩める毎日を描いた連作短編集。脳外科手術を受けた「直接接続者」である田代は、専用のデータベースコンピュータを呼び出すことで、頭に浮かんだイメージをそのまま検索にかけることができます。キーボードやタッチパネルがいらないのはもちろんですが、声を発する必要さえありません。スマホで音声検索、なんてのは今でもありますが、本作に出てくる技術はそれよりもずっと高度です。
    しかし、直接接続者なら仕事もサクサク進むというわけではないようで……。各部門の調停作業に追われたり、面倒事を押しつけられたりと、田代は基本、損な役回りばかりです(そこが愛しく思えたりするのですが)。技術がどれだけ進んでも、人がやらなきゃいけないことってあるんだろうなあ、としみじみ思いました。
    全体的に会話が面白く、外国人のジョークなんかも非常にリアルに感じました(ユーモアと「寒い」の境界線!)。収録されている9編はどれも好きなのですが、特に印象的だったのは「夏衣の雪」と「抱擁」です。
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    投稿日:2015.01.20

  • 久々に再読

    人と芸術(美)との向き合いについて、様々な角度から描き出された連作。 私のような中年男が読むには少々センチメンタルに過ぎる感はあるけれど、初読から十数年が経過した今でも面白く読めた。
    また、人とデータベースとの付き合い方に関する描写は秀逸で、現在のネット依存に通じるものがあったりする。 特に、最新ファームの活用に優越感を持ち、旧バージョン利用者を蔑視するキャラクターなど、やたらに情弱を連呼する輩にそっくりなので、そういった向きにも是非読んで欲しい(笑)続きを読む

    投稿日:2013.11.26

  • こんな博物館があれば、行ってみたい。

    未来の博物館の物語。

    人間の知識や芸術、文化を納めるために、小惑星に造られた博物館。
    そこで働く学芸員と、美術品を取り巻く騒動が描かれています。
    名無しの人形に隠された悲しい過去、「絵」から聞こえる歌、海に溶けて消える人魚。

    芸術と心をめぐる、とても穏やかで優しい物語です。
    SFは苦手という方にもぜひ読んでほしい一冊です。
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    投稿日:2015.02.15

ブクログレビュー

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  • みつき

    みつき

    連作集。ネット上にあふれるさかしらな言説を振りかざす方達も、もともとはその対象に純粋な気持ちで関心を持ったはず。学ぶことは大切だし、データベースを充実させていくことも大事だけれども、それらはなんのためのものなのかを忘れてはいけないと感じさせられました。続きを読む

    投稿日:2022.09.20

  • ぴやん

    ぴやん

    終始きれいな穏やかな物語だった!

    SFだと聞いて読み進め、あれ?ミステリ要素強め??とちょっと戸惑いました。
    切羽詰まった感じはなく、日常系のような優しい物語が続きます。

    美しい風景がほわ~んと頭に浮かんでくる素敵な小説です。

    感嘆詞として形容詞を使っちゃう美和子さん、わたしも同じタイプなのでよくわかります。美術館に行くのは好きだけど、作品たちから何を感じとればいいの!?少し焦る感覚もありました。そんな気を張らずにもっと心から作品に身を委ねるだけで良かったのか〜と感じました。
    もう何年も美術館に行けてないけど、また落ち着いたら行きたいなあ〜
    続きを読む

    投稿日:2022.05.29

  • ジート

    ジート

    データベースコンピューターの名前がかっこいい。どの話も紆余曲折あるけど、登場人物たちがみんなあまり不幸せにはならないように終わってるところがいい。登場する様々な学問分野の話が物語の説得力とか奥行とかを増させてて、著者の頭の良さがうかがえる。ベストSFなのも納得続きを読む

    投稿日:2021.08.22

  • mich

    mich

    地球の衛星軌道上に浮かぶ人工惑星。そこは地球のあらゆる芸術品を収容する巨大博物館<アフロディーテ>。主人公の田代孝弘はこの博物館で働くいち学芸員。脳外科手術により、芸術に関する膨大な知識を集積したデータベースに直接接続することができる学芸員は、そのテクノロジーを駆使して収容される芸術品の価値を確かめ、その意義を問う。ただし、田代孝弘が所属する総合管轄部署<アポロン>は、専門部署間の調整役が主な仕事であり、彼は常に厄介ごとに巻き込まれるのだが…

    うーん、なんともロマンチックな連作短篇集。
    それぞれ扱われる芸術作品に主眼を置きつつも、それを取り巻く人間模様がメイン。SF的バックグラウンドもしっかりしており、雄大な自然を有するアフロディーテの描写も相まって、本当にこんな博物館があればいいのにな、と切望してしまったり…

    そもそも設定がおもしろいですね。芸術とSFを結び付けた作品はたぶん探せばいくつも出てくるのでしょうが、ひとつの惑星がまるまる博物館で、そこに収容される芸術品をめぐって学芸員がドタバタさせられるというのは、なんとも微笑ましい限り。というのも、よく読むSF小説は、異星人と接触したり、タイムトラベルしたり、地球に危機が訪れたりと、どれも穏やかではないからです。本書は日常系SFみたいな感じで、ゆったりと読み進めることができました。
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    投稿日:2021.05.18

  • らぴす

    らぴす

    面白くないわけではないものの、今ひとつ入り込めず、途切れ途切れに読んで、かなり時間がかかったかど、最後の3作は一気に読んだ。

    入り込めなかったのは、あまりに設定が人工的、技巧的というか、細部まで作り込まれていて、この世界のルール、常識が判らない身には、書かれていない部分をを想像できない、受け身でしか読めない感が強かったからと思う。

    後半はもう少し人の内面に踏み込んだ話になってきたので、読みやすかったのかな。

    まあ、綺麗なSFではある。
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    投稿日:2021.05.02

  • mieux

    mieux

    2,3作目を読んで懐かしくなって書棚から引っ張り出した。初読時、DBと直接接続して検索するという設定に魅かれ、今でも自分がネット検索する時に(Googleでも)"ムネーモシュネーと対話している”と思うことがある。でもずっと接続している描写が続いていると思っていたのに、再読してみると、孝弘が持ち込まれる難題に振り回されている描写の方が多く、働き盛りの若手が悩みを抱えながら成長している姿が印象に残った。解説によると本作は足掛け6年の連作ということだが、描かれている博物館惑星の美にあふれた姿、働く人々はブレがなく一貫しており、物語としても見事に展開し結末へと向かっている。自分の本棚の中にこんな素敵な小宇宙があったのだなと再確認。3作目まで読了した今、19年かけて完結した物語の全容を見てもみごとな一大叙事詩となっていると思う。なお本作は2001年にベストSF2000国内篇第1位、星雲賞・国内長編部門及び日本推理作家協会賞・長編並びに連作短編集部門を受賞。続きを読む

    投稿日:2021.03.27

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