【感想】コロロギ岳から木星トロヤへ

小川一水 / ハヤカワ文庫JA
(66件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
4
35
18
2
1
  • ライトな本格SF

    2014/07/19 第45回星雲賞、日本長編部門受賞作。ということで早速。
    書店でこの作者の本はよく見かけ、装丁からハードSFを想像していた。ところが、この作品は、ライトな感じの、ちょいと前に読んだ野尻抱介とも似た、ユーモアあふれる読みやすい作風。しかも最近マイブームの時間ものと来れば、読まないわけにはいかん。短めのボリュームも手伝って、通勤2日で読破してしまった。

    物語は、4次元の世界に生きる謎の生物?カイアクが、「泉」の中で「楔」に引っかかってスタック。200年の時と木星近く小惑星と北アルプスとにまたがって動けなくなってしまい、動けなくなった「尾」の解放のため主人公たちに協力を求める。

    トンデモない設定の異種文明(文明、ですらないけど)、地球の危機にもかかわらず、そんなこと知ったことかとばかりに登場人物たちは、未来の少年2人組に妄想を働かせてるし、未来へのメッセージはモナリザの裏への落書き。どう考えても深刻な話のはずなのに、最後まで楽しく読まされる。
    その一方、時間パラドックスを避けるための「手続き」の必要性、可能性の収束による世界の(主観的な)変動など、読み応えのあるSFでもあり、読み応えもある。星雲賞受賞も納得。

    もう少し、この人の作品を読んでみようかな。実は35回、37回の星雲賞も受賞している、思いっきり実力者であるみたいだし。
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    投稿日:2014.07.23

  • サクッと読めて本格SF

    西暦2231年の木星前方トロヤ群の小惑星アキレスと、西暦2014年の北アルプス・コロロギ岳山頂観測所。二つの時空と時間が、時の泉に住まうカイアクによって結ばれる。軽いテイストの本格SF。次元の違う世界に生きる生物との会話と意思疎通や、217年先の未来で、放置された宇宙戦艦に忍び込み閉じ込められたリュセージとワランキを助ける為に奔走する天文学者・百葉。サクサク読めるけれど、ストーリーには齟齬がなく緻密。ラストの展開も良く、読了感もほっこり満足の一冊。腐女子の同志も見つかって良かったねモモハ…。続きを読む

    投稿日:2015.07.11

  • きっと映像化には向かない・・・と思います。

    派手な戦闘やメカ、魔法がバンバン、っていうようなSFばかりではないのです。やさしい感じを受ける当作。 過去と未来のシーンの転換などは、”文章”で読むのが一番なのではと思います。 映像だとわからないのだろうな・・・と私は思うわけです(それを超えていく映像こそがすごいのですが^^;)。
    余談:「天冥~」を読んでいる方向けの話ですが、プロローブでの「カイアク」の件は「ノルルスカインの事かぁ?」とつい思ってしまいました。
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    投稿日:2013.11.24

  • 異色のワンアイデア時間SF

    本来なら時間と空間の壁に隔てられて意思疎通が図れない者同士が、4次元という更に異質な世界に生きる存在を介してコミュニケーションを取るという謂わばワンアイデアSF。世界観よりもストーリー重視でライトに読める。最後に迎える大団円は、予定調和ではあるが、天冥の標シリーズには無い爽快感がある。帯に書いてある通り確かに一息つくには良い作品。続きを読む

    投稿日:2013.11.15

  • 絡み合う3つの時空それぞれに味わいがありました

    多次元宇宙を人間の認識できる3次元で切り取る話は偶に見かけるけれど、異次元の知的生命体の視点を取り入れることで俄然おもしろくなったのだと思う。さらにそいつが空気読めないドジっ娘で少年たちが危機に陥るという、はた迷惑なお話。満喫しました。続きを読む

    投稿日:2014.07.23

  • 次元時間論は難解だが、ファンタジー要素溢れる読みやすい時空SF

    まともに次元とか時間の理論をつきつめるというよりも、想像力をフル発揮させて、現代、未来、別次元の3つの世界の世界観を楽しむという読み方が合ってるように思う。時間とか空間を超越した生命と人間のファーストコンタクトは成り立つのか?ここに興味をもったなら、買いです。基本的には読みやすく、ファンタジー要素溢れる本なので堅苦しいことは考えないでサラっと楽しむ面白い本。だいたい3時間前後くらいで読破できます。続きを読む

    投稿日:2014.09.24

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ブクログレビュー

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  • imemuy

    imemuy

    空間を移動する我々と違って時間を移動する存在、そんな概念の生命体という設定だけで楽しかった。細かいところを考え出すと矛盾はあるのかもしれないけど、2014年と2300年が繋がるのをポップに楽しく読ませられるのって文章力と発想がすごい。
    お姉様方がキャッキャウフフしてるだけでボーイミーツガール的な関係にならない(一方的な文字だけで顔は合わせてない)のも小川一水にしては珍しかった さすがに顔を合わせる策は思いつかなかったのかしら
    続きを読む

    投稿日:2024.08.05

  • 黒い☆安息日

    黒い☆安息日

    このレビューはネタバレを含みます

    2231年、廃棄された宇宙戦艦に閉じ込められた少年2人を救うため、北アルプスにある太陽観測所に落ちてきた紫蘇漬大根のような時空をまたぐ生命体を通じてコンタクトをとる2014年の観測所員。

    設定のハードな部分は読み飛ばしてもOK(俺もなんとなく分かってないような分からんようなで読んでいた)、時空間の上下流を行き来できる大根生物なんだから、色々やり直しできたりはするわけで、その辺のトリックと2つの舞台のコミカルなやりとりを楽しめる。

    腐女子やりとりな余禄もよし。オタク妄想が世界を救うって設定は嫌いじゃない。

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    投稿日:2023.01.29

  • syiki

    syiki

    現代の日本アルプスと、23世紀の木星。時も場所も違う2つの世界にまたがって出現した、なぞの生物。
    「尾っぽの方が23世紀の木星に挟まって動けない」と現代に現れた頭の部分がのたまって・・・。
    とにかくその生物を解放しようと、日本と木星にそれぞれ居合わせた女性と少年が試行錯誤の交流を図るお話。
    今やったことが、未来を変える。この、当たり前だけど実感できない事実を、平面にして見せてくれる。
    続きを読む

    投稿日:2020.04.24

  • 魚雷屋あすりん

    魚雷屋あすりん

    #日本SF読者クラブ 「コオロギ岳」ではない。「木星前方トロヤ群」がわかなくても大丈夫です。時間SFなんだけど、難しい理屈は無視して(?)スラスラと読むこと。新型コロナ疲れの頭には、一服の清涼剤となるでしょう。
    コミカルな「時砂の王」という例えもあったが、言いえて妙です。作者が「天冥の標」の執筆の合間に書いた作品である
    続きを読む

    投稿日:2020.04.14

  • harusuke99

    harusuke99

    新年早々続けて小川一水。
    「風の邦、星の渚」はSF要素薄めだったけど、こちらはSF要素満載。
    なんと言ってもみんな大好き時間SF。
    ずっとわくわく、にこにこしながら読めてたし、オチもきれいに決まって文句なし。
    小川一水にハズレ無し!
    続きを読む

    投稿日:2020.01.05

  • 古泉智浩

    古泉智浩

    このレビューはネタバレを含みます

     夏はSFが読みたい気分で、以前読んだ『天涯の砦』がめちゃくちゃ面白かったので選ぶ。話が難しい時間SFであり、未知との遭遇でもある。未来の少年二人が読んでいてどっちがどっちかよくイメージできない。最期は感動的だった。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2019.09.05

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