【感想】老ヴォールの惑星

小川一水 / ハヤカワ文庫JA
(94件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
41
30
16
2
0
  • 良質なSFを堪能できる中短編集

    SF好きには、たまらない中短編集だ。全体的にあまり明るい話がないのだが、登場人物がかなり前向きで読んでいて元気がもらえる。またSFのガジェットをさりげなくしかもうまく使われているので物語の邪魔にならない。それだけ話に集中できる。あと軽い文章ではないのだけれど、非常に読みやすい。

    表題作の「老ヴォールの惑星」以下、「ギャルナフカの迷宮」、「幸せになる箱庭」、「漂った男」の全4編を収録している。

    「ギャルナフカの迷宮」は、最初は陰惨な話なのだが人間は社会の動物だということを示す、実験的な話になっている。
    「老ヴォールの惑星」と「幸せになる箱庭」はファースト・コンタクトものだが異星体と人間のそれぞれの視点から描かれていて、同じコンタクトものでもアプローチの仕方でこんなにも違った面白さが出せるのかと感心した。
    「漂った男」は、未知の惑星で遭難した男の話で主人公は悲惨な運命を辿ってしまうのだが、この設定でよくここまで物語を作れるなあとこれまた感心した話。この作品は第37回星雲賞の日本短編部門受賞している。

    とにかくサクッと読めてSFを堪能したい方にはオススメの中短編集だ。
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    投稿日:2013.11.15

  • とてもSFらしいSF

    4編収録の作品集ですが、どれも「これぞSF!」と実感できる本格SF作品となっています。
    陸地のない星や大型の知性体(表紙で飛んでいるやつ)といったモチーフもいいし、それを硬質な文体で描ききる筆力も確かなものです。途中で「女性に夢を見すぎているんじゃ?」と思うような記述があり、そこは少々気になりましたが……。
    驚いたのは、人間以外の生物を主役に据えて、これほど完成度の高い物語を紡ぎ上げてしまう著者の力量です。SFというジャンルの果てしない可能性を感じさせてくれる一冊でした。
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    投稿日:2013.11.20

  • これほど贅沢な短篇集は見たことがない。

    収録された4篇がそろいもそろって傑作。
    これほど贅沢な短編集は見たことがない。

    投稿日:2013.12.30

ブクログレビュー

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  • hocca

    hocca

    迷宮の話、面白かった。
    社会の形と不完全さが描かれている。隣人無くして生きてはいけないという内容は共感する。

    投稿日:2023.11.30

  • 秋待

    秋待

     オススメして頂いて読みましたが、面白かった……!
     環境が「生物」に与える影響や変化をテーマにしたSF短編四作。いずれも完成度が高く、設定の斬新さ・科学的説得力・ストーリーテリングの全てが高水準。そして皮肉を残しながらも爽やかなハッピーエンドというのがとても素敵///
     四編のどれもとても楽しめましたが、個人的には表題作「老ヴォールの惑星」と、「漂った男」の二編が特に好みでした。
     前者はヒトとは異なる生命体の目線での異星間交信への挑戦という設定が興味深く、また、スケール感のある惑星の設定に驚嘆させられます。想像力が全く追いつかないけれど、青一面の世界に群れを成す「生命体」をぼんやりと思い浮かべれば、実に神秘的でわくわくしました。
     後者は絶望的な状況にもかかわらず、どこかコメディのようなやりとりが面白く、妙なリアルさが怖くもあります。そして終盤の力強い書きぶり……! ラスト一行で感嘆が漏れました。
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    投稿日:2023.11.03

  • 坂本一馬之介

    坂本一馬之介

    このレビューはネタバレを含みます

    ・ギャルナフカの迷宮
    ・老ヴォールの惑星
    ・幸せになる箱庭
    ・漂った男
    の4編からなる短編集

    いい意味でも悪い意味でも、
    隔絶された世界でどう生きるのか
    ということを描いた作品群と感じた。

    『ギャルナフカの迷宮』
    地下迷宮に幽閉された人々、1人1つの地図を渡され、食糧と水のありかが書かれている。他の人と地図を奪い合うのか、それとも手を取り合って生きていくのか。

    『老ヴォールの惑星』
    とある惑星に棲む宇宙人が、近い将来隕石が衝突し惑星が滅亡することが判明する。他の惑星に生命体がいることを信じて、発信を続けていく。

    『幸せになる箱庭』
    宇宙のプロフェッショナルの数名の人類が、とある惑星へ向かい、その惑星の調査を行う話。

    『漂った男』
    とある惑星に不時着をする1人の男。その惑星には陸がなく、全てが水だった。
    あまりに広大すぎる水しかない惑星には、目印となるものもなく救助が困難であった。
    しかし、その水には多分に栄養があり、それを飲むだけで生きることができる状態で、ただひたすらに救助を待ち続ける。


    SFにハマるキッカケとなった作品。
    と、将来思うと感じるほどにSFの魅力が詰まっていた。

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    投稿日:2023.10.19

  • ミイ

    ミイ

    このレビューはネタバレを含みます

    これは面白い。極限状況におかれた孤独な者が、他者とのつながりを見いだして懸命に生きようとする、そんなシチュエーションの短編集4編。

    「ギャルナフカの迷宮」:政治犯として捕まった主人公が地下迷宮に放り込まれる。わずかな食糧と水、迷宮の地図の一部だけを頼りに脱出を試みるが、迷宮の中には「生肉喰い」がいて...
    極限状況での孤独なサバイバルのはずが、少しずつ様相が変わっていくところにグイグイ引き込まれる。

    「老ヴォールの惑星」:超臨海水の海面が支配する世界のお話。天変地異をきっかけに惑星外交信を夢見るが...
    感動的な展開が待っている。

    「漂った男」:8億平方キロの海原しかない惑星パラーザに遭難した男の物語。遭難ではあるが極めて安全で生命の危険は無し、故郷への帰還は絶望的で音信だけは使える、という特殊設定。遭難したタテルマ少尉を音信で励ますタワリ中尉の存在が泣かせる。そして劇的な展開が待っている。

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    投稿日:2023.05.02

  • ま鴨

    ま鴨

    良いですねー。社会科学的な観点も含めて、本寸法のハードSFですね。

    「環境による意識の変容」を共通のテーマとした4篇を収録。といってもそれぞれの作品に繋がりはなく、テイストも様々で、同じ素材を様々な手法で調理したコース料理を味わった感覚です。なかなか贅沢。

    あまりSFを読み慣れていない人が「SF」と聞いて想起するイメージをそのまま作品にしたような、無駄なく引き締まった端正なハードSF揃い。冒頭の「ギャルナフカの迷宮」はSFの「S」風味薄めですが、社会科学系SFと言えますし、普段SFを読まない人にもお勧めできる、文句なしの傑作。
    明るい結末の話ばかり、ではありません。暗い未来が待ち受けている不穏な雰囲気を漂わせたまま幕を閉じる作品もあります。それでも、登場人物たちが(時には悲壮な決意混じりながらも)共に協力し合い、前向きな勇気を持ち続けていることが、爽やかな読後感を残します。ちょっと理想的過ぎやしないか、と思うところも、正直ありますけどね(^_^; SFだもん、これぐらいキレイでも良いじゃないか!

    小川一水氏の作品は、これまでアンソロジー収録の短編をいくつか読んだことがあるのですが、実はその「理想的過ぎる」ところが少々鼻についてしまい、あまり楽しめなかったのでした。この作品集に納められている短編群は、バランス感覚が絶妙で鴨的にもとても楽しく読むことができました。他の作品も、機会があればチャレンジしてみたいと思います。
    続きを読む

    投稿日:2022.11.02

  • pbh23864

    pbh23864

    ガッツリSF。
    初めて読む人は中々ページが進まないことだろう。
    個人的には最初と最後の作品が好きだ。

    投稿日:2022.09.09

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