錦繍

宮本輝 / 新潮社
(342件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
110
107
78
7
2
  • 美しい文語体、クラシカルな書簡体小説

    メールもSNSも、遠い遠い未来だった昭和の中の物語。だからこそ、人は一語一語に思いを込めて文を綴り、そのやりとりが正に物語を紡いでゆく。
    フィクションではあるけれど、登場する二人の男女の年齢をとうに越えている小生が感じることは、「何て大人なんだ!」(笑)。
    人が生きるとは、男と女とは、読むたびに考えさせられ、励まされる、そんなマイベスト本の一冊です。秋の夜長に、是非!
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    投稿日:2015.09.27

ブクログレビュー

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  • まんぷく

    まんぷく

    「業」と「情」。この厄介な難物をしなやかに、たおやかに筆で描いた作品に痺れた。

    人が人に心を惹かれる様が言葉で紡がれる。好きや嫌いだとか、愛や恋などという言葉を使わずして、心のひだに挟まった小さな想いの積み重なり。或いは言葉や理屈では表現できない、人への衝動的な吸引のようなものが匂い立つ言葉で重ねられる。

    人の心に潜んでいる、普段あまり光を当てられない微細な感覚や感情を芳醇な表現で、照らし出してくれる感覚とでも言えるかな。決して綺麗ごとが連ねられた作品ではないが、そこに豊かさを感じられた。

    離別した男女間の往復書簡という若干旧式の展開に、なかなか手を出せずにいたが、出会えて本当に良かった作品のひとつ。

    登場する人物たちそれぞれの生まれ育ち。異なるバックグラウンドを持った人々の邂逅と離別。恵まれない家庭環境に生れ落ちた人間が、欠損のようなものを抱えながら必死にもがく様。一見何の困りごともないように豊かさの中で育った人間が感じる物足りなさや負い目。それらが交錯し、人間の脆い部分を決して露悪趣味ではなく、しかし、忍耐と我慢だけを美徳という形ではなく見せてくれる。


    「流転の海」シリーズの豪放磊落な熊吾をどこかしら感じられる勝沼氏、恵まれない生い立ちの房江を彷彿とさせる幸薄い由加子や令子だなあと読みながら、宮本さんの作品をまた読みたくなった。たのしみ~!
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    投稿日:2019.06.17

  • koyama1026

    koyama1026

    18.10.1

    lily p56
    宮本輝さんに出会ったのは20代の頃、美しい日本語と、描写の美しさ、人間の心の様々な色合いを往復書簡の中で描くとこの物語にわたしは本当に心を奪われ、事あるごとに読み返し、そして毎回、泣く。続きを読む

    投稿日:2019.05.31

  • hidetairan

    hidetairan

    書簡形式でのやりとりのみの小説。
    手紙という文化がない現代にはどう捉えられるか。
    文字数が多くなって読みにくいという人もいるかもしれない。

    しかし、この手紙の中から読み取れることは多いとおもいます。
    過去に事件があり、離れ離れになった2人、過去をどう捉え、どう出発するのか。
    再出発の時、その過去は自分の中にどう残るのか。

    手紙の中でいつからか心の変化が見られ、読んでいて想像力が活性化しました。
    実際に手紙をやりとりしたことがある方々には尚のことわかりやすいかなと思います。

    当の本人たちはこの手紙でしか、相手の状況や心情を察することしかできないから、不便でもあり、神秘的でもあるなと思いました。

    読後は心が洗われる感覚に浸りました。
    どんな状況でも死なない限り人生は続いていきます。
    過去に何があろうと続いていきます。
    結局これからの人生は今からしかないのだから。
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    投稿日:2019.05.28

  • さおりりり

    さおりりり

    読み終わった後、何とも言えない寂しい気持ちになりました。過ぎてみれば、あの時のあの自分の行動や判断が人生の岐路だったりするんですよね。人生まだそんなに生きてないですが、今までしてきた自分の行動や判断を悔やむことはよくあります。だけども、そんな失敗や誤った判断があってこそ、今の自分があるし、成長できることもたくさんありますもんね。本当に人生って、そういうもの、、それを改めて感じた作品でした。続きを読む

    投稿日:2019.05.28

  • yebina

    yebina

    このレビューはネタバレを含みます

    往復書簡だけで人の人生節目の感情の移ろいを描くなんてすごいなと思う一冊。細かな心情の機微を楽しめる人にはオススメ。二回読んだ数少ない本。

    「過去なんて、どうしようもない、過ぎ去った事柄にしか過ぎません。でも厳然と、過去は生きていて、今日の自分を作っている。けれども、過去と未来の間に「今」というものが介在していることを、私もあなたも、すっかり気づかずにいたような気がしてなりません。」

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    投稿日:2019.04.23

  • michy110

    michy110

    日本経済新聞社

    小中大
    記事利用について

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    読書日記女優 南沢奈央(3) 『錦繍』 書簡体が醸し出す空気感
    2019/2/21付日本経済新聞 夕刊

     書店でふと目にした本を買うときもあるけれど、周囲の人にお気に入りを尋ねて、読んでみることが多い。そのチョイスが人生とリンクしているようで興味深い。











     宮本輝さんの『錦繍(きんしゅう)』(新潮文庫)は、映画・ドラマ「赤い糸」へ出演したときにプロデューサーの方にすすめられた一冊だ。「赤い糸」は10代の切ない純愛を描いており、『錦繍』は離婚した男女が10年を経て再会し、手紙のやりとりによって過去をひもとくというラブストーリー。演技の助けになると思って、この本を挙げてくれたのかもしれない。


     とはいえ、大人の恋愛物語のすべてが、当時18歳の自分に理解できたわけではない。私の心を捉えて離さなかったのは、往復書簡体という文体と、それが醸し出す空気感だった。


     手紙は時に一方通行だ。この小説でも、交互に出すとは限らず、女性の長い手紙が連続する場面がある。私は手紙を送り、待つ間を想像する。どんな状況で開封し、読んだのだろうと考える。本文に書かれていないことに思いをはせる、書簡体の美しく豊かな余地を存分に味わう。


     私自身も手紙が好きで、高校時代には友人と文通をしていた。今も旅先から家族に送ることがある。手紙では、普段言えない気持ちを吐露できたり、考えを整理できたりする。読む楽しみより先に、書く面白さに目覚めていた気がする。


     『錦繍』はその後、作品の季節である秋には必ず読み返す小説になった。感じ方がその都度異なる。もっと大人になったらどう思うのか、楽しみでもある。


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    投稿日:2019.04.13

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