【感想】夜と霧の隅で

北杜夫 / 新潮社
(44件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
7
14
17
0
0

ブクログレビュー

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  • すこべえ

    すこべえ

    このレビューはネタバレを含みます

    表題作、名前だけは知っていた。この作品ではないが、読むべき本として北杜夫の名前が上がっていたことから、初めて手に取ってみた。
    表題作と他四つの短編で構成されている。
    最初の、岩尾根にて…は、前半ただひたすら山を登っていく様子が描かれる。そこでちょっとモタモタしてて、なかなか進めてなかったんだけど、後半は1人の男との出会いから、会話が続く。夢幻のようなその出会いは、ふと能の世界にも通じるような気がしてきた。
    事物の描写も大したものだけど、こういった会話でも読ませる作家なのだなと思った。
    どくとるマンボウ、船乗りクプクプあたりはもしかしたら昔読んだことあるかもしれないが、内容は忘れてしまった。なんとなく明るい感じの作家というイメージが残ってたけど、今の歳になって読むべきものがある気がした。他の作品も手に取ってみたい。

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    投稿日:2023.08.04

  • 緑象

    緑象

    どの話も色のない重い世界であった。
    表題作前の他3編、人の奥深い想いが無気味で私には理解できなかった。
    表題作は、ナチスによる安死術などの残酷な事実の背景が狂気で読むのが辛く苦しかった。
    精神病にインシュリンが使用されていた事実にも驚いた。

    重々しい話ではあったが不思議なことにすんなり心に収まり読了できた。
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    投稿日:2023.07.23

  • ラララライブラリ

    ラララライブラリ

    表紙が串田孫一の版で読んだ。最初に収録されている「岩尾根にて」が一番好きだった。自分と相手(と滑落死体)の区別がつかなくなる場面は映像で見たい。
    「夜と霧の隅で」では、精神病患者を助けようとするあまり、体制側と同じ思想(=人間は役に立たないと生きていてはいけない、何とか彼らを役に立つ人間にしなければ)に陥ってしまう医師の姿があわれだった。対照的に、半身不随でほとんど自分では何もできなくなった元院長は、患者たちから絶大な尊敬を集めていた。続きを読む

    投稿日:2022.10.24

  • ka

    ka

    日本語を活字で見ることが好きだ。

    だから基本的には読み始めたものはどんなものでも倍速読みでもとりあえず読み終えようとする。
    だが、今回は、短編にも関わらず、何度も本を置こうとしたくて堪らなくなった。

    一言で言うと不快。
    ナチスによる精神患者の安楽死、その大まかすぎる粗筋のみに依拠して手に取ったことを後悔した。そんな短絡化できない気持ち悪さ。
    物語のプロットをここに書いてもこの作品の気味の悪さ、不愉快さはとてもではないが表しきれない。黒板に爪を立てたような、顔を背けたくなるような軋んだ音に満ちた正常を装った異常さ。

    ナチスの命令に抵抗する医師たちのもがき苦しみ?そんなつまらない文で要約なんてできない。読み手の反発と嫌悪を引き摺り出す歪んだ文章。
    他の作品を読むと同一の作者とは思えない。こんなにも全ての登場人物に共感できない作品は久しぶりだ。

    文章をなぞるだけでは分からない。考えに考えを重ねて、立ち止まってひとつひとつ見つめ直さないとわからない。同時に分かろうとすることで染み込んでくる気持ちの悪い正体を振り払いたくなる衝動に駆られる。分かったと思っても分からない。そんな作品がみちっと詰められた狂気。

    この作品だけでは判断がつかない凄まじい筆力だ。
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    投稿日:2022.09.19

  • tm03

    tm03

    このレビューはネタバレを含みます

    精神障害者は殺処分すべしという極端な命令。抗う術は治療の希望を示すのみ。荒療治で患者を死なせつつも留まらない医師。彼のやり方を悪と同断するのは難しい。

    精神患者に価値なしとの発想は武田泰淳の富士にも


    そのほか、どんよりとした空気の短編が幾つか。

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    投稿日:2022.08.22

  • だい

    だい

    このレビューはネタバレを含みます

     客観的に間違っていることを頑固に信じるのが妄想だ。でも誰だって客観的に生きているわけではない。個人だって国家だって民族だってそうだ。
     
     精神を病むと言うことが深く沈みきること、人間の持つ最も原始的な地場に帰ると言うことになるのかもしれない。

    上記が心に響きました。第二次世界大戦中のドイツの精神病院を舞台に、精神病患者の心や脳に触れようとするものの、触れられない霞がかっているそれは何とも言えない小説でした。

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    投稿日:2022.02.04

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