【感想】細雪(上)

谷崎潤一郎 / 新潮社
(159件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
58
54
25
3
0
  • 憧れの時代。

    ふたつの大戦に挟まれた、近代日本史上もっともハイカラで華やかだった時代の物語。結婚をめぐる四姉妹のお話というとオースティンや若草物語を思い出すけど、日本にもこんな「娘さん文学」があったのですね。
    大きな事件が起こるわけでもないけど、関西弁の会話でまったりはんなり綴られる当時のお嬢さんたちの日常や、昭和モダニズムの魅力的な文化の描写を眺めているだけで愉しくてどんどん読めちゃいます。祖父母の若者時代だと思うとそんなに遠い話でもなく、自分の幼い頃にはまだこんな空気が少し残っていたように思います。続きを読む

    投稿日:2015.09.03

ブクログレビュー

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  • 安美

    安美

    2023.12.29 読了。
    大阪では名の知れた名家、蒔岡家の4姉妹が織り成す日常を綴った長編小説上巻。4人姉妹の三女の雪子の縁談がなかなかまとまらず次女の幸子夫婦は心配し色々と話を持ちかける。


    谷崎潤一郎作品は「春琴抄」しか読んだことがなかったので、そちらに比べるとドタバタと様々なことも起こるが日々を描いた作品なので穏やかな気持ちで読めた。
    作品の大部分は幸子目線で語られている。
    この時代は結婚の順番さえも上からでなければならなかったり、四女の妙子がお金を稼ぐという行為も職業婦人は貧困な家庭のものがやることだったり、上流階級の家では現代と色々異なり大変そうだなぁと感じた。
    現代でもニュースなどで未婚率や子どものいない家庭の多さを話題にするということは、細雪程は格式ばっていないが「結婚することがステイタス」という考え方は未だに続いているのだなと感じた。

    幸子・貞之助夫婦は互いに思いやりがある夫婦で素敵だと感じた。
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    投稿日:2023.12.29

  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    三宅香帆さんの、「ジェイン・オースティン著、イギリス文学の『傲慢と偏見』を読んだ方におすすめする次の本」
    (『人生を狂わす名著50』三宅香帆著 ライツ社 の紹介より)

    新潮文庫は上・中・下のセット。
    「大阪船場に古いのれんを誇る蒔岡家の四人姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子が織りなす人間模様のなかに、昭和十年代の関西の上流社会の生活のありさまを四季折々に描き込んだ絢爛たる小説絵巻。三女の雪子は姉妹のうちで一番の美人なのだが、縁談がまとまらず、三十をすぎていまだに独身でいる。幸子夫婦は心配して奔走するが、無口な雪子はどの男にも賛成せず、月日がたってゆく。

    谷崎潤一郎(1886-1965)
    東京・日本橋生れ。東大国文科中退。在学中より創作を始め、同人雑誌「新思潮」(第二次)を創刊。同誌に発表した「刺青」などの作品が高く評価され作家に。当初は西欧的なスタイルを好んだが、関東大震災を機に関西へ移り住んだこともあって、次第に純日本的なものへの指向を強め、伝統的な日本語による美しい文体を確立するに至る。1949(昭和24)年、文化勲章受章。主な作品に『痴人の愛』『春琴抄』『卍』『細雪』『陰翳礼讃』など。」
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    投稿日:2023.09.26

  • く

    雪子、気持ち分かるぞ…と思いながら読んだ。古典なのでずいぶん読みにくいかと覚悟して読み始めたがそんなことはなく、すらすらと読めてしまうくらいの文章の美しさだった。古典はやっぱり斜め上くらいから眺めて、人物達にああでもないこうでもないと感情移入しながら読むのがとても良いね。続きを読む

    投稿日:2023.06.10

  • とまむ

    とまむ

    「若草物語」を読み終わったところで、そういやこれも四姉妹の話だったなと、本棚の奥にいたのを引っ張り出してきた。
    意外にもさらさら読める。
    何より東京生まれの谷崎が、ここまで関西人の、特に若い女性の趣味や性格を詳細に把握できていたことに驚いた。
    松子夫人というモデルがあるにしても、まるで神の視点を持っているかのようにありありと描き出すのだから不思議だ。
    新潮版は注釈も素晴らしく、昭和初期の感じをこまかく想像できて楽しい。
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    投稿日:2023.06.09

  • あけちゃん

    あけちゃん

    初めての谷崎潤一郎。
    昭和初期から第二次世界大戦勃発前まで、明治時代より続く上流階級の一族が衰退を辿りながらも、その生活様式や価値観を失わず生活する四姉妹の様子が、優雅で実に美しい。
    四姉妹が京都で花見をする場面は、目の前に満開の桜が咲き誇る景色が見えるようで、その文章の美しさに浸ってしまい、文庫の紹介文に書かれていた小説絵巻とは良く言ったものだと感心してしまう。
    結婚話がなかなか決まらない大和撫子を絵に描いたような三女雪子、自由奔放な四女妙子の行方が気になる中巻下巻。
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    投稿日:2023.04.30

  • よっしー

    よっしー

    このレビューはネタバレを含みます

    控えめに言ってこれは日本文学の最高傑作です。谷崎は痴人の愛から入り、春琴抄、鍵、刺青、秘密等の短編など、学生時代に読み漁ってきましたが、この細雪は長いことを理由にずっと見て見ぬ振りをしていました。が、幸いにも仕事上の都合で余暇時間が少しできたので、せっかくなら集中して谷崎の大長編に浸ろうとしたのであります。
    上巻の半分ほどページを捲ったところでしょうか、その頃にはもう谷崎の世界にどっぷりと浸かっており、肝心の仕事が手につかないほど頭を支配されてしまっているのでした。これは文学作品を嗜んでいるとよくあることで、頭が作品世界に引き込まれてしまい、ひどく現実が生きづらいよう感じてしまう、そういう悪魔的な作品がたまにあるものです。この細雪も例に漏れず、ページを捲る手が止まらん、ふとした時には残りのページ数が少なくなっていることに気づき寂しさを覚える、そんな体験を通勤の電車に揺られながらしていたのであります。

    ここからは少々話の中身にも触れてしまうのですが、上巻の半分ほど行ったところのシーンでしたでしょうか、本家の庭の描写をするところがあります。複雑な庭の構成物の細部の描写、隣家との関係等を、登場人物の雪子、幸子と絡めて説明するシーンですが、そこに谷崎の真骨頂を感じ、技術の素晴らしさに胸が締め付けられる思いをいたしました。
    さて、まだ上巻しか読み終わっていないだけの感想文ですが、これからの中、下巻も谷崎の真骨頂であるストーリーの面白さを期待して読み進めていこうと思います。

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    投稿日:2023.01.28

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