【感想】月と蟹

道尾秀介 / 文春文庫
(189件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
25
58
60
22
2
  • 苦い思い出を飲み込んで通り過ぎる夏

    海辺の町に転校してきた少年、慎一と、同時期に転校してきた春也。新しい学校に馴染めず、浮いた存在の2人は次第に打ち解け、秘密の基地で危険な遊びを繰り返すようになります。そこに3人目のクラスメイト、鳴海が加わって・・・
    残酷ならがもワクワクドキドキした前半から、少しずつ歯車が狂い始めて、どうしようもなくなる後半へ。幸せだと思っていた日々が過去のものとなり、読んでいて辛かったけど、しっかりと現実を受け止めて前を向く彼らを応援したくなりました。
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    投稿日:2014.07.18

  • たぶん、私にも似たような記憶があるのかも

    子供の頃って、こんなことをしていたかも。
    子供の頃って、こんな気持ちを抱いて生きていたかも。
    大人が忘れてしまった子供の記憶がいっぱい詰まっていて、それは決して美しくなく甘くなく、きらめいてもいない記憶だと教えてくれる一冊です。
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    投稿日:2014.07.19

  • 試しに、海水をなめてみた時のように、しょっぱい思い出

    なぜ、自分は自分なんだろう?と、漠然とした疑問が心の奥底に、常に潜んでいた小学生の頃。私は、主人公のように「少年」ではないけれど、けがれない瞳に映った世界は、心の泉を良くも悪くも染めて行ってしまい、時には、前後の見境もなく行動を起こしてしまったりする姿などには、既に、忘れかけていた子供時代の「純粋さ」を、思い出させてくれました。
    所々、子供の目線からの比喩、隠喩が鏤められ、傷付きやすいけれど、冒険心に富んだ少年の心模様が、分かりやすい言葉で描かれていると思います。
    冒頭から登場するおじいさんの、孫である少年への愛情は、温かく、そして時には切なく感じられ、読後の印象は、すがすがしさで一杯でした。
    ピュアな物語がお好きな人にお勧めです。
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    投稿日:2014.10.03

ブクログレビュー

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  • しんた

    しんた

    海辺の町で小学生の三人はヤドカリを神様に見立てた願い事遊びを始めるが……。
    大人になるにはこの運命は辛すぎる。
    大人たちの「本当の顔」に気づく時の衝撃度はそれほどではないが、一つの小説として面白い作品と言える。郷愁に吹かれる一作だ。続きを読む

    投稿日:2024.03.12

  • yookanae3

    yookanae3

    まず読後にやったことは、ヤドカリの殻無し画像検索。
    初めて見た。結構グロテスクで、生々しさ、艶かしさ、そして主人公の子供たちならではの残酷性、危うさのシンボルとしてピッタリ。ヤドガミ様とはうまく言ったものだな。

    クライマックスで慎一が身を挺してヤドガミ様への祈りを撤回したのは本人にとっても春也にとっても良かったと思う。
    読者からすると、春也の方が慎一より救いがない状況なんだけど、当事者だとわからないだろうな。

    慎一の母親は同じ女性として理解できる部分もあるけど、人としても母親としても頼りないところがリアル。ただ最後、引っ越して男性と決別することにしたのは慎一にとって救いだったろう。春也とはここが違う。ヤドカリの赤ちゃんを綺麗と言いながら指で潰してしまう春也の哀しみにも胸を締め付けられる。

    昭三というお祖父さんの存在がどれだけ慎一の救いになったか。大人の目線だと、お父さんが亡くなり家族という意味では微妙になってるけど、それでも登場人物で一番印象的だったのは昭三だった。慎一もずっと後、大人なってから気づくんだろう。
    慎一のことも、慎一の母親のことも、全部わかってたんじゃないかな。自分の足も失い、鳴海の母親を死なせたという罪悪感をずっと持ち続けながら生きてきた昭三の哀しみが胸に迫る。

    病院での父親と昭三の姿が被る。ふと遠くを見るような瞬間の描写で、自分の父親の亡くなる間際の様子が思い出された。新聞で自分の持ってる株価のページ見てたりして、私としては他にみたいものは無いのかと少し寂しい気持ちになったけど、今になって、本当にあの時父は新聞を見てたのかと思えた。見てるようても頭に入ってなかったんじゃないか、他に話したいことがあったんじゃないか、と。年を経てわかることも多いね。

    この本を読んで改めて思ったのは子供は大人が思うよりずっと「わかっている」ということ。
    自分の境遇は選べないし、解決もできない。
    もし辛い中にいる子供がいれば、大人になるのも悪くないよ、と伝えたい。
    続きを読む

    投稿日:2023.12.16

  • よこそら

    よこそら

    文庫ではなく、単行本で。

    途中から、引き込まれるようにあっという間に読んでしまった。
    どこか、祈りながら読んでた。

    投稿日:2023.10.07

  • かじとも

    かじとも

    このレビューはネタバレを含みます

    一体、何匹のヤドカリが炙られただろうか。海から取ってきたヤドカリを『ヤドカミ様』として崇め、少年たちは願う。心が『無』になるまでの過程が丁寧に描写されており、かつての言葉にし難い感覚に共感を覚えた。心の廃退とヤドカリの子の成長の対比が印象的。物語の後半~終盤にかけての畳み掛ける疾走感。暗闇の中の月は悲しくも美しかった。

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    投稿日:2023.09.13

  • Takashi

    Takashi

    微妙…最後を期待して読んでたけど別に最後はおどろおどろしいとかびっくりすることはない。でも面白くないかと言われるとそーでもない…一気読みしちゃう!っていう面白さではないけと、小学生の頃の自分の心理がうまく表現されていて、むむ、これはありある…と思った続きを読む

    投稿日:2023.09.09

  • こしあん

    こしあん

    道尾秀介さんが好きな友からのお勧め。

    読んでいるこちらが苦しくなるような灰色の閉塞感が終始漂っていて、
    「今のタイミングで読むのしんどいかも…」なんて思っていたが、鳴海が慎一家に遊びに来た辺りから目が離せなくなった。

    子供の無邪気な残酷さ、後ろめたさや不安からくる、下腹の辺りがムズムズするあの感覚。
    心理描写が見事で、子供の頃抱いた事のある仄暗い感情を思い出した。

    道尾さんの作品はどれも一気読みしてしまうなぁ。

    続きを読む

    投稿日:2023.09.09

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