【感想】小さき者へ・生れ出づる悩み

有島武郎 / 新潮社
(72件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
16
21
18
4
0

ブクログレビュー

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  • rio-purple

    rio-purple

    子どもが生まれたので、改めて読みたくなって。
    以前は私が子どもの立場だったため、私のこれからの人生へのエールだと感じた。今は親の立場で、幼子を残して逝く無念や、子どもへの想いに共感する。
    エールを受け取る側から送る側へと立場が変わり、そうして世代が繋がっていくのだと実感する。私はもう「小さき者」ではないのだ。何となく寂しくもあり、嬉しくもある。

    行け。勇んで。小さき者よ。
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    投稿日:2024.01.28

  • ほんのむし100

    ほんのむし100

    北海道の厳しい大自然
    どことなくバタくさい文体
    それゆえに両作品とも
    物語最後のメッセージが
    とても力強く感じる

    酒井駒子さんの表紙絵が良い

    ブックオフにて購入

    投稿日:2024.01.13

  • 絵馬nuel

    絵馬nuel

    このレビューはネタバレを含みます

    特に、「生れ出づる悩み」について。

    本書の表現は端的にいえば力強く鮮やかで、「板子一枚下は地獄」に表現される通りに6章の嵐の緊張感はすさまじいものであった。この場面が「肝腎の」自殺を図る場面の印象を薄めるほど(本多解説・124頁)だという説明には共感できる。その表現力が背後にあるからこそ、山に執着する「君」と重なって、自然のもつ偉大さに説得力を感じられた。

    自分のやりたいことと、現実にやらねばならないことの矛盾を抱える「君」が、行動では勇敢な姿を見せていても、内心、現実に正面から向き合っている漁夫等には疎外感を覚えている。そのような葛藤する精神を地球から「生れ出でた悩み」としているが、世界の中の同じような悩みをもつ若者に対しても、「私」はただ、春を迎えられるよう祈ることしかできない。

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    投稿日:2023.09.16

  • ひろ

    ひろ

    実家の母から借りた本。
    母が以前勤めていた職場のかたが定期的に読み終えた本を送ってくれるらしい。なんて素敵な関係なんだ。
    有島武郎さんの作品は初めて読んだが、とても美しい文章で、日本に生まれてよかったなぁと思った。

    『小さき者へ』
    病気で母を失った我が子へ宛てた父の手紙。
    心を震わせるほど美しく力強い文章で想いが真っ直ぐに語られる。
    失うときに初めて気づいた愛する者との大切な時間。
    かなしい境遇を嘆くのではなく、父の苦悩や母の愛情を知って、幸せだったんだよと伝えたかったんだね。
    子どもたちを励ましているようで、自分自身に言い聞かせているような…
    そして最後の一文「行け。勇んで。小さき者よ。」が好きだ。

    『生れ出づる悩み』
    画家を志す少年と画家になれなかった教師。
    夢と生活のどちらを選ぶか。人生の究極の選択。
    どちらの選択も犠牲は伴う。
    その悩みや葛藤が、繊細で美しい言葉で語られる。
    自分の幸せって何?
    とても考えさせられる作品だった。
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    投稿日:2023.08.07

  • がんちゃん

    がんちゃん

    ブックオフで110円。一昨日買った。

    通勤途中に小説をすっかり置いてきてしまったことに気づいた。
    本を鞄に入れておかないと落ち着かない私は、会社からの帰りにふらと立ち寄ったブックオフの110円コーナーで掘り出し物がないか立ち寄ったらこれがあった。

    内面の描写、自然の捉え方など本当に感心する。
    力の入れるところ、うまく力を抜いた表現などなんでもない風景や心の動きがとても味わい深く感じられる。

    これだけ物事がよく見えていたら、さぞかし生きづらかっただろうとも思う。
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    投稿日:2023.07.05

  • かかおチョコレート

    かかおチョコレート

    この本は、私の親友の愛読書の一つであると言う理由で読み始めた。
    順番は逆に、生まれ出づる悩み、から読み始めた。

    以前、網走監獄を訪れて、そこから北海道開拓史に興味を持ち、その生活の厳しさを考えたことがあった。その時に感じた寒さ、厳しさは今のような明るく、本州からの避暑地と言ったイメージとはかけ離れた物であった。漁夫の家族として生まれた男、しかし、お金がないにも関わらず恐らくは画家としての才能を持ち合わせた男の、生まれ出づる悩み。

    昔の文章なので読みにくい。しかし、表現の美しさは私のような者にも伝わる。

    この時代ほどではないにしろ、生まれた場所によって生きる選択肢を制約されることはよくあることだ。そのことで、昔ほどではないにしろ、苦しんでいる人はいつの時代もいるものだ。

    自分の才能を、限りある人生だからと、信じ切って生きられる人がどれほどいようか。

    「この地球の上のそこここに君と同じ疑いと悩みとを持って苦しんでいる人々の上に最上の道が開けよかしと祈るものだ。

    ほんとうに地球は生きている。生きて呼吸をしている。この地球の生まんとする悩み、この地球の胸の中に隠れて生まれ出ようとするものの悩み
    それは湧き出て躍り上がる強い力の感じを以て僕を涙ぐませる。

    君よ、春が来るのだ。冬の後には春が来るのだ。

    君の上にも確かに、正しく、力強く、永久の春が微笑めよかし。僕はただそう心から祈る。」

    この世は不平等だ。どこに生まれるかは本人が決められたものではない。だからこそ、地球をも動かすようなエネルギーで、物事を動かしてほしい。そんな人々への熱いメッセージ。



    小さき者へ。

    君たちは不幸だ、と書かれていたので、不幸な家のもとに生まれた子どもたちに対する話なのかと思った。しかし、そうではなかった。

    「前途は遠い。そして暗い。然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。
    行け。勇んで。小さき者よ。」

    自分の子どもたちにも同じ気持ちを持てた、と同時に親から自分へのメッセージともとれた。

    私達は、子どもを愛することから様々な学びを得る。それは見返りを求めるものではなく、その全ての気持ちが私達を豊かにするものなのだ。

    だから、「お前たちの助けなければならないものは私ではない。お前たちの若々しい力は既に下り坂に向かおうとする私などに煩わされていてはならない。
    力強く勇ましく私を振り捨てて人生に乗り出して行くがいい。」

    少子高齢化の中、家族の関係が問われることがあるが、私もこのような考えで子供と接したい。
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    投稿日:2022.12.30

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