スラップスティック

カート・ヴォネガット, 浅倉久志 / ハヤカワ文庫SF
(21件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
6
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0
  • 非ナショナリズムの行方

    やや長めのエッセイじみた著者の述懐形式のプロローグを経て物語は始まります。
    突然変異のフリークス(奇形)な双子の姉弟。巨大でモジャモジャ髪で乳首が四つもあって、姉とセットになれば比類無い知恵を発揮するものの、バラになれば読み書き以上の事が大分覚束ない(逆に姉は単独では読み書き以外だけが達者)。そんな弟が主人公です。
    そんな弟が合衆国大統領に就任。それだけでも割と大丈夫かと思いたくなりますが、更に全米が不治の病に冒されて国家としての体を失っていきます。
    とはいえ、ディストピア的な重苦しさは皆無です。全編にわたって繰り返される「ハイホー」(思考のしゃっくり、と称されます)がその証。

    読み解く鍵の1つは主人公の政策。ファミリーネームを撤廃させて、人為的かつランダムに決めた独自のファミリーネームを使うように定めます。血統も何も関係ない、単純にランダムにミックスされた「拡大家族」による共同体構想と言えるでしょうか。
    もう2つは物語の端々に現れる「中国人」。文明として進歩も失い劣化したアメリカを凌ぎ、最早彼らには理解不能な独自のブレイクスルーを遂げています。
    この2つから、本書はナショナリズムや権力、富める者が不可避的に陥る一種の貴族主義、そういったものが人々の不幸の温床になるとして、それを無効化したらどうなるか、という思考実験とも捉えられます。進歩は失われ文明の勢いは一気に消失する、でも人々は不幸じゃない。緩やかな衰退を楽しんでいる風すらあります。
    中国人は、西欧文明の外部に存在する英知の象徴と考えるべきでしょうか。英知はアメリカを見放し、遙か先に進んでいってしまいます。

    ニヤリとさせられる諧謔に満ちつつ、しかし読み進めるに従ってジワリジワリと侘しさを感じさせられます。
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    投稿日:2014.01.26

ブクログレビュー

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  • dipnoi

    dipnoi

    『タイタンの妖女』よりは読めたけど、やっぱり合わないヴォネガット 。いまいち何が言いたいんだかわからない。アメリカのことしか書いてないからかな。

    投稿日:2019.05.28

  • nu6gg8ets

    nu6gg8ets

    史上最後のアメリカ大統領がじぶんの思い出話をつづる。自分そっくりの双子の姉のこと、重力が不安定になった日のこと、かわいい孫娘のこと、その他いろいろ。
    冷静な評価がもお一切できないくらいどっぷり大好きな小説である。これよりもバカバカしい小説は、そしてこれよりも美しくてかなしい小説は知らない。
    そう、バカバカしくなればなるほど、笑えるほど、意地悪にかなしくせつなくどうしようもなくなっていく、これこそヴォネガット。つらい。つらすぎる。すき。
    が、スラップスティックはヴォネガットのなかでは異色の作品でもある。
    何が違うって、結末が暗くない。ヴォネガットの他作品『タイタンの妖女』『猫のゆりかご』『母なる夜』などなど見てみると、ありとあらゆる希望が叩きのめされたところで物語がおわる。 しかし『スラップスティック』はどうか。ウィルバーはきっとついにイライザと再会するだろう。そうして人類は救われるだろう。また、メロディはイザドアの子を産むだろう。
    なんとやさしい終わり方。あんた本当にヴォネガットか?
    自伝的な作品、と言いつつ、自分の姉の思い出、そして大好きなローレルとハーディの思い出をつよくやさしく抱きしめている話だからこんなにも優しいのかもしれない。神のことが憎い。神のことが憎いがそれはすなわち小さな弱いものをかなしく愛しすぎているということ。
    思えば私は『スラップスティック』があるからヴォネガットという作家が全体的に大好きになれたのかもしれない。ニヒルなのばかりではただただつらいけど、こうした「でもやっぱりやさしくやさしく思えば大好きなものを殺さずに済むのかもしれない」という諦めの悪さを示す小説があるからこそ、ニヒルな小説がめんどくさくて一層せつなくて好きなのだ。

    まあ読んでる途中で何度もかなしみに心折れそうになるけど…イライザとの最初の別れとか…イライザとの2回目の別れとか…イライザの死を知るシーンなんてほんとうにほんとうに笑っちゃうくらいバカバカしいからこそ死にたくなるほどつらい…
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    投稿日:2017.04.17

  • jun.k

    jun.k

    魅力のありかがどうにも分からない。分からないのだけど琴線に触れるなにかがある。そんな気持ちがしています。

    無人島にもっていくとしたら? というときに上位に入ってしまうかも知れない一冊です。
    傑作! だとか絶対におすすめ! などとはなかなか言えそうにないけれど。

    フィクションとリアリティのバランスがよくて、シリアスとチャーミングも同じ場面に併存しています。
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    投稿日:2016.10.03

  • paraparayomu

    paraparayomu

    残念ながらこの作品は私には合わない
    表紙   7点和田 誠
    展開   3点1976年著作
    文章   3点
    内容 410点
    合計 423点

    投稿日:2015.12.01

  • kzmhara

    kzmhara

    考えずに読むと面白く、考えて読むと更に考えさせられて面白い作品。
    シリアスな笑いとも呼ぶべき、糞真面目さとユーモアや皮肉が奇跡的に融合した文体は翻訳者に依る部分もあるかもしれないが、同氏の他作品にも興味がわいてきた。
    ハイホー。
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    投稿日:2014.08.16

  • ogaway

    ogaway

    ・愛をちょっぴり少なめに、
    ありふれた親切をちょっぴり多めに。

    ・愛してるよ、のことばは、
    人に、本心じゃないことを言わせる仕掛け。

    ・歴史にできるのは、われわれを次の驚きに対して準備させることだけである。



    拡大家族に対する、彼の論文のよう。

    血液型でも、星座でも、くだらないミドルネームでも。
    同じものをもつだけで、親しみがわく。
    孤独じゃなくなる。

    どんなわかりあえないひとでも、なにか共通点を見つけること。
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    投稿日:2013.11.30

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