【感想】WORLD WAR Z(上)

マックス・ブルックス, 浜野アキオ / 文春文庫
(18件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
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7
1
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  • ドキュメンタリー風ゾンビ小説

    病に臥したすえ死亡した人間が甦り、他者を襲うという奇病が全世界に蔓延していき、死者が都市や国家という垣根を超え、世界を蹂躙していった。そして存亡の危機に瀕した人々は、やがて死者<ゾンビ>に対し、対抗策を講じていく。この人類と死者との戦争〈世界Z大戦〉に直面した、様々な人々の証言をまとめ上げたのが、本書です。

    パニックものの映画のように、一人の主人公の視点で物語が進むのではなく、様々な人の証言をまとめ上げ、<世界Z大戦>に関し、ドキュメンタリー風にして迫って行き、何が起こったのか分かっていくという形をとった小説になります。非感染者関係なく皆殺しにしてしまう、徹底した情報管制など国によってゾンビに対する対応策が違うのが、今のお国柄に合わせたものとなっており、日本では実際にこうなるだろうなぁと思う内容でした。

    普通のパニック小説とは違い、証言ばかりなのですが、その場に居た者だからこそ語れる生々しさが感じられ、逆にリアルに感じました。
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    投稿日:2014.08.14

  • 世界情勢に詳しければなお読めるゾンビ取材記

    世界中で謎の感染症が発生し、その時各国の人々はどう対処したのかが後日譚形式で語られる。
    各国のお国柄を反映した人たちの行動は、単純に善悪で語られるものではなく現在の世界情勢を反映しているらしく、
    この手に疎い私でも興味深く読めた、この機に世界の歴史を詳しく調べてみたいと思ってしまう。
    本書はゾンビ達の特徴が詳しく書かれていて、ゾンビと武器の相性や危険性、それによる二次災害が人々を追い詰めていく様は、
    ゾンビ物の定番とはいえ、話が世界規模なため様々な局面が見れて面白かった。
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    投稿日:2015.02.16

  • インタビュー証言録の体裁で紡がれるゾンビ小説

    マックス・ブルックスによるゾンビ小説。
    世界ゾンビ大戦の終結から10年、その戦争を生き抜いた人々にインタビューした証言録という体裁で物語が進む。上巻は感染の発生から大規模な戦争へと移行し、人類がどんどん追い詰められていく様子がリアルに描かれている。
    戦争を生き抜いたということで軍人中心で物語が進んでいくが、世界中の様々な立場の登場人物により、重層的に物語が紡がれていく。ある地域で重要な出来事や発見があり、それを受けて別の地域では、というかたちの展開はややもすれば単調になるきらいはあるが、設定が程よく練られ、飽きることなく読み進めることができる。
    人類が戦争に勝ち、復興に向けて着実に歩んでいる時点でのインタビューということで、先の展開はある程度読めるが、それでもなかなかハラハラする展開が用意されていて、下巻での戦争終結に至る流れに興味をそそられる。
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    投稿日:2015.08.21

ブクログレビュー

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  • キョウヘイ

    キョウヘイ

    なんで読もうと思ったのか忘れたんだけど、全編インタビュー仕立てのゾンビものという異色な小説。色んな人物の視点を組み上げてだんだん全体像が見えてくるような、ボヤけてるような展開は「悪女について」みたいで面白いな。ちょうど「ゾン100」読んでたのもタイミング的に面白い。しかし訳書はなんでこんなにページ全体をびっしり字で埋めるかね読みづらいよな。続きを読む

    投稿日:2023.07.10

  • うみ

    うみ

    「ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える」で出てきた「参考書籍」翻訳されてた!(映画化はどうでもイイ)完全にインタビューの積み重ねで状況を説明している主砲は、個々の人物の認識としてなので矛盾があってもOKというずるい手法だが、それはそれで有りだなと。むしろこのゾンビにより人類が滅亡寸前にまで追い込まれたというテーマには良く合致しているかも。下巻も買おう続きを読む

    投稿日:2018.10.14

  • shimizuharumi

    shimizuharumi

    映画の原作。
    人がゾンビ化する病気の大流行と鎮圧を経て,生き残った人たちから当時の証言を聞き出してまとめたもの,という体裁。

    病気が発生した中国から,いろいろなルートで病気が世界中に広がり,イスラエルで,南アフリカで,ロシアで,…といかにも起こりそうなことが起こる。

    企画のおもしろさが大きいが,内容もそこそこ。
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    投稿日:2015.10.18

  • r1tchie

    r1tchie

    このレビューはネタバレを含みます

    マックス・ブルックスによるゾンビ小説。
    世界ゾンビ大戦の終結から10年、その戦争を生き抜いた人々にインタビューした証言録という体裁で物語が進む。上巻は感染の発生から大規模な戦争へと移行し、人類がどんどん追い詰められていく様子がリアルに描かれている。
    戦争を生き抜いたということで軍人中心で物語が進んでいくが、世界中の様々な立場の登場人物により、重層的に物語が紡がれていく。ある地域で重要な出来事や発見があり、それを受けて別の地域では、というかたちの展開はややもすれば単調になるきらいはあるが、設定が程よく練られ、飽きることなく読み進めることができる。
    人類が戦争に勝ち、復興に向けて着実に歩んでいる時点でのインタビューということで、先の展開はある程度読めるが、それでもなかなかハラハラする展開が用意されていて、下巻での戦争終結に至る流れに興味をそそられる。

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    投稿日:2015.08.22

  • 文藝春秋公式

    文藝春秋公式

    【8月ロードショー、ブラッド・ピット主演映画原作】中国奥地に発した謎の疫病を契機とした人類と生ける死者との全面戦争。全世界を舞台とした衝撃のパニック・スリラー大作の原作小説。

    投稿日:2014.09.09

  • K@ZU

    K@ZU

    人類が史上最大の敵との戦いに勝利してから10年。国連戦後委員会の職員である主人公は報告書作成のために当事者たちへのインタビューを行った。これは恐るべき敵との戦い「世界Z大戦」の記録である。

     ここ数年、世界的にゾンビブームが起きている。本書もその一翼を担ったもので、2006年にマックス・ブルックス(父親は映画監督・脚本家・プロデューサーのメル・ブルックス、母親は女優のアン・バンクロフトなのだそうだ)がアメリカで刊行した“World War Z:An Oral History Of The Zombie War”の邦訳である。Zとはもちろんゾンビのこと。人類とゾンビとの戦いをリアルタイムで描くのではなく、関係者への取材を通した回想という形で描いている所がユニークだ。
     主人公が取材する相手は市井の人々から政治家まで様々な立場の人たちで、国籍もアメリカだけでなくアジアからヨーロッパまで世界中にわたっている。
     膨大なインタビューで浮かび上がるZ戦争の全貌。始まりは中国の奥地。ある医師が農村で発見した奇病。その感染症は人類をゾンビへと変貌させた。やがてそれは患者との接触により瞬く間に世界中へ拡大していき、遂に人類の存在を脅かす存在となっていく。
     この戦いはこれまでの戦争とは全く違うため、人類は大きな犠牲を出してしまう。何しろゾンビに襲われた人間もゾンビになってしまうため、味方の消耗が即敵の増強につながるのだ。やがて寒さに弱いという相手の弱点をついて寒冷地帯に退却する人類だが、ある作戦から反撃に転じるのだった。

     語る一人一人がそれぞれの人生を背負っている。世界史の中では小さな出来事でも当人にとっては一生の記憶に残る出来事だ。それは奇跡であったり惨劇であったりする。主人公が取材する小さなエピソードが少しずつ積み重なって大きな物語になっていく。モザイク状に描き出されるゾンビものというのは非常に珍しい。
     最終章ではそれまで登場した人物が再登場するのがなんかフィナーレって感じで感慨深い。

     ちなみに本書が書かれるまでの過程も面白い。実は著者は本書の前に『ゾンビサバイバルガイド』(The Zombie Survival Guide:Complete Protection From The Living Dead)という本を書いている。この本は「ゾンビからの身の守り方、戦い方」を詳しく解説したもので、かなり実践的な方法が書かれているという。
     この本がウケて、じゃあこんな本が必要になる世界てどんな世界なんだ?そりゃきっとゾンビと全面戦争している世界だ、というノリで『WORLD WAR Z』が書かれたらしい。
     ゾンビブームの流れに乗ったのかなと思うが、解説によると映画等では流行がきていたが小説の分野ではまだまだきてなかったそうで、最初タイトルも“Zombie War”にしたかったのがそれじゃマニアにしか売れないだろうということで現在のタイトルになったそうだ。うーむ、そうか紆余曲折があったんだな。
     てことは単にブームに乗っかっただけの小説ではないらしい。だからこそ回想形式やモザイク状の構成といった工夫を凝らしているのだろう。人類が戦争に勝利する事は最初でわかっているのに、これだけ読ませるのだ。
     余談だが風間賢二による解説も本文を踏まえた形式で書かれてて凝っている。

     作中では日本も登場。非武装国家の日本では国民が国からの脱出を始めている。SFファン的に見逃せないのだがこれは『日本沈没』を基にした展開のようで、日本脱出を提言する科学者の名前が小松博士なのである。わかる人にはピンとくるよね。
     他にも戦前の日本で最大の人気を誇ったコメディアンとして「松本と浜田」が言及されるなど絶妙にマニアックなネタを仕込んでいる。またZ戦争における混乱期、日本は世界で最も高い自殺率を記録したという設定も興味深い。

     ところでこの小説、ブラッド・ピットの会社で彼自身が主演して映画化され、2013年6月に全米公開されている(日本公開は同年8月)。
     映画化と言ってるけど「世界中にゾンビが発生」「国連職員が世界を飛び回る」という以外共通点は無く、それどころか「ゾンビがダッシュする」「噛まれたら12秒で発症」等原作に無い要素を取り入れほとんどオリジナルストーリーと言って良い。ラストのオチも全然違う(原作者はどんな気持なんだろうか)。
     それ以外にもツッコミ所は多いが、パニック物なのに血がほとんど流れないし映像も派手なので単純に娯楽映画だと思えば家族で楽しめる出来。なぜか日本ではゾンビ物だという事を隠して宣伝していたが。
     ブラピは本書以外にも『ゾンビの作法 もしもゾンビになったら』(ジョン・オースティン/太田出版)と『ゾンビ襲来』(ダニエル・ドレズナー/白水社)の2冊の本の映画化権を獲得しており、本書と併せて3部作として映画化する予定なのだそうだ。ゾンビ好きなんだねえ。

     上下二巻。
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    投稿日:2014.06.13

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