【感想】黄昏に眠る秋

ヨハン・テオリン, 三角和代 / ハヤカワ・ミステリ文庫
(26件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
6
11
5
1
0
  • 孫を失った老人の、決死の推理が光る!

    深い霧に包まれたある日、幼い少年が失踪しました。それから数十年後、少年の靴と思われる品が届けらます。少年は、送り主の手によって殺されたのだ――!
    そう確信したイェルロフ爺が、娘を呼び寄せて事件の究明に乗り出します。

    物語は、少年が最後に会ったと思われる人物、ニルス・カントの半生と、彼の周辺を探るイェルロフ爺の足取りを交互に行き来しながら真相に近づいていきます。

    ミステリの常として、容疑者のほかに真犯人がいるに違いないと睨むのですが、それは誰か? 何故少年は殺されたのか?という謎が最後までつきまとい、驚愕の事実まで実に読み応えのある一冊でした。
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    投稿日:2015.02.04

  • いつか夢で見たような風景

    スウェーデンのエーランド島という、今まで見聞した事もないこの物語の舞台の風景が、読んでいるうちに自然と心に浮かんで来ます。それは、最初の「霧」の印象からか、幻想的であり、避暑客がいなくなった季節外れの時期である為に、茫漠としています。絶え間なく打ち寄せる波音が、悲しみを運んでくるように、主人公は、常に、悲嘆にくれ、二十年以上も前に、いなくなった息子の姿を追い求めています。理性では「死」を覚悟していても、感情では万が一の可能性を捨て切れずにいるのでしょう。打ち捨てられた家の幽霊の話も出て来るのですが、肉体が朽ちた後に残る魂の存在が、出来事に深く繋留し、この物語に厚みを齎しているように思いました。
    一読の価値あります。
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    投稿日:2014.07.01

  • 20年以上の闇を解く鍵は、地位、金、それとも復讐?

    スウェーデンの島を舞台に重厚なストーリーが展開されます。20年以上の歳月を経て風化しつつある事件に、年老いた父親と子を亡くし自分を見失いつつある娘が、再び事件に向かい合う。地道な調査が導く真犯人はこの人物だったとは!登場人物の心理描写も見事です。
    スウェーデン推理作家アカデミー賞最優秀新人賞、英国推理作家協会賞最優秀新人賞、評価に偽りなしです。読み応え十分!
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    投稿日:2014.04.13

  • 読み応えある北欧ミステリの傑作。

    少年の失踪から物語は始まる。
    少年の母と祖父の悲しみとやるせなさが漂いますが、
    感傷的どころか、冷静な筆致はその陰影を増幅させる。
    さすが北欧ミステリ……、そんな印象すら与えます。

    終盤の一行で、涙をこらえることができませんでした。
    ずっしりと読み応えある北欧ミステリーの傑作です。



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    投稿日:2017.02.25

  • 「悲しみ」が胸を打つ傑作

    冒頭から結末まで物語の流れはゆったりとしていますが、全体が「悲しみ」に包まれているような作品で、善悪が単純には割り切れない世界の中で、もがきながら生き続ける登場人物達の織りなす人生の陰影描写の深さが強い余韻を残す、素晴らしい作品だと思います。続きを読む

    投稿日:2014.05.06

  • 秋のように肌寒く色見が深い

    一人の子どもの失踪事件をめぐり、物語は淡々と進む。
    読み飽きたり疲れたりするところもあるけれど、最後まで読んで良かった。
    根っからの根性悪はいない。ただ様々な不幸が折り重なっただけ。
    私たちが1面しか見ていない世の中のあらゆる事件もこういった不幸の悲しすぎる連鎖なのかもしれないと思うと同時に、物事だけでなく、人もまた先入観にとらわれず多角的な視点での観察と判断が必要なのだと気づかされた。続きを読む

    投稿日:2019.09.13

ブクログレビュー

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  • ぼじょまる

    ぼじょまる

    このレビューはネタバレを含みます

    ・あらすじ
    スウェーデン エーランド島が舞台
    約20年前の少年失踪事件を解決しようとする母親と祖父
    事件を調査する内に30年程前に死んだ男が実は生きていた…?
    調査パートと死んだ男の過去パートが交互に書かれ真相が判明するタイプのミステリー。

    ・感想
    息子が行方不明になってから立ち直れないままのユリアと、老人ホームに入り手足も満足に動かせないイェルロフが探偵役。
    舞台となる場所(霧深い閑村)や季節(秋冬)、登場人物も老人ばかりなので展開も遅め。
    終始物静かで寒々しい印象があるけどエピローグでは事件解決とともに囚われていた彼らの苦しみが昇華されて、それが季節が春になり霧が晴れる事で描写されていい読後感だった。
    ハッピーエンドではなくニルスがクソ野郎であることには変わり無いけど…。
    娘と父親、息子と母親で対比され母親(故郷)の元へ帰りたかったニルスと事件後目を背けていた故郷、父親との確執を解消するユリアとの対比も良かった。
    犯人はそうかも…?いややっぱり違うかなーそうであってほしくないなって人がそうでちょっと悲しかった

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    投稿日:2024.03.02

  • じゅう

    じゅう

    スウェーデンの作家「ヨハン・テオリン」の長篇ミステリ作品『黄昏に眠る秋(原題:Skumtimmen、英題:Echoes from the Dead (The Oland Quartet))』を読みました。

    「ヨナス・ヨナソン」、「ミカエル・ヨート」と「ハンス・ローセンフェルト」の共著に続き、スウェーデン作家の作品です… 北欧ミステリが続いています。

    -----story-------------
    行方不明の少年を探す母がたどりついた真相とは。
    北欧の新鋭による傑作感動ミステリ!

    霧深いスウェーデンのエーランド島で、幼い少年が消えた。
    母「ユリア」をはじめ、残された家族は自分を責めながら生きてきたが、二十数年後の秋、すべてが一変する。
    少年が事件当時に履いていたはずのサンダルが、祖父の元船長「イェルロフ」のもとに突然送られてきたのだ。
    病魔に苦しみながらも、明晰な頭脳を持つ「イェルロフ」は、この手がかりをもとに推理を進める。
    一方、急遽帰郷した「ユリア」は、疎遠だった「イェルロフ」とぶつかりながらも、愛しい子の行方をともに追う。
    長年の悲しみに正面から向き合おうと決めた父娘を待つ真実とは?

    スウェーデン推理作家アカデミー賞最優秀新人賞、英国推理作家協会(CWA)賞最優秀新人賞受賞作。
    スウェーデンの民話や幽霊譚をもりこんだ、北欧の新鋭にして実力派による傑作ミステリ。
    -----------------------

    2007年(平成19年)に発表された《エーランド島シリーズ》の第1作… 探偵役の「イェルロフ・ダーヴィッドソン」が外出もままならない老人というこもあり、謎が解けるスピードは遅々としていますが、関係者を訪ね歩き、幾度かの危機をくぐり抜けて、20数年前の衝撃的な真相が明らかになる展開が愉しめる佳作でしたね、、、

    「イェルロフ」と「ユリア」を中心に真相を探る現在の物語と、「ニルス・カント」の人生を辿る1936年(昭和11年)~1972年(昭和47年)の物語がパラレルに進行して、終盤、ひとつの接点に向かう描き方も良かったですね… むっちゃ好みの作品でした。


    1972年(昭和47年)9月、エーランド島北部のステンヴィーク村で、「イェンス・ダーヴィッドソン」という5歳の少年が忽然と姿を消した… この島では珍しい濃霧の中での出来事だった、、、

    それ以降、「イェンス」の母「ユリア」は傷心から立ち直れぬまま島をあとにして苦悩に満ちた日々を送るようになった… 「イェンス」の父とは別れ、姉「レナ」の夫婦や島に残った父「イェルロフ」ともしっくりしない関係になっていた、、、

    事件から20数年後、高齢者ホームで暮らす「イェルロフ」のもとに、「イェンス」が行方不明になった時に履いていたサンダルを何者かが送ってきた… 「イェルロフ」からその報せを受けた「ユリア」は久しぶりに帰郷する。

    長年疎遠になっていたせいで、「イェルロフ」と「ユリア」の会話はぎこちないものに… しかも、かつて船長だった「イェルロフ」は持病のせいで今や思うように動けない身体となっていた、、、

    だが彼らはサンダルの件を契機にわだかまりを乗り越え、過去と再び向かい合うことを決意し、「イェンス」の身に何が起こったかを追求しようとする。

    このメイン・ストーリーに、時々、挟み込まれるカタチで描かれるのが、島北部の広大な土地を所有する資産家の息子として生まれた「ニルス・カント」の人生… 彼は10歳にして海で溺れた弟を見殺しにし、成長とともに数々の悪事を重ねてきたため、村ではあらゆる犯罪や事故が彼のせいということになっている、、、

    既にいないはずの彼の姿が、事件の影から浮かび上がってくるのは何故なのか… 「ニルス」の数奇な運命と「イェンス」との接点は!?

    自己中心的で浅はかな性格、そして若い頃の悪行の数々… 「ニルス」は同情の余地のない人物なのですが、ある人物に利用され、「イェンス」の失踪事件に巻き込まれてしまう終盤の展開には一抹の憐れみを感じましたね、、、

    もっと悪い奴がいたんですからねぇ… それにしても、真相は衝撃的で、深い余韻のある結末でしたね。


    《エーランド島シリーズ》の残り3作品も読んでみたいな。



    以下、主な登場人物です。

    「ユリア・ダーヴィッドソン」
     看護師

    「イェンス」
     ユリアの息子

    「イェルロフ」
     元船長。ユリアの父

    「レナ」
     ユリアの姉

    「リカルド」
     レナの夫

    「エルンスト・アドルフソン」
     彫刻師、元石工

    「ヨン・ハーグマン」
     元船長

    「アンデシュ」
     ヨンの息子

    「ベングト・ニーベリ」
     《エーランド・ポステン》記者

    「レナルト・ヘンリクソン」
     警察官

    「アストリッド・リンデル」
     元医師

    「グンナル・ユンイェル」
     ホテル・オーナー

    「マルティン・マルム」
     マルム貨物の創業者

    「エースタ・エングストレム」
     元船長

    「マルギット」
     エースタの妻

    「ロベルト・ブロムベリ」
     車修理工場のオーナー

    「ヴェラ・カント」
     ステンヴィークの資産家

    「ニルス・カント」
     ヴェラの息子

    「フリティオフ・アンデション」
     ヴェラの使い
    続きを読む

    投稿日:2023.04.07

  • ふころぐ

    ふころぐ

    スウェーデン、エーランド島で霧の深いある日、少年が行方不明となる。祖父である元船長のイェルロフが事件の謎を解く。高齢の祖父のゆったりとした時間の流れとエーランド島の自然がマッチし、物語が丁寧に進められて行く。終盤は悲しい結末へと向かうが、イェルロフの覚悟と落ち着きと共に、静かに受容できる境地となる。続きを読む

    投稿日:2022.03.08

  • テルリーヌ

    テルリーヌ

    このレビューはネタバレを含みます

    読み終わるまで凄く時間がかかりました。'45の殺人事件、'70年代 の幼児失踪、を'90年代に解決するという、3つの場面が交錯するので、なかなか集中できませんでした。
    '45に殺人事件を起こした男の望郷の念がまず理解できない。なぜそんなに故郷に固執するのか。凶暴で行き当たりばったりの行動する力があるのに、その割には自分で帰郷しようとしない。
    それと気になったのは解決に向かう場面で携帯電話がでてくるところです。'90年代前半は日本ではまだまだ携帯電話よりポケベル主流だったと思いますが北欧はすでに携帯電話が行き渡っていたのでしょうか?

    レビューの続きを読む

    投稿日:2017.09.08

  • オーネ

    オーネ

    物語がなかなか進まずイライラしたけど、「むかしは、みんな、いつも時間をかけて物語を紡いだが、いまではなにもかもが、さっさと済ませねばならなくなって」って言葉が出てきて、はっとした。

    投稿日:2017.04.11

  • katten

    katten

    スウェーデンのミステリー。先にこのシリーズの最終巻を読み、ずっしりとした手応えが気に入って、初巻を手に取った。
    目の前で見ているかのような心理描写や 土地の風景に、再び引き込まれた。事件に派手さはないが、最後まで縺れた糸が続くので、退屈しない。
    主題は子を亡くした母。殺人者を含め、筆者の人間を見る温かい眼差しによって、暗い話だが重くなっていない。
    続きを読む

    投稿日:2016.06.11

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